2021年2月27日(土)日経朝刊42面(社会)に「AI・量子分野の学生支援 博士課程1000人に年200万円超給付 国際競争力の低下防ぐ」との記事あり。

政府は2021年度から、「情報・AI(人工知能)」「量子」「マテリアル(素材)」の3分野に重点を置き、大学の博士課程の学生を対象に生活費などを支援する

約1千人に年間200万円超を給付する

経済的な不安を解消することで博士課程進学を促し、人材のニーズの高まる分野で国際競争力の低下を防ぐ狙いがある。

文部科学省は26日、対象となる47大学を発表した。

大学が特定の研究分野について補助を申請し、選ばれた大学は21~27年度の7年間、補助を受けることができる。

国は「産学を通じて人材ニーズの高まる分野」として重点的に支援する3つの枠を指定。

国際競争が激しくなっているAI技術、情報処理や通信技術の開発などに必要な量子技術、高性能素材の開発を担うマテリアルのいずれも、科学技術政策で戦略的に取り組む分野とされている。

このほかに大学が自由に選べる1枠も設けている。

1つの大学が2枠以上で採用された場合もある。

補助を受けることになった大学は、3月中に1枠あたり6~40人程度の学生を募る。

原則として、21年4月に博士課程に進学する予定の30歳未満の学生が対象で、他に公的な給付金を受けることが決まっている場合は対象外となる。

出産や育児の経験によって年齢制限が緩和されることもある。

対象の学生は3年間にわたり、年間200万~250万円の給付を受けられる

生活費は2カ月分を定期給付し、研究費は本人が立て替えた分を実費で支給する。

国が3分の2を補助し、残りを大学が負担する

博士課程のある大学は459校あり、約7万5千人が在籍している。

文部科学省によると、生活費などとして年間180万円以上の公的支援を受けている学生は1割程度にとどまる。

今後の国際競争の中で、政府が制度を整えた背景には、経済的な不安などから博士課程への進学が敬遠され、研究分野での国際競争力が弱まる懸念があるためだ。

文科省によると、20年度の博士課程進学者数は、ピークの03年度から2割減の1万4659人だった。

博士号取得者も17年度は1万5118人で、08年度から1617人減った。

人口100万人あたりだと17年度は119人で、08年度から12人減った。

海外では米国268人(63人増)、中国43人(11人増)、韓国284人(93人増)、ドイツ344人(32人増)、英国376人(90人増)、フランス168人(1人減)だった。

自然科学分野の数字が不明な中国を除く6カ国で、同分野の博士号取得者が減ったのは日本だけだった。

東京大の福留東土教授(高等教育論)は「対象人数や支給金額の規模は、これまでの博士学生への経済支援を大きく上回る」と評価。

「支援を継続すれば学部学生や高校生以下にも動機づけとなり、人材育成や研究力の維持につながる」と話している。