・山鳩のこゑくぐもれり萩の花
『万葉集』には、山上憶良が秋の七草を詠った、次のような歌が。
萩の花尾花葛花なでしこが花をみなへしまた藤袴朝顔が花
内容は、ただ七草を述べただけの歌ですが、短歌が五・七・五・
七・七であるのに対して、五・七・七・五・七・七の形。
次のように、第四句以下の三句を第一句以下の前においても
意味が変わらないところから、旋頭歌と言われています。
をみなへしまた藤袴朝顔が花萩の花尾花葛花なでしこが花
よく知られているように、万葉集は現存最古の古代歌集。
その名称の由来については、「萬の言の葉」と「萬代」の二説が
ありますが、「葉」を「世」「代」の意として、万世に伝えるべき意
である「萬代」が有力とか。
編者と編集の時期については古来諸説があって、ほとんど不明
であるとのこと。
編者として挙げられている主な説では、平城天皇、橘諸兄、大伴
家持。
この万葉集に収められている歌は、約4,500首で、短歌(約4,170)、
長歌(約260)、旋頭歌(約60首)、仏足石歌体、連歌となっています。
このうち登場する植物では、萩の花がもっとも多く、142首(次に、
梅が119首)も。
野や山の萩を詠んだものが大半を占めていて、118首、そのうち、
鹿と取り合わせたものが、23首もあります。
秋萩の散るのまがひに呼び立てて鳴くなる鹿の声の遥けさ
湯原王
(秋萩の散り乱れるころ、妻を呼び誘って鳴いている鹿の声の
とおくまで聞こえることよ)
秋萩の散りゆく見ればおほほしみ妻恋すらしさ男鹿鳴くも
(秋萩の散ってゆくのを見ると、気がふさぎ、妻恋するらしい、
雄鹿が鳴くよ)
『枕草子』の第67段の「草の花は」の項では、「萩は色深く、枝も
たわわにさいたのが、朝露にぬれてなよなよと、ひろがりふした
さまが、この木のかたわらにいる鹿とよく似合う」という意味のこ
とを述べています。
萩の花を詠った歌が万葉集に、もっとも多い理由として、細い茎
に赤や白の小花を群がり咲かせる姿が可憐で、日本人好みの
花であること、春に比べると花の少ない時期に咲くこと、詩情を
誘う姿で黄葉することなどをあげている人も。
[今日の一句]
・紅萩や鹿の一声隠れゐて
万葉集の歌をもとに詠んでみたもの。
この句の場合、「紅萩」も「鹿」も秋の季語となりますが、上五に
「紅萩」をおいて、「や」で切ることにより、「紅萩」が季語となります。
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初心のうちは真似る
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