北朝鮮のミサイル訓練と沖縄の基地問題 | 徹通塾・芝田晴彦のブログ

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民族自決 戦後体制打破
基地問題を考える愛国者連絡会 / 自由アジア連帯東京会議

ミサイル発射に関し「在日米軍を攻撃する訓練成功」と北朝鮮が明言したことが驚きを以って報じられている事に違和感を感じている。何故ならわが国には在日米軍基地と国連軍司令部基地があるからだ。

北がミサイルや核の開発を急ぐのは米国の脅威に対応するためだ。今、金王朝の存続を脅かすのは米国だけ。この問題でよく引き合いに出される中国は北に関してはとっくに諦めている。「あらゆる選択肢を検討」と言明している米国は、過去クリントン政権時に北への空爆を検討したこともある。別にトランプ政権に限らず金正恩にとって米軍の攻撃は常に現実的な問題なのだ。

一方のわが国。遡って朝鮮戦争当時、米軍や韓国軍の後方支援を国を挙げて行った。その結果、『朝鮮特需』と呼ばれる空前の景気に沸き立った。おかげで戦後復興は加速し、その後の経済発展の契機になったのは有名な話だが、実はわが国は朝鮮戦争に関しては軍事的な支援も行っている。

米国の要請により秘密裏に編成された日本特別掃海隊が、北朝鮮が敷設した3000個に及ぶ機雷の海だった元山沖の掃海を米軍と共に行い、触雷による『戦死者』まで出している。また、武器の輸出も行っている。

つげ義春『大場電気鍍金工業所』作中に、米軍の爆弾に詰め込む散弾の研磨の仕事をする描写がある。

「爆弾に詰め込む散弾」とはつまり武器である。当時、わが国はGHQの命令で兵器の製造や輸出、修理を行っている。さらに在日米軍基地や、今でも国内に七箇所存在する国連軍司令部基地の存在。基地を提供し軍需物資の提供や兵站を担い、掃海隊も派遣。そして朝鮮戦争は未だ『休戦状態』であって終わっていない。米軍基地は相変わらず存続し日米同盟は『深化』。ハッキリ云って北から見ればわが国は敵なのだ。

 

朝鮮戦争当時、わが国が結んだ朝鮮国連軍地位協定は今も生きており、半島有事の際にはわが国は再び後方支援の任を果たす。
(備考)外務省HP>>朝鮮国連軍地位協定
http://www.mofa.go.jp/mofaj/na/fa/page23_001541.html

当時は航空機による爆撃が主流であった。飛んでくる敵機を待って迎え撃つ時間があった。今はミサイル攻撃+核の時代。爆撃機の速度も当時は500km/hであったが、今はマッハ2を超える。敵基地を先制して叩かないと甚大な被害を被る。北が「在日米軍を攻撃する訓練成功」と言ったからといって今更驚く感覚がズレているのだ。

 

また、一部の保守は「日韓断交」などと叫んでいるが、日米韓が一致して北に対処するという既存方針が変わる要素は今のところ無い。

 

 

 

実は朝鮮戦争当時、吉田茂は米国からの再軍備並びに朝鮮出兵の要請を断り、更に日本の基地から飛び立つ米軍機が空爆する事も拒否している。然し現実には無数の米軍機が朝鮮半島に向かいわが国から出撃した。平和憲法の建前と現実の乖離は朝鮮戦争から始まった。米軍機が飛び立った事実は「無かった」ことにされたし、特別掃海隊の派遣も長い間秘匿された。戦後のわが国は憲法第九条を遵守し、一貫して平和国家として歩み、戦争に加担しなかったと云うのは建前に過ぎない。

 

今回の北の言動に対し驚いてみせるのがつまり「建前」である。「在日米軍基地は攻撃される可能性」こちらが現実である。

 

あと一つ。一部で「在日米軍基地があるから北に攻撃されるかも知れない、だから沖縄に基地はダメだ」と云う声が起きているが、これには同意しない。筋が違うのだ。北朝鮮問題とは強制収容所や相次ぐ処刑と云った人権事案である。非人道的な所業を繰返す独裁体制の維持の為にミサイルや核を以って恫喝する北が悪い。金王朝打倒の他に正義など無い。

私は今、辺野古や高江の新基地建設に抗議する運動を続けているが、その理由はあくまでヤルタ・ポツダム体制からの脱却であり、日米安保や基地によってわが国の主権が侵害されている現状と『沖縄差別』に意を唱えているのだ。沖縄のみに過大な負担を押し付ける行為と、日米韓が連携して対処しなければならない北朝鮮問題を混同すべきではない。

 

 

 

 

今こそ建前と現実を一致させるときなのだが、この期に及んで「北の脅威は新段階に入った」などと前からわかりきった事を言っている安倍政権にその気概は見出せない。