地獄の沙汰も金次第とは昔の話。今は金を持ってりゃエライなんてさほど言われなくなっている。それよりも、いかに大勢のやつに認められ、評価されるかの方が重要ってなもんだ。
いわゆる金持ち、よりも、いいね持ちの方が羨ましがられる時代。
地獄の沙汰も金次第とは昔の話。そう、その言葉の本家、地獄でも今はそうなっている。
地獄の鬼たちも、そして閻魔様でさえもハマっている今地獄で一番熱いトレンド。
ヘルチューブ。
地獄中に張り巡らされた回線により、いつでもどこでも様々なコンテンツが楽しめるという代物。
最近は地獄に落ちた人間たちの多くがこのヘルチューブを使って自ら配信を行うヘルチューバ―となっている。
視聴者である鬼や閻魔様から多くのいいねをもらった者ほど、まだマシな待遇を与えられるという。地獄の住人たちの中にはそれで極楽まで昇ったという噂の大物ヘルチューバ―もいるとか。
今の地獄にも昔ながらの針山とか血の池は存在する。
昔はそれらの地獄を行く者は苦痛に満ちた顔をしていたものだが、今のヘルチューバ―たちは笑顔で針の山に突っ込んでいく。少しでも笑いを取るためだ。他にも普通は鬼たちが考えて与える苦役よりも、それ以上の無茶なものを自分たちで考えて実行していたりする。全ては、いいねをもらうために。
しかし、実際は思ったような評価はされない。そのことにヘルチューバ―たちは深く傷つき落胆する。それは肉体に与えられる苦痛以上の苦痛だった。
そして彼らはまだ気付いていない。それが地獄の最新式、いいね地獄だということを。