GPSを試した日は、午後から休みだった。
自分が動くと動き出した事もメールで受信し、専用のサイトにログインするとどこにいるかわかるようになっていた。
20秒毎更新されるという近場でも追うことができる機能もあったが、本体の電池をかなり消費するモードのようだ。
GPSには使い方マニュアルが書いてあり、すごく参考になった。
幼馴染くんも通知を確認してくれて安心した。
1人だったら不安だったと思う。
よし、これで一安心だ。
その日の夜、一旦5時半過ぎに帰宅した元夫くんは部屋にこもっていた。
9時過ぎ、シャワーを浴びて「アルバイトに出かける」と言って出掛けて行った。
するとその瞬間携帯の通知がきた。
なんとGPSだった。
昼に使った後、充電はバレないように明日の昼にしようと思ってそのままにしてあった。
あの共有バッグを使って出かけたのだ。
「幼馴染くん!元夫くん、私が使ってたバッグで出かけたみたい!!」
LINEするとすぐに返信が来る。
「めちゃくちゃチャンスだな!おれ、今から車乗り換えて追跡するよ。」
「え、大丈夫なの?」
「話してなかったけどおれさ、離婚して夜は1人でいるし時間あるんだよ。りこんちゃんは息子くんたちがいるから家にいて。大丈夫だから任せて。」
…え。幼馴染くんいつのまにか離婚してたの!?
また話を聞かないと。
私はGPSを追う。
相変わらずドラッグストアに寄っている。
しばらく停まっているようだ。
20分くらい経っただろうか。
「おれもドラッグストアに着いた!」
なんと元夫くんのいる時間に幼馴染くんが間に合った。
「りこんちゃんの元夫くんは、結婚式の二次会以来会ってないから、きっとおれの顔も覚えてないと思う。おれもちゃんと覚えてないし。ちょっと店の中入ってみるよ。」
「ちょっとわからないな…。男女で歩いている人がいない。」
「あれ、あの2人かな。かなり距離は取ってるけど、女が商品を男の方のカゴに物を入れている。」
「GPSでわかるよね、この薬局。このレシートがないかよくチェックしてね。」
次々と幼馴染くんから報告が入る。
ドキドキしている。
でも日常を送らなければならないので、お風呂の支度をして長男に体調が良くないことを伝えて三男のお風呂を頼んだ。
寝る準備をした。
その間も報告が入る。
「写真を撮ろうとしてみたけど、ちょっと距離をとらないと難しくて。ブレてるけど一応撮った」
と、写真が送られてきた。
レジ前に並んだ男女。
男は間違いなく元夫くんだ。
女は…俯いていてちょっとわからなかった。
「娘と兄嫁は背丈も髪型も同じくらいだから…判断が難しいかも。」
と送る。
その間に、GPSは移動した。
「GPSのマニュアルにあったけど、ぴったりくっついて追うとバレる危険もあるし、1人で追うと相手の車に夢中なって自分自身が信号に気づかなかったりするみたいだから、ちょっと時間をおいて追うことにするよ。」
GPSの方向を考えるとまた山奥の公園に向かうようだ。
「あの公園って駐車場2ヶ所あるよな。多分第二の方が奥だからそっちに停まる気がするからおれは手前の駐車場に行ってみる。さっき元夫くんの実家の車の車種とナンバーは把握したから大丈夫だと思う。」
さすが元刑事。頼りになる。
しばらく経った。
「車が停まっているのも確認した。携帯を見たりすると明るくなって、人がいるのもわかるけど、人気のない暗い奥に停めているからなかなか近寄りづらいな。」
「たまに車が来るんだけど、そのタイミングで写真は撮影しておいた。送っておくね。」
写真が送られてきた。
「ありがとう。写真も撮ってくれたし気づかれて幼馴染くんが何かあったら困るし。明日も仕事だから、幼馴染くんはもう引き上げて。」
と、お願いした。
「わかった。今日はちょっといきなりだったもんな。でも写真は撮れたから証拠として使えそうだな。とりあえず引き上げるよ。また作戦を練ろう。」
今回はまさか試しで入れたタイミングで動くとは思わなかった。
このバッグを持っていく事も判明した。
次動くのはいつか、考察してみることにした。