(続き)

 平成最期の夏。 平成最期の珍踊り。

私の演目は「浦島太郎」。

カメを助け竜宮城で数日過ごした浦島太郎は、両親が気になり陸へ帰る。

しかしそこには太郎を知る人間がいないほど時間がたっており、悲しくなって玉手箱開けてしまう。

すると白い煙とともに太郎はおじいさんになってしまった。

 

 みんなが知っているこのお話をアレンジし、玉手箱を開けるとお姫様がおばあちゃんになっちゃった。

というオチを2017年の珍踊りが終わった次の日に考えついていた。

姫はシゲノ。大正生まれの94歳が着物きて杖を突ながら頭はカーニバル。

これ、めっちゃおもろいやんっ!天才かっ!私!

 

 昨年秋、私の住む町で仮装して踊るお祭りがあるから一緒に出ようとシゲノを誘うと、ニヤニヤしながら「生きとったらの」と言ったのだ。(断らんのや…。)

それから毎月、シゲノの家を訪れるたび826日を開けておくようにくぎを刺していた。

シゲノは毎回「なに着たらええぞ」と前向きな返答で、その前向きさが私のテンションを上げていた。

 

 

一度だけ「わしは出んっ!」と言い放ったことがある。あの衣装を持って行った時だ。

ピンクの羽がビラビラ着いた冠を持っていくとそれを見た時はさすがに「ふぅが悪い!」と言い出した。

そんな危機もあったのだ。

 

珍踊り当日。

暇さえあればセリフを練習するシゲノ。いいぞシゲノ。

 

 

化粧も怠らないシゲノ。

 

 

 

 ステージを見てる客には伝わらないだろうが、袖で待機する出場者の緊張感は半端ない。

餃子のぶも田中戸も笑顔がなければ声も発しない。私に至っては朝から水しか飲めない。

この日のためにみんな生きている。

364日、この日のために生き

365日目、この日のために生きた証を残す。

珍踊り、この日が私の誕生日だといっても過言ではない。

くらいの日なのだ。

(餃子のぶさんはこの日が正月らしい)

 

2018年。

長い時間まとっていた鬱っぽい感覚を私はようやく脱ぎ捨てることができていた。

(きっと猫を飼いだしたからだわ)

 
 
 
かわゆぃぃぃぃ♡
 
 

 

だからだろう。珍踊りの話題になると遂に「今年は優勝狙ってる!」と堂々と口にしていた。

初めて「優勝」を意識した珍だった。

 

突き抜けた感覚で、今まで聞いたことのない歓声のなか3分間を演じ切ると、私達は優勝カップを手にしていた。

そりゃそうだ。大正生まれを連れだしたのだから。94歳という飛び道具を使ったのだから。

卑怯は承知の上だが、アイディアと挑戦を伴った優勝だ。

人が思いつかないことをする。それが珍踊りだっ!

私はミス珍子だっ!!

 

 

 

しかし、94歳が着物(しかも下着もカーニバル衣装)で頭がカーニバルの姿に爆笑で終わると思っていた珍に、思いもよらない誤算が生じていた。

会場の客の中に感動の涙を流している人が。それも一人や二人じゃない。

加え、愛媛新聞のコラムにシゲノのことを書いていたことがあって、それを読んだ人からは「会いたかったです!」と。

 

 

長寿をあやかり握手を求めてくる人も多くいた。(募金箱を置いときゃよかった…と思う)

まさか珍に感動が生まれるとは…。

 

 シゲノもそれはそれは楽しかったようで、帰りの車中、片道一時間ずっとしゃべりっぱなし。(正直、うっとうしぃ)

 帰宅後すぐに優勝カップを仏壇に飾り、死んだじいさんに報告していた。

シゲノの娘達も上でひやひやしながら見ていたに違いない。

 
来年まで珍カップは仏壇に飾られる。

 

 

 シゲノは来年、優勝カップを返還しに行くけど踊りには参加しない。

初めて出たから面白かっただけだ。と分をわきまえている。

だから私は6年後、シゲノが100歳まで生きていたらまたおんなじネタをしてやろう。と考えているのだ。

 

私の珍踊りは終わった瞬間に始まる。

余韻など必要ない。(アスリートかよっ!!

実際、来年のネタは考えてあるし、その演目のために日常の所作を気を付けながら生活している。

私の2019年の珍踊りはもう始まっているのだ。(まじアスリートかよっ!!

 

 この無駄に激しい情熱はいつまで続くだろう。

そして年々露出者が多くなってきた40オーバーの三津住人。

来年が勝負どころだと、ミス珍子はふんどしの紐をキュキュッと締め直すのだった。

 

 平成最期の夏の珍踊り。

爆笑とまさかの感動でしめることができて僕ぁ、幸せだなぁ

 
 
 
 
 
 
 
 
 
全員ええ笑顔やっ
 

 

 

 誤算はこれで終わりかと思われたが、まさかまだ続くなんて…。

 

 珍2日後、シゲノの忘れ物を届けに行くと相変わらず面白くない話をしてくるのだが…。

 

こ、声!声のトーンが2こほど上がってるっ!

な、なんかちょっとかわいなってるやんっ!

なに艶っぽなってんねんっ!!

ちょい、ちょい、ちょい!きもい!きもいんじゃ!

歩くスピードもちょい早なってるしっ!

玉手箱開けたら歳とるんじゃなかたの~!

若なってる~!!!!

なにこれ~!超誤算!!!

 

ところで世界三大珍踊りって、あと2ヵ国はどこよ?

それを探しに行く旅に出たっていいんだぜ。