2021年3月10日(水)日経夕刊3面(総合)に「「被爆、健康に影響低く」福島原発事故で国連報告」との記事あり。
原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)は9日、東日本大震災による東京電力福島第1原子力発電所事故の影響を分析した2020年版報告書をまとめた。
被曝(ひばく)が健康に直接影響を与える可能性は低いと結論付けた。
小児の甲状腺がんの増加は被曝が原因ではないとも指摘した。
UNSCEARは論文や調査を検証し、被曝による健康への影響の科学的根拠をまとめている。
今回は前回13年版の報告書作成時よりも多くのデータを基に分析した。
報告書は、原発周辺地域から避難した住民で事故後1年の実効線量は大人で最大5.5ミリシーベルト、1歳児で同7.8ミリシーベルトになると推定した。
被曝線量が100ミリシーベルト未満なら、明らかな健康被害はみられないとされる。
甲状腺がんとの関係では、子どもや胎児を含めいずれの年齢層でも、被曝によるがんの増加は見られそうにないと強調した。
診断例が増加しているのは、高精度のスクリーニング検査によって「これまでに検出されなかった甲状腺異常の罹患(りかん)率を明らかにしたにすぎない」などと説明した。
福島県は県内すべての子どもを対象に甲状腺検査を実施し、一部はがんやその疑いがあると診断されていた。
報告書は、原発の作業員についても、白血病やがんになるケースが増える可能性は低いと結論付けた。
UNSCEARは日米欧など27カ国の科学者らで構成される。