『ゆみちゃんの宝物』
著者 響姫～otohime～
流れ星がふる丘の上に
ゆみちゃんという女の子がすんでいました。
その丘には 夜になると満点の星空の中、
流れ星がキラキラとふってきます。
暗闇の中でキラキラ光るお星さまは
クリスマスのイルミネーションよりも
都会のピカピカよりも
ずっとキレイで優しくて
何かを話しかけてくれているようでした。
ゆみちゃんは この場所が大好き！
そして お星さまが大好きでした。
ゆみちゃんには大切にしている宝物があります。
それは 小さいころにお庭でひろった流れ星。
ひろったときにはただの石ころになっていたけど、
なんともいえないキラキラの光をはなって
ゆみちゃんに 『こんにちは』 とでもいうように
窓からお星さまを見ていた
ゆみちゃんの目の前に落ちてきました。
石ころみたいな流れ星は
さわると少しあたたかくて
なんだか甘い香りがします。
落ち込んでいるときにさわると
不思議とポワンと明るくなって
ゆみちゃんを元気づけてくれるのでした。
ある日 ゆみちゃんは
お友達のお家に遊びに行くことになりました。
宝物の見せ合いっこをするためです。
『お友達はなんていうかしら！』
ゆみちゃんは ワクワクしながら
お友達のお家へむかいました。
『こんにちは～！』
お友達のお家で
テーブルの上に置いてあった
赤いピカピカ光っているものを見て
ゆみちゃんはビックリしました。
『これはなに？』
『これが私の宝物よ。宝石なの。きれいでしょ～！』
ゆみちゃんは
こんなにピカピカ光るものを初めてみました。
そして 持ってきた石ころみたいな流れ星を
お友達に見せるのが 恥ずかしくなってしまいました。
『ゆみね、宝物を持ってくるのを忘れちゃったの。
でも ゆみの宝物は もっとピカピカなんだから！』
するとどうでしょう。
ポケットに入れていた石ころみたいな流れ星が
大きな強い光で ピカピカと光りはじめました。
ポケットからあふれるほどの強い光に
お友達はおどろいて言いました。
『ゆみちゃん、ポケットの中に何を入れているの？』
ゆみちゃんは おそるおそる、
石ころみたいだった流れ星を
ポケットから取り出しました。
『こんなにピカピカ光るものを見たのは初めてだわ！』
お友達は大喜びでした。
でも ゆみちゃんは
なんだか心が苦しかった。
ゆみちゃんが家に帰ると
石ころみたいな流れ星は
もとの姿にもどっていました。
『流れ星さん、ごめんなさい、、、ごめんなさい、、、』
ゆみちゃんは何度もつぶやきました。
その夜、石ころみたいな流れ星が
夢に出てきてこう言いました。
『ゆみちゃん、
私をいつも大切にしてくれて ありがとう。
私はお友達の宝石のように
ずっとピカピカ光ることはできないけれど
私の命を あなたにあげます。
わたしは ゆみちゃんが大好き！
いつも空から
ゆみちゃんのことを見守っているよ。』
目が覚めると
石ころみたいな流れ星はなくなっていました。
そして ゆみちゃんのお腹が
ぷくーッと風船みたいにふくれあがっていきます。
『キャー！どうなってるのー？』
なんと、
風船のようにふくらんだお腹の中には
赤ちゃんが入っていました。
ゆみちゃんには分かりました。
これは流れ星さんからいただいた 大切な命。
ゆみちゃんは、なんども なんども
お腹の中の いとおしい命に話しかけました。
わたしの可愛い赤ちゃん、
気分はどうですか？
わたしの可愛い赤ちゃん、
早くあなたに会いたいわ！
わたしの可愛い赤ちゃん、
どうか無事に生まれてきてくれますように・・・
そして時が満ちたとき、
ゆみちゃんは元気な女の子を出産しました。
無事に生まれてきてくれた
ただそれだけで
ゆみちゃんは 一生分の親孝行をしてもらいました。
『ありがとう ほんとうにありがとう』
このあふれ出る涙を 忘れてはいけないと思いました。
今日この日 ゆみちゃんは
かけがえのない大切な宝物に出会いました。
どんなにキレイな宝石よりも
わたしの指を ギュッとにぎってくれるあなたの手が
どんなに高価なものよりも
わたしを探す あなたの瞳が
こんなにも愛おしくて大切だということ。
ただここにいるということに
こんなに感謝の気持ちがあふれたのは 初めてでした。
ゆみちゃんは
誕生したかけがえのない命に
美しい心の女の子に育ちますようにと
’’こころちゃん’’ と名付けました。
つまずいても 迷っても
心にちゃんと手を当てて
正しい目で見れますように。
大きな波がこようとも
心の声に耳を澄まし
まっすぐ前を向けますように・・・
今日も流れ星がふる丘には
満点の星空の中
キラキラとお星さまがふってきます。
ひとつひとつの命が
それぞれの光をはなって 輝いていました。
あなたに祝福を♡
響姫〜otohime〜