どうも、はちごろうです。


昨日は世間的には母の日だったのですが、
親父が同窓会の予定を入れたために家族は一日バラで行動。
それにかこつけて昨日はなんと久しぶりの1日3本。
どれも収穫があったのですが、とにかく大変でした。
あ、一応母にはケーキを買いましたけどね。
では、映画の話。



「WOOD JOB! 神去なあなあ日常」











三浦しをん原作の小説を「ウォーターボーイズ」の矢口史靖監督が映画化。
主演は「ヒミズ」の染谷将太。共演は長澤まさみ、伊藤英明。



あらすじ


大学受験に失敗し浪人が決まった高校生、平野勇気。
恋人にも振られて将来が見えなくなった彼は、
たまたま見つけた募集パンフレットの表紙モデルの女性に会いたさに、
突如三重県の山奥で行われている1年間の林業研修に参加する。
だが表紙のモデルはあくまでイメージだと言われ、
しかも教官である山師のヨキには「山をなめるな」とどなられる始末。
携帯の電波も届かない、コンビニも公共交通機関もない村に
ほとほと嫌気がさした彼は1カ月の研修期間も持たずに逃げ出すことに。
だが、たまたま勇気を駅まで送ってくれた村人が
パンフレットの女性・直紀だったことが判明する。
パンフの女性がいたことで勇気は研修を続ける決意を取り戻し、
無事、1か月間の林業研修を修了。
残り11か月を中村林業という会社で世話になることに。
実は直紀が着ていたジャンバーに書かれた名前から就職を決めたのだが、
そこは研修所からさらに山奥の、ヨキが働いている一番過酷な職場だった。




舞台にこだわる周防、人間にこだわる矢口



監督は名実ともにヒット監督となった矢口史靖(これ、「しのぶ」と読みます)。
世間的に一番有名なのは「ウォーターボーイズ」ですね。
あと、「スウィングガールズ」「ハッピーフライト」「ロボジー」など、
フジテレビ制作の作品がずっと並んできましたが、本作はTBS制作。
(まぁ、そんなことはどうでもいいですが)
矢口監督の最近の作品の特徴としては、
男子シンクロナイズドスイミング、女子のスウィングジャズバンド、
飛行場で働く職員たち、そしてロボットコンテストと、
世間の人たちにあまりなじみのない世界を舞台にした作品が多い。
「珍しい職場・現場が舞台」そして「テレビ局制作」と聞くと、
周防正行監督と制作スタイルが似ていますね。
彼も「ファンシィダンス」では僧侶の修業風景を、
「Shall we ダンス!?」では社交ダンス教室を、
「それでもボクはやってない」「終の信託」では
司法制度の闇を取り上げていました。
しかし、どちらかといえば舞台設定の説明に腐心する周防監督に対し、
矢口監督はあくまで舞台となる特殊な世界を道具として、
そこで暮らす人々の喜怒哀楽や成長を描こうとしている気がします。




成長物語を支える伏線の多彩さ



さて、本作は大学受験に失敗したちゃらんぽらんな男子高校生が、
全くの不純な動機で林業実習に参加し、結果成長していく話なのですが、
登場人物の成長を描く際には、主人公が体験した出来事や使った小道具に対し、
前半と後半で考え方が変化していることを描くのが結構大事なんですね。
で、実はこの作品、その伏線の張り方と回収の仕方が絶妙なんですよ。
例えば、軽い気持ちで研修に参加することを決めた勇気が、
研修地となる山奥まで行くときのカメラ―ワークですね。
おそらく俳優さんをカメラを固定した台車か何かに乗せて、
それを動かして駅前を歩いてみせているんですが、
これが終盤、山での生活を経た彼が町に戻ってくるんですが、
同じカメラワークなんだけどうまいこと移動できない、とかね。
あと、前半では勇気が「なんだこれ?」と思っていたもの、
例えば「マムシを漬けた酒の瓶」とか「山の入り口にある岩」、
同じ山で働くおじさんが口ずさむ「木挽き歌」とかが、
彼が山で生活する過程で次第にそれを受け入れていく、
そして受け入れることで周囲が彼を認めていくわけです。
もちろん、美術さんの技術で山の四季を演出したりしてますが、
(クライマックスに出てくる巨大な大木、あれ、セットですからね)
きちんと創意工夫で時間経過を演出しているのはさすがだと思います。




伊藤英明、ウホッ!いい男(爆)



それと、やはり特筆すべきは出演者ですよねぇ。
主演の染谷将太の、あの調子のいい感じがホントにイラつくんですよ。
「こいつホントに山を、というか人生なめてるなぁ・・・」って感じが
冒頭のシーンからさく裂してるんですわ。
そして、それを支える脇役陣がホントに見事でしたねぇ。 きちんとハマってた。
ヒロインの直紀を演じた長澤まさみの絶妙なお姉さん感というんですかね、
山で暮らしているから当然化粧っ気がなくて、
だからこそ直紀の過去の苦労なんかが微妙に表情に出てる感じがいいんですよ。
それと、村人を演じる矢口組の常連の西田尚美とか、優香などの女優陣、
光石研やマキタスポーツのいかにも第一次産業従事してる感じのリアリティ。
そして何より本作で輝いていたのがヨキ役の伊藤英明ですよ。
私は彼の作品ってほとんど観ていないんですね、実は。
特にこの10年ぐらいは映画館では彼をほぼ観てないかな。
代表作の「海猿」シリーズをスルーしてるからなおさらで。
昨年の「悪の教典」も血なまぐさいの嫌いだから観てないし。
だから本作で観た彼の、山師としての佇まいというんですかね、
これは本当に驚きましたね。こんなに説得力があるんだと思って。
で、しかも彼演じるヨキは山師としても一流である一方、
男として、いやオスとしての強さみたいなのもきちんと出てて。
優香扮する嫁さんがいるのに町のスナックのお姉ちゃんと浮気して、
それで大ゲンカするんだけどきちんと体で仲直りしてるとか。
で、クライマックスの祭りで山師たちがご神体となる巨木を切り倒すんですが、
その木が倒れるとき、みんな急いでその場を離れていくんですが、
ひとりだけ悠然と歩いてその場を離れる姿とか、いちいちカッコいい。
まさにお好きな人にはたまらない、「ウホッ!いい男」って感じでした(爆)。


久しぶりに日本映画できちんとコメディしてるというんですかね。
スッキリ笑えて、しかも青春映画としても一級品で。
これは、面白いです。やっぱり矢口監督、さすがです。
ウェルメイドな娯楽映画を楽しみたい人には
これ、おススメです。是非是非!



[2014年5月11日 新宿ピカデリー 8番スクリーン]