第二回 プロジェクトまで
プロジェクト夜明け前
はじめに、このプロジェクトを僕たちが提案するにいたった経緯を説明しておこう。
僕は出版社時代に、様々なお寺での広報活動プロジェクトに関わらせていただいた。
たくさんの和尚さまとお会いして、お寺での日々のこと、お檀家さまとのこと、お寺の
未来についてなど、色々なお話を聞かせていただく機会に恵まれた。
その後、お寺の広報活動を専門にお手伝いする出版社をおこした。
お寺のパンフレットや小冊子を制作するたくさんの会社の中で「お寺のために自分たちが
できることは何か?」「自分たちにしかできないことは何か?」それを探し続けていた。
ある日、僕は数ヶ月ぶりにS寺の住職さまを訪問した。
S寺さまとは、まだ僕が出版社に在籍していた頃にミニガイドブックを制作させていただいた
ご縁で時々、近況報告に伺っていた。
いつものように住職さまとお話をしていた時のことだった。
ミニガイドブックの冒頭部分を見ながら、住職さまはこのように言ってくださった。
「このページがあるからこそ、その後の説明がスーッと心に届くのですね」
その一言を聞いた途端、僕の心に突然閃光が走った。
「これだ!」僕は心の中でこう叫んだ。
そのミニガイドブックには、著名な画家さんと童話作家さんの
書き下ろしによる物語が冒頭に掲載されている。S寺の開基さまの一生を紹介した物語だ。
優しい色調で描かれた絵と子供にも読める平易な文章で綴られた見開き1ページの短編。
社会科の地域学習でお寺のことを調べに来た小学生にも、開基さまのことが
わかるようにと盛り込んだページだった。
ミニガイドブックはこの物語で始まり、
後にお寺の歴史や建物を文字で紹介したページが続く。
開基さまの体温を感じる冒頭の物語があることで、この文字だけで綴られた
お寺の解説がスーっと心に届く。と言ってくださったのだ。
この「人の温もりを感じるお寺の物語」を一冊の本にできないか。
それも幅広い年齢の人々にも親しみやすいように絵本にすることができれば、
今よりもっとたくさんの人たちに、このお寺のことを伝えられる。心に深く刻んで
もらうことができるはずだ。そう考えたのだ。
早速、僕はプロジェクトの立案に取りかかった。
