CAMPER とのコラボのこと その3
マヨルカ二日目にして最終日。
そしてこの日がいよいよカンペールの本社でのミーティングの日。
はるばる来た!本社!
この日のために前の年末から全集中でやってきた仕事。
いよいよとワクワクしながら朝早くに本社に入った我々を出迎えてくれたのは「試作サンプルがまだ届いていない」という悲報でした。
いつもならとっくに届いているタイミングだけど、やはりコロナ禍の影響で海外からの荷物が大幅に遅れているとの事。
打ち合わせができないなんて申し訳ない、とカンペール社内の工房でできる範囲のことで急遽サンプルを作ってくれていました。
その事自体は涙が出るほど嬉しかったけど、見せてくれたものはやはり設備が十分ではない状態で作ったものだったので、むしろ不安しか感じないものになっていたのです。
うーん。
↑This is 不安のカタマリ。
仕方ないかー、と思いながらもやはりこのコロナの状況がどうにももどかしい。
これさえ無ければー、と。まあ皆が思っている事だと思うけど。
そんなどんよりとした雰囲気の場に、「サンプルが届いた!」という知らせが入って来たのです。
ヤッホー。
そんな厳しい状況があったせいもあるのかもですが、届いた試作サンプルはどれもこれも光り輝いて見えました。指示したのと違う箇所もあったけど、それはそれでうまく出来ていてもう涙が出るくらい嬉しかった。
ピッカピカ!
途中、社食でランチを食べました。中庭に面した開放的なスペースで食べたランチ。
週末のランチではビールも飲めるらしい、、、まじか!
中庭にはレモンの木の畑があって、そのレモンを収穫してこの社食で使っているという話。その話は印象的でよく覚えています。
何か、夢の様だな。ここに来たことも夢の様になってしまうのかな、とか。
そんなことをぼんやり考えながら食べたランチ。
急激な安堵の気持ちからか、正直言って味も何も覚えていない。
そもそも何を食べたんだっけ。覚えてないな。
午後には本社の担当者と修正点を話し合い、スケジュールを詰め、無事に諸々全て確認を終えたのでした。
何よりもこんな状況でもサンプルが届き、ミーティングが出来た事にその場にいた皆がホッとしていたと思う。
実際このミーティングの翌日にはスペイン全土に非常事態宣言が発令され、カンペールのショップもオフィスも全て閉まり、社員は在宅勤務となったそうです。
結果的にはこの日の1日前でも後でもミーティングは不可能で、唯一のタイミングだったのです。今思えば本当にラッキー。
本社には今までカンペールは作って来た靴を全て保管してあるアーカイブルームというのがあって、撮影厳禁でしたが見学はさせてもらえました。
そこはもう夢の様な空間で、今まで欲しかったあの靴もこの靴も全てそこにありました。
私が初めて雑誌で見たあのTWINSも。
こんな状況だけど何とか無事に出来上がって、このアーカイブに加わって欲しい。あとはただ祈るばかりでした。
その夜、日本から来てくれたSさんと例のピーマンみたいな唐辛子の素揚げと白ワインで祝杯をあげました。
素朴なんだけど、これがとにかく美味しい。
私は翌朝早朝、彼はその半日後のフライト。
我々帰れるかねえ、なんて話をしながら。
短いマヨルカの滞在だったけど、この特殊な状況での打ち合わせは私の記憶に強烈な印象を刻んだのだけど、夢の様に覚めてスーッと消えてしまう気もする様な、そんな体験でした。
帰りの経由地、マドリードではガスマスクか?と思う様なマスクをした人たちが空港を行き来している異様な光景。
あと1日遅かったら帰って来れなかったのではないかな。
私よりフライトが半日遅かったSさんは空港で自分の飛行機のすぐ後までが次々と欠航に変わっていく掲示板を眺めながら「まるで映画のようだ!」と思ったそうです。
実際この後、世界中の状況は想像以上に悪くなっていき、私もSさんも帰国後は2週間の隔離を余儀なくされました。
この企画も連絡も途絶えてしまうのではないかと不安だったのですが本国側の担当者から淡々とメールが来てやりとりが続き、粛々と試作が進みました。
彼女は時間もしっかり守るし誠実だし指示も的確。
私のスペイン人のイメージがすっかり刷新されました(ずいぶん前だけど知り合いの設計事務所にインターンで来ていたスペイン人が昼食からなかなか戻ってこないと思ったら公園でシエスタをしていたらしい。←これが私の今までのスペイン人のイメージ)。
その後も私は一人ぼっちの事務所で作業を進め、おそらく彼女も自宅で粛々と作業を進めることで無事に連絡も続き、試作も進み、何とかこの企画が、靴が、出来上がったのです。
色々な意味で難産を極めた仕事でしたが、その分思いもひとしおだし、出来上がりも最高に良い出来になったと思います。
このデザインのシリーズは HOP STEP LIFE と、名付けました。
Men's
Lady's
Kid's
プリントトートバック
ジャガードトートバック
チャームたち
こんな時期だからこそ、この状況が収まった時にこそ、この靴を履いて出かけて欲しいと思う。
これを履いて出かけたくなる。そんな靴に、あの時雑誌で見たTWINSの様な存在になったら嬉しい。
この場を借りてこんな状況の中関わってくれた方々に、私の身も心も全ての最大限でお礼を申し上げます。
有り難うございました。
本当に本当に心からお礼申し上げます。