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「アイツは変わり者だから使いづらい」愚痴るリーダーが見落としている本質とは?

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ダイヤモンド・オンライン

写真はイメージです Photo:PIXTA

 

 「あいつは変わっている」「問題がある奴だ」と部下を評するリーダーがいる。

 

だが、組織が抱えるこのような「問題」は、従業員個人の能力の問題ではなく、個人と組織の相性の問題であると組織開発専門家の筆者は指摘する。

 

目標達成に向けて改革を行うために、組織が重ねるべきディスカッションの極意を説く。本稿は、勅使川原真衣『働くということ 「能力主義」を超えて』(集英社新書)の一部を抜粋・編集したものです。

 

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● 「問題なんです」という訴えは 果たして本当に「問題」なのか?

 

  私は教育社会学という、学校をはじめとする社会システムをあえて疑ってみる学問を学んできました。

 

そのせいか、基本的に人々が「問題なんです!」と言うことが本当に問題なのか、常に疑っています。

 

「問題」は往々にして、「設定」されるものだと経験的・学問的に知っているためであって、ただ性根が曲がっているわけではないと思っていますが、どうでしょう。

 

  ですので、私の場合、ご相談をいただく際には、「これこれが問題なんです」との訴えそのものに聞き入るというより、何を問題だと当人が「語っている」のか?に神経を集中させます。

 

  「猫の手も借りたいとはいえ、あいつは『変わってて』使いにくいんだよなぁ」  「あいつ個人は抜群に『優秀』なんですがねぇ、いかんせん○○本部長とは水と油で、部内の雰囲気を悪くしてるんです」

 

  「『いい人』ほど辞めちゃうんですよねぇ。

 

ややこしい奴らが集まって、ひーこら言いながらやってますよ」 

 

● 個人の能力の問題に 矮小化していないか?

 

  これらの嘆きに対して、「結局部長のリーダーシップの問題が~」「評価制度をてこ入れしないと~」「採用精度の問題ですよ、求人掲載プランをアップグレードしたほうが~」などと言っている場合ではないということです。

 

真にどうにかして力になりたい、現状を変えたいのであれば、愛と少しばかりの勇気を持って、次のようなことを卒直に問うべきではないでしょうか。 

 

○「よい個人」(能力の高い個人)が「よい組織」(「成果」を上げられる組織)をつくっているのか?逆もまた然りで、「成果」がいまいちな組織は、特定の悪い個人(能力の低い個人)が悪さでもしているのか?一人ひとりがもっと「優秀」で「稼げる」存在ならば、組織は安泰なのか?ちなみにその「優秀」とは、額に「優秀」とでも書いてあるのか?

 

○この世に「望ましい性格や能力」と「望ましくない性格や能力」があるのか?組織で問題を起こすのは、前者を持っていない人なのか?

 

 ○言い換えると、自分がまともに仕事ができているのは、自分の能力が高くて、「優秀」だからなのか?あなたを「良し」としてくれている周りのメンバーに恵まれていたり、景気や市場環境がたまたまよいことも多分に影響しているのでは?……など。

 

  そしてさらに、次のことまで問い尽くす。

 

これが、解くべき問題の「設定」を紐解く、大事な一歩と考えます。

 

 ○本当は、組織として策を講じるべきところを、個人の能力の問題に矮小化しているのではないか?

 

個人の能力の問題にしたほうが都合のいい誰か、つまり特定の人の利害と結びついたまま、問題が「設定」されていないか?

 

分かりやすさが実際の有用性より優先されるなど、問題解決用に問題視されていないか?

 

  考えはじめると、結構頭が痛いですが。

 

 ● 「変わってる従業員」は 本当に変な奴なのか?

