どうも、はちごろうです。


先週末は「か和もっち」さんの開店1周年で、
結局土日2日間とも飲みに行ってしまいました。
実は初めてお店で飲ませていただいた銘柄を
まさに1年ぶりに飲むことになりまして。
味も含めていろいろと感慨深いものがありました。
では、映画の話。



「光」











本年度カンヌ映画祭でエキュメニカル賞を受賞した河瀬直美監督の新作。
奈良を舞台に、視力が失われていく病を抱えたカメラマンと
映画の音声ガイド制作を志す女性の物語。
主演は前作「あん」にも出演した永瀬正敏。

あらすじ

映画のバリアフリー上映のための音声ガイド制作会社に勤める美佐子。
音声ガイド制作は完成した作品に状況説明のナレーションを重ね、
それを実際に視覚障害を負った人たちの感想を聴きながら作業は進んでいく。
今回彼女が携わったのは老監督・北林が制作した作品。
認知症を患い、記憶を失った妻と共に生きる老人の物語だった。
参加する視覚障害者たちはみな優しく感想を伝えてくれていたが、
その中に一人、彼女のガイドを公然と批判する男性がいた。
その男はかつて天才カメラマンとして名が知れたが、
現在は目の病で失明寸前の中森だった。



市井の人々の喪失と再生を描く、河瀬直美



監督はカンヌ映画祭の常連、河瀬直美。
「萌の朱雀」以降、毎回海外で高い評価を受けていますけど、
日本ではなかなか知名度が上がらない監督さん。
やっと前作の「あん」がそれまでのキャリアからすれば
かなり大きな公開規模で上映されて話題になりましたけど。
実は私、彼女の日本での不遇をぼやけるほど作品を観てない。
一応劇場で観たのは前作の「あん」と「殯の森」くらいでして。
彼女の作風に関しては前作の「あん」のときにも書きましたが、
「市井の人々が直面する喪失と、そこからの再生」ですね。
個人の力では避けられない理不尽な喪失と、
その喪失から再び立ち上がっていく人々の姿を描いていくというね。
で、今回は目を患い、徐々に視力が失われていくカメラマンと、
彼と知り合った映画の音声ガイド制作に携わる女性を中心に、
さまざまな喪失に直面した人々の姿を描いています。



喪失から生まれる「未練」との向き合い方



さて、本作は視力を失いつつあるカメラマンと、
視覚障害者向けの音声ガイド制作者の女性、
そして彼女が手がける映画の主人公など、
多くの人々の「喪失」が描かれていくんですね。
中森は自らの写真集を出せるほどに評価されたカメラマンだったけど、
目の病に罹って視野がほぼ失われてしまった状態なんですね。
もう、カメラマンとしては活動していけないので
現在はプログラマーとして生計を立てている。
一方、美佐子は視覚障害者向けの音声ガイド制作を志す女性。
技術者としてはまだ新人で、作業にはまだ未熟なところがある。
彼女の実家は山奥で、そこには認知症を発症した母が、
近所の人たちの支援を受けながら一人暮らしをしている。
父親は美佐子が幼い頃に失踪し、行方が分からない。
そして母親はその記憶を失い、帰ることのない夫を待ち続けている。
そして美佐子が手がける映画の主人公の重三は
認知症を患った妻とともに暮らしているが、自身の老いとも直面している。

彼ら、彼女ら共通することは、少しきつい言い方になりますが、
理不尽な喪失に対する「未練」を抱えているなんですね。
中森はほんのわずかですが視野が一部残ってるんですね。
その視野があることで救われている部分も当然あるんだけど、
その見える部分が残っていることに執着してる。
そしてその執着を具現化したものが、彼が肌身離さず持ってるカメラ。
外国製の、二眼レフカメラなんですね。
もうほとんどまともに撮影なんかできないし、
自分が一番そのことをわかってるんだけど、それでも手放せない。
美佐子にとっての「未練」は失踪した父親と、記憶を失った母ですね。
彼女は帰省するたびに父親の財布を取りだし、中身を確認する。
もう何が入っているかは全部覚えているんだけど、それでも確認してしまう。
そして彼女が手がける映画の主人公、重三は
妻の認知症と自らの老いと戦いながら生きている。
映画は彼の生への執着を表すように浜辺の丘を登るシーンで終わるわけです。

そして、彼らはその「未練」とどう向き合うのか、
そしてその「未練」とどう折り合いをつけ、
どう手放すのかを迫られていくわけです。



(続く)
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