歌仙「霽の巻」の句解を試みました。(その3) | ouroboros-34のブログ

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こころに映りゆく由無しごとを其処は可となく書き付けて
ごうなっだのでありますぐるらめ。


歌仙「霽の巻」をそのまま掲載しておきます。
杜国・重五・野水・芭蕉・荷兮の五人で詠んだ5吟です。
懐紙二枚に、初折オモテ6句ウラ12句、名残オモテ12句ウラ6句の合計36句で満尾です。月3か所、花2か所。一応、定法どおりです。

では、ひととおり見ることにしましょう。この順に検討しますので、さしあたり、この句解の目次としての役割を帯びています。

初折オモテ 6句
冬   つゝみかねて月とり落とす霽かな (月)杜国
冬    こほりふみ行水のいなづま      重五
春   歯朶の葉を初狩人の矢に負て      野水
春    北の御門をおしあけのはる      芭蕉
春   馬糞掻あふぎに風の打かすみ      荷兮
春    茶の湯者おしむ野べの蒲公英     正平

初折ウラ 12句
雑   らうたげに物よむ娘かしづきて     重五
雑・秋  燈籠ふたつになさけくらぶる     杜国
秋   つゆ萩のすまふ力を撰ばれず      芭蕉
秋    蕎麦さへ青し滋賀楽の坊       野水
秋   朝月夜双六うちの旅ねして    (月)杜国
夏    紅花買みちにほとゝぎすきく     荷兮
雑   しのぶまのわざとて雛を作り居る    野水
雑    命婦の君より米なんどこす      重五
雑   まがきまで津浪の水にくづれ行     荷兮
雑    仏喰たる魚解きけり         芭蕉
春   県ふるはな見次郎と仰がれて   (花)重五
春    五形菫の畠六反           杜国

名残ノ折オモテ 12句
春   うれしげに囀る雲雀ちり〳〵と     芭蕉
雑    真昼の馬のねぶたがほ也       野水
雑   おかざきや矢矧の橋のながきかな    杜国
雑    庄屋のまつをよみて送りぬ      荷兮
雑   捨てし子は柴苅長にのびつらん     野水
冬    晦日をさむく刀売る年        重五
冬   雪の狂呉の国の笠めづらしき      荷兮
雑    襟に高雄が片袖をとく        芭蕉
雑   あだ人と樽を棺に吞ほさん       重五
夏    芥子のひとへに名をこぼす禅     杜国
秋   三ケ月の東は暗く鐘の声     (月)芭蕉
秋    秌湖かすかに琴かへす者       野水

名残ノ折ウラ 6句
秋   烹る事をゆるしてはぜを放ける     杜国
雑    声よき念仏藪をへだつる       荷兮
雑   かげうすき行燈けしに起侘て      野水
雑    おもひかねつも夜るの帯引      重五
春   こがれ飛たましゐ花のかげに入  (花)荷兮
春    その望の日を我もおなじく      芭蕉
     
以上、芭蕉の挙句でめでたく満尾となりました。

この順序で句解を試みます。すでに初めの2句「つつみかねて」「こほりふみ行」は述べていますので3句目から続けます。