アリス・スウィート・アリス

【監督】 アルフレード・ソーレ
【音楽】 スティーヴン・ローレンス

【出演】 リンダ・ミラー、ポーラ・シェパード、ブルック・シールズ

アリス・スウィート・アリス

低予算の自主制作映画ながら、
ダリオ・アルジェントへの回答として、素晴らしい完成度を誇る名作スリラー。

犯人が仮面を外した瞬間の、「アッビックリマーク」と声を上げそうになる衝撃と、
皮肉で恐ろしいラストシーンが見ものだ!!

アリス・スウィート・アリス

12歳のアリスは、9歳の妹カレンとともに、
母親カテリーナにつれられて、教会に行く。

カレンが初めての聖体拝領を受けるお祝いに、
トム神父が、カレンに十字架をプレゼントしてくれた。

アリス・スウィート・アリス

アリスは、母親が妻子ある男性との間に産んだ私生児だったため、
聖体拝領が受けられなかった。

ヤキモチを焼いたアリスは、
仮面をかぶってカレンを怖がらせ、いじめていた。

アリス・スウィート・アリス

そして聖体拝領の日に、カレンは教会で、

黄色いレインコートを着て、仮面をかぶった何者かに
殺されてしまう。

アリス・スウィート・アリス
殺されるカレンの役は、まだあどけないブルック・シールズ。

犯人は、カレンを殺害すると、
カレンの死体から、
神父から贈られた十字架を奪い去った。

アリス・スウィート・アリス

尼僧がカレンの死体を発見し、
おごそかに儀式が行われていた教会はパニックになる。

この教会での死体発見シーンでの、

練りに練られた構図とカメラワークで、サスペンスを煽る撮影テクニックや、
パニックになる群集の動きのさばき方なんて、

監督のすごい才能を感じさせます。

アリス・スウィート・アリス

アリスがカレンのガウンを着て、聖体拝領の列に紛れ込んでいたため、
スピーナ警部は、アリスに疑いを向ける。

カテリーナを案じて世話をしに来た、叔母のアニーに厳しく叱られ、
アリスはさらに反抗的になり、大家の飼い猫を殺してしまう。

アリス・スウィート・アリス

そんな時、黄色いレインコートを着て仮面をかぶった殺人鬼が、
アパルトマンの階段で、アニーをナイフでメッタ刺しにする事件が起きる。

小学生用のレインコートを着た殺人鬼は、少女のように見えた。

アニーは取り乱して、犯人はアリスだったと口走る。

アリス・スウィート・アリス

取調べを受けたアリスは、
アニー叔母を襲ったのは、死んだカレンだったと主張する。

スピーナ警部はアリスの話を信じず、アリスは精神異常を疑われる。

アリス・スウィート・アリス

アリスの父親ドミニクは、娘の無実を信じて、
レインコートの購入者リストをもとに、真犯人を捜そうとする。

そんなドミニクのもとに、
自分が犯人だとほのめかす少女から、電話が掛かって来る。

黄色いレインコートに、仮面をかぶった少女の正体とははてなマーク

アリス・スウィート・アリス

これは名作といっても良いです。

『赤い影』(1973)からヒントを得たという、
レインコートの少女殺人鬼というビジュアル・イメージも、強烈なインパクトだし、

脚本がすみずみまで丁寧に練られていて、
二転三転するストーリーがスリル満点で、

異様なラストまで、抜群の緊張感で観ることが出来ます。

アリス・スウィート・アリス

殺人犯の疑いを向けられる少女アリスの鬱屈した心理を、
繊細な語り口で描いてゆく、ストーリー・テリングの秀逸さ。

アリス・スウィート・アリス

さらに、幼い娘を殺されたカテリーナとドミニク、
教育熱心のあまりアリスに手を焼く叔母アニー、
不幸に襲われた信者を気づかう神父のトム、
カテリーナと同様、かつて幼いわが子を失った痛手から立ち直れないトレドーニ夫人といった、

ひとりひとりのキャラクターの心理を、丹念に描き上げるスタイルには、
思わず引き込まれます。

アリス・スウィート・アリス

『赤い影』を参考にしながらも、
アルジェント・スタイルの殺人ミステリーでひきつけ、

先の読めない展開で、ハラハラドキドキさせられます。

アリス・スウィート・アリス
事件の鍵を握る、神父の家政婦トレドーニ夫人。

犯人が、カレンの死体から十字架を奪った理由など、
丁寧に張られた伏線が効果を上げ、

仮面の下から、意外な犯人の正体が現れるクライマックスの衝撃を盛り上げています。

殺人犯の動機に、
ルチオ・フルチ監督の『マッキラー』(1972)の影響が見られるのも興味深い。
『マッキラー』の、サスペンス映画史上での影響力の大きさが実感できます。

アリス・スウィート・アリス

犯人発覚の時点で、優れたミステリとして成り立っていますが、
意外な犯人だけで終わらせなかった所が凄い。

タネ明かしの後も、犯人の狂気をじっくりと描いて見せて、
異様な緊張感を保ちつづけます。

やがて、犯人の標的がアリスに向けられる展開で、
犯人が判った後も、サスペンスを持続させる腕前には感心します。

アリス・スウィート・アリス

そして、衝撃のクライマックスとラスト。

異様なまでのサスペンスの中、
アリスの目の前で、犯人によって振り上げられるナイフ。

殺人鬼の狂気を生々しく描いた、
異様な展開に驚かされます。

アリス・スウィート・アリス

血がほとばしり、血にまみれたナイフが床に転がり落ちます。

そのナイフを拾い上げるアリス……。

明らかに、ダリオ・アルジェントの名作、
『サスペリア2』(1975)を意識した場面です。

しかしその後、アリスがとった行動とは……。

アリス・スウィート・アリス

映画は、思いもよらない衝撃的な幕切れを迎えます。

人間心理の闇にひそむ魔性を、鮮やかに描いています。

アリス・スウィート・アリス

伝染する狂気。
愛が得られない人生では、誰もが殺人鬼になるかも知れない。

アルジェントが、デビュー作『歓びの毒牙』(1969)以来描きつづけているテーマが、
この作品でも、アルジェントに負けない鮮やかさで描かれています。

アルジェントに対する回答としては、自分が観た最良のものです。

アリス・スウィート・アリス

ナイフを手にしたアリスの姿は、

2年後に、カーペンター監督が発表する『ハロウィン』(1978)での、
マイケル・マイヤーズの姿へと重なってゆくのでしょう。

アリス・スウィート・アリス

練り込まれたシナリオと、きめのこまやかなサスペンス演出、
華麗で耽美的な映像美、
ショッキングなラストが印象深い逸品です。

日本では冷遇されてる作品みたいですが、
中古ビデオは割りとよく出回ってるみたいですので、
機会があったら、ぜひご覧ください。

オススメですグッド!