 

  先の「変わってる奴」と称される個人の話をします。

 

その人のせいで組織がうまくいかない、という不満が噴出しているわけですが、着眼すべき点は、個人をそんなふうに決めつける組織の側にもあるのではないでしょうか。

 

  個人と組織との相性の話なのに、一個人を「変わってる」と評するその組織だって、「クセツヨ」なのではないか?と問うて然るべきと考えるのです。

 

「使いやすい」「部内の雰囲気」「いい人」「ややこしい奴ら」……など、すべてそうです。誰から見た、何の話なのでしょう。職場においてこれらの「評価」を下す組織の構造を、対話や観察の時間をいただき、つぶさに調べていきます。

 

 ある組織の現状のダイナミクス(力学)を明示した上で、これから組織が達成したい・すべきことに合わせて、変えるべき点はどこか?

 

改革するためには現状の組織力学のうちどの点をいじるとよさそうか?を示し、ディスカッションを深めていくわけです。

 

  話者が解釈や意図を持って使っている表現を、問いを通じて手繰り寄せ、話者が見ている世界観を理解した上で、解釈の溝を埋めていく……この営みですが、遠慮会釈なく切り込んでいくわけですから、まず間違いなく、ザラザラとした、居心地の悪い時間になることは、あらかじめお伝えしておきます。

 

  あまつさえ、あまりに無邪気に迫るので、「忖度ってことばを君は知らないのか?無礼だ!わきまえよ!」などと??られるかもしれません。

 

  不都合な事柄を問い質すときこそ敬意が必要なので、尋ね方は注意するに越したことはありませんが、個人攻撃ではまったくもってないこと、また、「素朴な疑問を口にすることが、組織に蔓延る慣習・所作の問い直しにつながり、ひいてはあなた自身ももっとのびのびと働くことにつながる」ことを強調・説明する必要はあります。

 

  普段からこんなことを言い慣れている人は珍しいでしょうから、口が言うことに慣れるまでお風呂で訓練することを、問いかける側の方にはお勧めします(これ、真面目な話です)。

 

 ● 「怒っている人」に 着目して組織を観察

 

  ちょっと余談ですが、「怒っている人」に着目して組織を観察することは、組織を立体的に捉える方法の1つとしてお勧めです。

 

精神科医の水島広子先生語録の1つに「怒っている人は困っている人」というものがあるのですが、これは本当に真理だなぁと、組織に分け入るたび、自分自身の身の周りで起きることを俯瞰するたびに思います。

 

 今回の話で言えば、組織の非公式のルールについて、部外者から疑問を呈されるのですから、相手にとっては不快、不安な場合が多々ある。

 

  ただ、怒りは最初に感じる一次感情に次ぐ二次感情ですから、一次感情としては、まずは「戸惑い」なわけですね。

 

目に見えるのは「抗議」や「反抗」という形かもしれませんが、必ずその前に、その人は何らかの事情で戸惑ってしまったのだということを理解したいところです。

 

「反抗的な奴め」と個人を戒めにかかる前に、この人の熱量を怒りのほうへ向かわせてしまった組織の地雷は一体どこにあるのか?という視点で冷静に情報収集を続けたいものです。

 

 ● 「問題」とされる大半は 本質的には「問題」ではない 

 

 ちなみにこの営みは、スムーズでタイパよく事が進むことを好む人にとっては特に、忌避される状況なはずです。

 

しかしそこを避けると、問題の表層をなぞり、個人の能力の問題として誰かを悪者にするような、小賢しい手立てに終始するのがオチだと、経験上思うので、慎重かつ果敢にいきたいところです。

 

  誰も問題提起しないからこの現状があり、声なき声が埋もれているのなら、やれる状態にある人がやろうではないですか。

 

さも当たり前のように大人がしたり顔で語るが、実はうやむやにされていそうな点について、自分が小学生になった気分で、「あのちょっと、スッと頭に入ってこなかったんですが」「今お話を伺っていて、一般的な○○のことばの意味とは違う感じがしたので、少し深掘りしたいのですが……」などと前置きしながら。

 

  また同時に、個々人の「解釈の傾向」と照らし合わせながら、職場を何度も見回り、実際の仕事の回し方を捉え、言語化します。

 

そうしていると十中八九、当初「問題」とされたものが本質的には「問題」ではなさそうだぞ、と気づくのです。

 

勅使川原真衣

 

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