【まもるべきもの】


あなたをまもるために神から遣わされた気がする。

だからこれからの一生、私があなたを守っていくよ!


その日、不思議と自然にそう口から出ていた。


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「どうして今日に限って、たった1日だけの、年に一度の日に僕から離れて、僕を置き去りにしていったの?!酷すぎる!

ガッカリさせないで!!安心して気を抜いて呑んでいられた唯一の日に、僕はひどく酔っ払っていたのに、どうしてそんな事ができたんだ、ひどいよ!今日は、今日は僕の誕生日だったのに。逆だったら僕は絶対にこんな風に君を見捨てたりしないよ!」


帰ってくるなり彼はすごい剣幕で捲し立てた。

はぐれて7時間後の朝の6時半、会社の携帯を無くし、帽子もサンダルもどこかに置き忘れ、右肩にはひどい擦り傷と切り傷を負って血が滲んでいた。


2km弱の距離、家なら確実に会えると思い戻ったのだが、、、


全く見知らぬ土地にいた私は何とかスマホのバッテリーが切れる前にナビでアパートへ辿り着いたが、夫は待てど暮らせど帰って来ない。

電話しても「近くのコンビニ、僕ははぐれた所にずっといる」と意固地に繰り返すばかりで、彼がどこにいるのか見当がつかず、近所のコンビニまで行ってみても彼の姿はなかった。


スマホは電源切れ、会社の携帯に何度も電話を掛けたが相変わらず話が全く通じない。挙げ句の果てにイビキが聞こえた。

翌朝コンビニの駐車場で目が覚めて、充電器を買ってようやく自分の居場所を認識出来たらしい。


おそらくコンビニで缶ビールを買って延々と飲み続けていたんだろう。。。片手にはビール缶を持って帰ってきたんだから。(無意識で)本人は覚えてない。


ともかく途中で事故に遭わずに無事に帰ってきてくれて良かった、不幸中の幸い❗️ホッとした。


歩きながらお互い別のことに気を取られていたのか、酔っ払って注意力が散漫だったのかわからないけれど、手を離したり、目を離したのがいけなかったのだ。

「私が守る」と宣言したその日の夜にこんな事になるとは、、、


翌日の午後、二人でもう一度記憶を頼りに道をたどりながら紛失物を探しに戻った。何軒かコンビニに訊ねたり、交番にも届けたが拾得物は結局出てこなかった。


失くしたサンダルの代わりに新しいビーサンをAmazonで購入して贈ったのに、置き配の荷物は跡形もなくどこかへ消えてしまった。


不思議な失せ物たちよ、、🫥🫥🫥


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