この記事は、先月の4月30日に行われた、
『介助つきコミュニケーション研究会』に参加したときの感想です。


とても温かい会でした…が、ガッカリした部分もありました…。

それは「危険性」についての説明がなかった所です。


『介助つきコミュニケーション』 には必ず危険が伴います。

それは1990年代からアメリカ等でずっと研究されてきたことです。

そして、アメリカやカナダでは最近になっても
『介助つきコミュニケーション』 による事件が起きています。


その中には、無実の人が逮捕されたり、
思い込みで会話を行ったために罪を犯してしまったり、
子供が亡くなったケースさえあります……。

 

(英語が読める方は、英語版Wikipediaの
右矢印Facilitated communicationのページで事例を見て下さい)

 

そのように危険なものですから、
私は繰り返し「ちゃんと危険を知った上で使ってほしい」
「危険も知らせた上で広めてほしい」 と、書いてきました。

しかし、その意識はまだ完全には共有できていないようです……。


危険というのは気をつければ大丈夫というものではありません。
どんなに安全運転を心がけても交通事故が起きることもあります。

だから免許を取るときには事故に気をつけるよう教わりますし、
車を作る会社もシートベルトやエアバッグを用意しています。

 

つまり、危険を覚悟した上で危険に備えているわけです。
そのおかげである程度は安心して利用することができます。


私は指談(や指筆談・その他の介助つきコミュニケーション)についても、
自動車と同じように「備え」をしてほしいと思っています。

困っている人のために役立てたいなら尚更です。

 

危険に備えずに使って間違いを犯してしまったら、
その人は深い後悔に襲われてしまうことでしょう。


ですから、指筆談などの持つ「危険性」について知るのは大切な事です。

これは、指筆談を使ってはいけないとか、広めてはいけないとか、
そういう意味ではありません。

 

交通ルールを学ぶのと同じように、
介助つきコミュニケーションについても
過去の事例や失敗に学んで気をつけようという意味です。


今回の『研究会』 (及び『きんこんの会』公開シンポジウム) では、
その「気をつけよう」の部分があまりにも足りない…と感じてしまいました。

「成功したよ」 「うまく行ったよ」 という話だけ聞いてしまうと、
人は「自分もできる、大丈夫だ」と考えてしまいがちです。

 

けれど、どんな職業のプロにもミスはつきものですし、
一流になるまでにはたくさんの失敗を積み重ねている事でしょう。
その失敗の話を共有し、勉強に活かすことは、とても大切です。


今回の『研究会』で、なぜそういった話をしなかったのか、
私は単なる参加者なのでよく分かりません……。
最初なのだから明るい話を中心にしよう、という意図かもしれません。
確かに初回から暗い話をすれば、興味をなくしてしまう人もいるでしょう。

 

でも、もう少しだけでも、何とかできなかったのか……。

 

その思いが私に 「ガッカリ」 の印象を植え付けてしまいました。
もちろん、障碍者支援に対する問題提起など、
聞くべき点もたくさんあったのですが、
『介助つきコミュニケーション』 の 『研究会』 としては、
良い面だけでなく危険性も一緒に伝えてほしかったです……。


しかし次回からは、使用者の体験報告だけでなく、
正確さの実験についても話していくとの事でしたので、
そういった難しい話は第二回から、という事なのかもしれません。

 

今回の会にのみ出席された方が誤解をしてしまわないか……、
その点だけはとても心配ですが、心配ばかりしても始まりません。

この感想は『アンケート回答』として(遅くなってしまいましたが)
アンケート用紙の指定のアドレス手紙にお送りしようと思います。


<ここから余談です>

実を言うと、こういった内容を直接お伝えするのは未だに気が引けます。
「ここがダメだと思いました」という感想を言うのは正直気まずい事です。
『バッシング』や『誹謗中傷』と受け取られたらどうしよう、とも思います。

 

けれど、そう考えるあまり私が「知らんぷりしよう…」と思ってしまったら、
早めに改善できたはずの点がずっと残ってしまうかもしれません。
なので、小心者なりに勇気を出して、こうやって文章を書いています……。

私も別に意地悪でやっているわけではない…と信じて頂けたら嬉しいです(^_^;) (終)

 


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