O もう一方の変えたことの面白さとしては、ウルトラマンのカラータイマーを無くしたことがあると思う。

T はいはい、それもマニアにはたまらなそうなポイントだね。

O ある番組で樋口監督がインタビューを受ける中で言っていたんだけど、もともと元祖ウルトラマンのデザインを作った成田亨さんという方はカラータイマーを付けることに反対していたらしいね。制作の過程で後から付けられてしまって、成田さんは後々まで「あんなもん付けやがって!」と言っていた(笑)という話があるらしくて、それで今回は思い切ってカラータイマーを付けない造形にしたみたいだね。そういうのは新しい解釈が入って面白いと思ったな。

T あれはビックリしたね。カラータイマーって、最近のウルトラマンにも付いてるよね?

O 最近のはちょっとわからないな。昭和専門なので(笑)。

T 子供の頃のイメージではカラータイマーこそがウルトラマンだったんだけどね。それが無ければただの塩ビ人形じゃん(笑)。

O おいおい、正義のヒーローやぞ(笑)!

T 3分しか戦えなくて、残り1分でカラータイマーが鳴り出してからがようやく本番だったと思うんだが。そして前の2分に比べて残りの1分がやたら長いのがお約束だったと思うが(笑)。

O 「ウルトラマンは地球では3分しか戦えない」ってナレーションが入ったりするんだけど、あれ?もう3分経ってない?って(笑)。

T そういうツッコミどころがあるのも含めてのウルトラマンだったと思うんだけどね。それが無かったら無限に戦える、永久機関搭載のウルトラマンかよってなるよね。あ、今のはエヴァのネタなんだけど、わからない(笑)?

O すみません、エヴァのほうは素人なので(笑)。

T まあとにかく、3分しか戦えない設定が無くなっちゃうのは気になったね。

O それとこの流れでゼットンのことも話しちゃうと…

T もうゼットン行っちゃうの?流れ的にちょっと…

O ああ、すみません、流れを忘れてました(笑)。ゼットンは一旦置いておきましょう。

T 全体の展開としては、まずウルトラマン登場以前の人間VS禍威獣のパートがあって、ウルトラマン登場のパートがあって、その後は政治的なパートに入っていく。ウルトラマンが巨大な禍威獣とドンパチやるのではなく、等身大の外星人と政治工作するのがメインになっていく。

O そもそも元祖『ウルトラマン』の敵にも大きく2種類あって、怪獣と宇宙人がいる。昔は「宇宙人」と言ったんだけど、今回は「外星人」と言われていて、そこもいやらしいなあと思いながら観てたんだけど(笑)。

T 「怪獣」が「禍威獣」になってたり、漢字が変えられてたりもしてるね。「科特隊」も「禍特対」になってる。

O たぶん想像するに、「宇宙人」と言うと地球人も「宇宙人」の一部なわけだから、外国みたいな意味合いで「外星人」という呼び方に変えたんだろうね。普通の人ならそんなこと気にならないと思うんだけど、そこを気にして「外星人」とするあたりがマニアックだよね。

T でも既存のコンセプトを少し変えて新しい概念として出すのは映画でありがちじゃないかな。パッと思いついたところだと、『スターウォーズ』に出てくるC-3POとかR2-D2とかは、普通の感覚で言うと「ロボット」と呼ばれると思うんだけど、それを「ドロイド」と呼んでるんだよね。それによって「ロボット」とはまた違う、近未来的な新しい概念を持たせている。ここでの「外星人」も、これまでの「宇宙人」とは違うという含みを持たせているんじゃないかな。

O 僕は映画の手法的なところにはあまり詳しくないけど、たしかにそういう意図もあるかもしれないね。外星人との政治的な交渉が出てくるあたりも元祖『ウルトラマン』には無かった要素だと思うし、外交の意味を込めての「外星人」なのかもしれない。

T そもそも昔は怪獣と戦うことがメインだから、交渉するとかいう発想自体が無かったんじゃないかな。

O でも今回山本耕史がやっていたメフィラスとかは、元祖『ウルトラマン』のほうでも日本語を話す知的な宇宙人として登場していたけどね。あそこまで具体的に国と交渉したりはしてなかったと思うけど。

T 個人的にはあそこのパートが一番面白かったな。庵野秀明はリアリティに凝りたい人だと思うから、特撮に関してもファンタジーだけでなく、リアリティを持ち込みたいという思いは伝わるんだけど、ただ、今回は『シン・ゴジラ』で霞ヶ関・永田町が細部まで描かれていたのに比べると、少し甘さがあったかなという気もする。日本全体で戦ってるというよりも、禍特対のメンバーだけが右往左往してるようにも見えちゃったし。

O それで思い出したけど、たしかオープニングのほうで「禍威獣はなぜか日本にしか出現しない」ということも言ってたね。たぶん元祖の頃から誰しもが疑問に思うものの、それは言っちゃいけないタブーなのかと思ってたけど、あっさり言っちゃうんだと思った(笑)。

T そしてなぜか長澤まさみが急に巨大化しちゃったりもする。

O ああ、あれね。女性隊員が巨大化するくだりは元祖のメフィラスの話にも出てくるので、あの場面を入れるのはとくに違和感ないんだけど、元祖のほうはたしかそんなに時間を割かずにチラッと出てくる程度だったと思うから、そこにここまでフォーカスするのは庵野先生のこだわりなんだと思って観てたよ。

T やっぱり最初の人間VS禍威獣のパートをもっと手厚くやってほしかったな。できれば二部作にしてほしかったぐらい。

O そうなってくると間に入るべきなのは『シン・ウルトラQ』なんだよね。『シン・ウルトラQ』があってからの『シン・ウルトラマン』だったら完璧な流れだったかもしれない。

T それでいいかもしれないね。全体的にせわしない感じがしたから、一作でここまで全部やらなくてもよかったんじゃないかとは思うね。もっとじっくり観てみたかった。

 

To Be Continued...