Chapter91 不動産鑑定評価基準各論 第1章 | 不動産鑑定士&受験生必見!! “不動産鑑定評価基準の解説”

不動産鑑定士&受験生必見!! “不動産鑑定評価基準の解説”

こんにちは、不動産鑑定士の大島です。
これまでの実務経験、講師経験、実務修習指導経験を活かして、不動産鑑定評価基準の解説をしていきます。
初心者でもわかりやすい、目から鱗の解説を目指します。

Ⅱ 農地


公共事業の用に供する土地の取得等農地を農地以外のものとするための取引に当たって、当該取引に係る農地の鑑定評価を求められる場合がある。

この場合における農地の鑑定評価額は、比準価格を標準とし、収益価格を参考として決定するものとする。再調達原価が把握できる場合には、積算価格をも関連づけて決定すべきである。

なお、公共事業の用に供する土地の取得に当たっては、土地の取得により通常生ずる損失の補償として農業補償が別途行われる場合があることに留意すべきである。


(解説)

農地が市場で取引される場合、現実に農地として使用することを目的として行われるのが通常であると考えられる。このような農地の評価を行うことは、鑑定評価の範疇ではあるが、不動産の鑑定評価に関する法律上の不動産の鑑定評価に含まれないことになる。

しかし、農地であっても、道路や鉄道等の公共事業のためにこれを取得する(農地を農地以外のものとするための取引)にあたり、鑑定評価を求められる場合がある。これは、不動産の鑑定評価に関する法律上の不動産の鑑定評価に例外的に含まれる。基準では、このような場合の鑑定評価の手法について規定している。

 

 

農地の鑑定評価額は、比準価格を標準とし、収益価格を参考として決定するものとする。再調達原価が把握できる場合には、比準価格と積算価格を関連付けて得た価格を標準とし、収益価格を参考として決定する。なお、公共事業の用に供する土地の取得に当たっては、土地の取得により通常生ずる損失の補償として農業補償が別途行われる場合があることに留意すべきである。〔図表1’-22

 

 

Ⅲ 林地


公共事業の用に供する土地の取得等林地を林地以外のものとするための取引に当たって、当該取引に係る林地の鑑定評価を求められる場合がある。

この場合における林地の鑑定評価額は、比準価格を標準とし、収益価格を参考として決定するものとする。再調達原価が把握できる場合には、積算価格をも関連づけて決定すべきである。

なお、公共事業の用に供する土地の取得に当たっては、土地の取得により通常生ずる損失の補償として立木補償等が別途行われる場合があることに留意すべきである。


(解説)

林地が市場で取引される場合、現実に林地として使用することを目的として行われるのが通常であると考えられる。このような林地の評価を行うことは、鑑定評価の範疇ではあるが、不動産の鑑定評価に関する法律上の不動産の鑑定評価に含まれないことになる。

しかし、林地であっても、道路や鉄道等の公共事業のためにこれを取得する(林地を林地以外のものとするための取引)にあたり、鑑定評価を求められる場合がある。これは、不動産の鑑定評価に関する法律上の不動産の鑑定評価に例外的に含まれる。基準では、このような場合の鑑定評価の手法について規定している。

 

 

林地の鑑定評価額は、比準価格を標準とし、収益価格を参考として決定するものとする。再調達原価が把握できる場合には、比準価格と積算価格を関連付けて得た価格を標準とし、収益価格を参考として決定する。なお、公共事業の用に供する土地の取得に当たっては、土地の取得により通常生ずる損失の補償として立木補償等が別途行われる場合があることに留意すべきである。〔図表1’-23

 

 

Ⅳ 宅地見込地


宅地見込地の鑑定評価額は、比準価格及び当該宅地見込地について、価格時点において、転換後・造成後の更地を想定し、その価格から通常の造成費相当額及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除し、その額を当該宅地見込地の熟成度に応じて適切に修正して得た価格を関連づけて決定するものとする。この場合においては、特に都市の外延的発展を促進する要因の近隣地域に及ぼす影響度及び次に掲げる事項を総合的に勘案するものとする。

1.当該宅地見込地の宅地化を助長し、又は阻害している行政上の措置又は規制

2.付近における公共施設及び公益的施設の整備の動向

3.付近における住宅、店舗、工場等の建設の動向

4.造成の難易及びその必要の程度

5.造成後における宅地としての有効利用度

また、熟成度の低い宅地見込地を鑑定評価する場合には、比準価格を標準とし、転換前の土地の種別に基づく価格に宅地となる期待性を加味して得た価格を比較考量して決定するものとする。


(解説)

宅地見込地の鑑定評価額は、取引事例比較法による比準価格及び当該宅地見込地について、価格時点において、転換後・造成後の更地を想定し、その価格から通常の造成費相当額及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除し、その額を当該宅地見込地の熟成度に応じて適切に修正して得た価格(控除方式による価格)を関連づけて決定する。

