何故、日本が憎悪されるのか? | 徹通塾・芝田晴彦のブログ

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民族自決 戦後体制打破
基地問題を考える愛国者連絡会 / 自由アジア連帯東京会議

保守と称する一部の界隈は、中国や韓国等を「特定アジア(特亜)」と称し、その国内で行われる所謂「反日教育」や、それに基づく「反日感情」を根拠に、その所業を論い(あげつらい)、糾弾の対象としている。果たしてこうした反日感情は「特定アジア」だけのもなのであろうか

先日、NHKラジオ番組『ラジオ深夜便』の「明日へのことば」で、『日本人はなぜ謝りつづけるのか』の著書もある岡山大准教授・中尾知代さんの「捕虜たちの言葉に耳傾けて」を聴いた。英エセックス大に留学し捕虜と家族のオーラルヒストリー調査を続けた彼女の話にいろいろ考えさせられた。


中尾知代さんは留学先の英ウェールズで、かつて大戦に参加し日本軍の捕虜となった老人達に「あなた方日本人のせいで人生を台無しにされた」と詰め寄られた。日本を憎む者はネトウヨの言う「特亜」だけでは無い。戦争を経験した人やその遺族等々、戦勝国である欧米人にもかなりの数がいる。

彼等の日本への憎悪は、大戦中に日本軍の捕虜となった経験に由来することが多い。戦争なのだから、それで命を落とすことや、重い後遺症を残す怪我を負うこともある。それはお互いさまだ。一方、近代国際法においては捕虜は「保護されるべき」存在である。

中尾さんにオーラルヒストリー調査を受けた遺族の一人は「日本人には残虐な性質を引き継ぐ遺伝子があるのか?」と答えた。現実の日本人は丁寧で感受性も豊かで…それが「何故?」と自身で悩み、導き出した答えが「残虐性の遺伝子」。捕虜であった父から聞かされ続けた受難の経験の結末だ。

わが国は過去、多くの捕虜達に過酷な環境の下で強制労働を強いた。一例として、アカデミー賞を獲った映画『戦場にかける橋』で有名な泰緬鉄道建設では、1万6千人の連合国の捕虜と数万のアジア人労働者が飢餓や疾病、虐待で死亡(東京裁判ハンドブック1989)している。

一説には連合国軍捕虜の死亡率。日本軍管理下となった将兵は27.1%、一方で独軍管理下のそれは3.9%(データで見る太平洋戦争 「日本の失敗」の真実~毎日新聞出版)と云う数字もある。悪名高いナチスドイツよりも、わが国の方が捕虜に対する扱いは苛烈だったということだ。

その原因が「残虐性」にあるのかわからない。日本兵の死因の半数以上が餓死であった事実を考えると、捕虜に対し最低限の扱いをする余裕すら無かったのだろう。


(写真:沖縄戦を戦った歩兵32連隊の日本軍兵士達)

泰緬鉄道建設の現場では、満足な食事すら与えられず労働に従事させられ、反抗の意志を示せば虐待され、逃走を企てていると見做されれば射殺された。これは捕虜だけのハナシでは無く、彼等兵士達を遥かに上回る数のアジア人労働者も同様であった。

連合国軍捕虜を10人のうち3人を死なせたとなると、これは70万のうち10万人が犠牲となった、ソ連の国家犯罪であるシベリア抑留よりも、割合のみならば酷い。大戦中、「特亜」のみならず植民地であったアジアの国々にわが国が何をしたのか? このあたりから考え直し、失敗の原因を総括しない限り、『戦後体制からの脱却』も何もあり得ないと思う。