優しいは、きっとつくれる~初めて人の大便を片付けました | おたるつ

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先日、初めて大便を片付けた。
 
以前、働いていた勤め先で、上司がホカホカの人糞を踏んだことに気づかずご出勤され、
職場の床がまんべんなく汚染されたのを掃除したことはあったが、
こんなに本格的な大便を片付けたのは初めてだ。
 
大便の主は80半ばの祖母。ここんとこ生きる気力が一層失せたのか、
以前よりトイレの失敗が増えた。
その度、母が対応していることは知っていたが、祖母にもプライドがあるだろうから、
私は知らないふりを続けてきた。
 
大便チャンスがまわってきたのは、水曜の朝。
母は仕事に出ていて、たまたま休日出勤の代休で家にいた私を祖母が呼んだ。
2階から降りると、においですぐに何が起こったか把握できた。
まだそのときはなんとか歩けたので、トイレまで自力で歩いてもらい、
その間にマスクを付けて家中の窓を開け放った。
 
「ごめんね、ごめんね」と言う祖母のオムツを慎重に脱がせてビニール袋に入れ、
何をどうしていいのかわからなかったのでウォシュレットでなんとかしてもらって着替えさせた。
どうやら飲んではいけないと言われていた便秘の薬を飲んだようで、
ズッシリしたオムツから、さぞや腸内はスッキリしているだろうと予想された。
私はにおいとやるせなさで涙ぐみながら片付けを終えた。
 
それから数日、祖母はみるみるうちに弱り、今はもう自力で起き上がることすらままならない。
他人の体のことは分からんが、体が弱くなっているというより本人にやる気がないところが大きいように見える。
それ以上に夜中何度も起こされてヘトヘトになっているのが母。
 
母は厳しく、父性的な人だ。
小中学校の教員を勤めて一旦退職し、今は常勤講師として働いている。
30年以上、教え、励まし、頑張れば伸びる子どもとしか触れ合ってきてない母は、
向上が期待できない祖母との向き合い方が分からない。
実の母ならなおさら、やりきれない感情が邪魔をする。
 
私は夜中、祖母を責める母の声で何度も目が覚める。
ときどき声を掛けに行く。
私が起きてしまうことを母と祖母が申し訳なく思うので、私は寝たふりをする。
 
とんでもなく父性的な母親が、女系家族の中心で絶対的正しさを振るう。
そういう家庭で、私も他人に厳しい人間に育った。
何かができないのは自分も他人も努力が足りないからだと思ったし、できるまでやるのが当たり前だと思っていた。
その上、小学生からスパルタな部活に入ってしまったため、「できる」と言うのは
100回やって100回できるまでやるのが「できる」だと信じていた。
だから部活でできない後輩を泣くまで居残り練習させたし、泣いても止めなかった。
相手を思っていれば大丈夫だと思っていた。他人に対して優しい人間でなかったのは確かだと思う。

働き出したとき、同じ職場に営業成績の良い先輩がいた。
彼女は“いい子”だった。人当たりが良く、自然にお客さんに共感したり、寄り添ったりできる。
売ってやろう、という気持ちは強い人だったが、彼女から商品を買ったお客さんは
「売られた!」とは感じないだろう。感じの良い人に勧められたから買ったのだ。
彼女の持っている天然の優しさは武器だった。私は、これは私にはできないな、と思った。
天然の優しさは私にはない。でも、売れるなら真似したかった。
だって彼女を抜かないと、営業成績1位にはなれないから。
 
私はビジネススキルとしての「優しさ」を磨くために、まず、相手の話を聞くことから始めた。
相づちの打ち方や聞いてますよというリアクション、話は絶対遮らず、最後まで話してもらう。
自分の感情を優先すると共感することは難しいが、どんな意見も「一理あるな」と思うようにした。
その人がそう思ったのは事実なのだから。
相手に「あなたの言うことは一理あるね」と伝えてからこちらの考えを話せば、要望は案外通りやすい。
そうか、話すことより話させることが大事なのか。
愚痴、自慢、昔話…決しておもしろくも仕事と関係もないが、
お客さんの話を聞いて共感してあげると商品はポンポン売れた。
後日、新たなお客さんを連れてきてくれてまた売れた。
 
ビジネススキルだったはずなのに、いつのまにかプライベートでもやるようになった。
相手の話を聞いていると人となりがよく分かる。
「この人こうゆう人だったらいいな」と思うより前に「この人こうゆうとこあるんだな」と受け入れてしまうと、
相手が何か失敗してもあまり腹が立たなくなる。
悪くいえば、人に期待しない。
もともとがビジネススキルなので、自分の欲求を優先しなくても平気でいられる。
そんなことができるようになった頃から、他人から「優しい」と評価してもらえることが増えた気がする。

「優しい」とはなんなのか。
自分の話を否定せず聞いてくれたり、失敗を許してくれたり、
タイミング良くかけて欲しい言葉をくれる人は優しいのだろうか。
それなら「ビジネス優しい」でもできる。
自分の話をせず、人に期待せず、よく観察すればいい。
人としてそれでいいのかと聞かれたら分からない。
 
階下から聞こえる叫びのような母の声。
もうあきらめてしまえばいいのに。あきらめて優しくなってしまえばいいのに。
私がさほど嫌な思いをせずに祖母の大便を片付けられたのは、たぶんビジネス優しいからだ。
変えることが難しい現実の前で、誰かを責めるのは不毛だ。
でも「優しい」はきっとつくれる。そう思えるのは希望的じゃないんだろうか。
優しくなることはできなくても、優しくすることならきっとできる。
いつの日か「なんでもっと優しくしなかったんだろう」と自分の優しくなさを後悔するなら、
今つくりものの優しさで包んであげたっていいではないか、お母さん。
 

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