また、熟成度の低い宅地見込地を鑑定評価する場合には、取引事例比較法による比準価格を標準とし、転換前の土地の種別に基づく価格に宅地となる期待性を加味して得た価格を比較考量して決定する。〔図表1’-24

 

 

評価方法の違いは、宅地見込地の熟成度の程度によって分類している。

■熟成度の高い宅地見込地<基本>

まず、比準価格については、熟成度が対象不動産と同程度の宅地見込地の取引事例を収集・選択して、比準を行うこととなる。この時、転換の見込まれる時期、土地利用の状況や地勢等の自然的条件、転換後の宅地の用途、開発予定地の規模等に類似性を有する事例を選択すべきである。

 

 

次に、控除方式による価格は、転換後・造成後の更地価格から宅地見込地の価格に接近する手法である。〔図表1’-25〕 これは、開発法と考え方は同じであるが、開発法は更地に適用する手法であるのに対して、控除方式は宅地見込地に適用する手法である。また、開発法は対象不動産が更地であるため、価格時点において開発に着手できるのに対して、控除方式は対象不動産が宅地見込地であるため、価格時点において開発に着手できず、一定の待機期間経過後に開発に着手することとなる。試算方法は、①転換後・造成後の更地価格から、②通常の造成費相当額及び③発注者が負担すべき通常の付帯費用を控除し、④その額を当該宅地見込地の熟成度に応じて適切に修正して求める。〔図表1’-26

 

 

熟成度とは、近隣地域の宅地見込地について、社会的、経済的及び行政的観点から判断して宅地開発事業に着手するための客観的な状況が整うまでの度合いを示すものである。具体的には以下のような場合がある。

① 工場が建設中であり、当該工場が稼働しないと宅地の需要が期待できない場合

② 上下水道の完成が数年後であり、それが完成しないと開発許可が得られない場合

③ 交通機関が未整備で、数年後に鉄道が開通する予定の地域について、開通時点も目途に事業竣工を図るのが妥当と判断される場合

④ 取得時点において、宅地の需要が期待できないため数年間保有しなければならない場合

 

控除方式による熟成度修正は、価格時点から宅地開発事業に着手するまでの待機期間に応じて修正するものである。実際には、①転換後・造成後の更地価格から、②通常の造成費相当額及び③発注者が負担すべき通常の付帯費用を控除した額に熟成度修正率を乗じて求める。

宅地見込地の評価にあたっては、以下の事項に留意する必要がある。

1)特に都市の外延的発展を促進する要因の近隣地域に及ぼす影響度

宅地への転換は、都市の中心部から順次外延部へと広がるものである。それゆえ、都市の外延的発展に影響を与える要因(人口の集中や産業の集中等)を動態的に分析把握して、近隣地域の転換する時期や価格形成への影響の程度を把握する必要がある。

2)当該宅地見込地の宅地化を助長し、又は阻害している行政上の措置又は規制

都市計画法による市街化区域・市街化調整区域の指定や公共整備事業の有無を把握する必要がある。また、宅地造成等規制法、農地法等の行政上の規制等の調査が必要である。

3)付近における公共施設及び公益的施設の整備の動向

道路、鉄道、上下水道、公園等の施設の新設、改良等の動向、学校、病院等の教育、福利厚生施設の整備の動向等公共施設・公益的施設に関する地域要因の動向を分析する必要がある。

4)付近における住宅、店舗、工場等の建設の動向

住宅、店舗、工場等の建設の動向を分析して転換する時期、転換後の用途、最有効使用等を判断する必要がある。

5)造成の難易及びその必要の程度

付近の公共施設の整備の状態、宅地見込地の地質、地盤、地勢、形状、地表の状態、地積等を把握することにより、造成工事の難易及びその程度を把握して、造成工事費を判断しなければならない。

6)造成後における宅地としての有効利用度

対象地を開発した場合の道路、公園等の潰れ地を判断して、有効利用度を把握して、造成後の更地の価格を判断しなければならない。

 

■熟成度の低い宅地見込地

熟成度の低い宅地見込地の鑑定評価額は、比準価格を標準とし、転換前の土地の種別に基づく価格に宅地となる期待性を加味して得た価格を比較考量して決定する。

まず、比準価格については、熟成度が高い場合と同様に、熟成度が対象不動産と同程度の宅地見込地の取引事例を収集・選択して、比準を行うこととなる。

ところで、熟成度が低いということは転換する時期が長期間であり、それまでは転換前の用途(農地等)での利用が継続されると考えられる。よって、取引事例比較法及び収益還元法により農地や林地の現況利用を前提として転換前の土地の種別に基づく価格を求め、これに宅地となる期待性を加味して試算価格を求めて、この額を比較考量することとなる。〔図表1’-27

 

 

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