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「喉乾いたろ。待ってろ。」
「…うん。…」
ギシッ
わっ…
大和は私の額にキスをしてからベッドを降りた。
隙あり的な?ドキッとしたぁ…。
すっかり陽は落ち真っ暗になった寝室 灰色に染まった天井に目を戻せば
「ハァ…」
とうとう大和とシ てしまった…抱 かれてしまった…。
「あああぁ……」
ヤバい、恥ずかしい…!!
今更のごとく襲われる羞 恥心。バサっと真っ白い肌布団を頭から被る。
あーーなんかもう、大和色々凄すぎて、私ってばバカみたいに感 じちゃったし、しかもマグロ過ぎ、あーー、下 着も年季入ったやつだったし、
「あ。」
下 着どこよ。
「♪〜」
キッチンから大和の鼻歌が聞こえる。胸元を隠したまま体を起こし、ドアの向こうにチラッと目を向けた。
「…自分はちゃっかりパンツ履いてるし。」
余裕な彼とは反対に私は落ち着かなかった。手探りで下 着を見つけ出しアタフタと身につける。
一線を超えた直後の私たちはなんて対照的なんだ。
冷蔵庫がパタンと閉まり、足音が近づいてきた。私は慌てて手櫛で髪を解いた。
「…コホン。」
あー、なんか緊張する。
「ほら。」
「あ、ありがと…。」
手渡されたペットボトルのミネラルウォーター
受け取り飲むという動作すら緊張する。
フタも開き半分にもなっていたから 大和も飲んだんだろう。お互い喉はカラカラ…。
「なにを今更恥ずかしがってんだ。」
「え?」
「オレをまともに見ねーし、隠してるし。」
大和は笑いながらベッドに上がった。そして半 裸のまま私の横に寝転がり枕に頬を埋めた。
「飲まねーのか?」
「飲むよ。」
だからなんでそんな冷静なの。
はにかんだ笑顔で私を真横から見上げている。
「…。」
…そんなに見られるとお水も飲めないんだけど。
ドキドキしながらも喉を潤した。
「…ふぅ…」
冷たくて美味し…。
「***。」
「ん。…っ」
腕を伸ばされていた。大きく広く。これはまさに、
「…うん。…」
『おいで』の意味よね?
その時やっとまともに目を合わせた気がする。
私はそろりと…ゴソゴソと肌布団に入り込み、大和の胸に顔を寄せた。そうしたらふんわりと背を抱きしめてくれた。
「ハァ…。」
大和が大きく息をする。と同時にギュッと強く抱き寄せられた。
「…あの…大和ごめんね。」
「なんだ?」
「…テクとか無くて。」
「プッ。」
大和の笑い声が肌から伝わる。それがなんだか嬉しくて私はどさくさに紛れもっと大和にくっついた。
「んなこと気にするとか…面白ぇーな、ぶう子は。」
いつまでも笑うから…私まで笑ってしまう。
「第一声がそれか。もっと他にあんじゃねーのか?」
「たとえば?」
「すげー良かった、とか。」
「プッ。なにそれ。」
「すげー相性良い、とか。」
クスクス笑いながら額にキスをされた。瞼にも…された。
「すげー好き、とか。」
唇にもキスを。
「オレはそう思った。」
「…うん。」
なんて幸せだろうと思った。こんなにしあわせなことってあるかな。
「…私も思った。」
自ら肩先にすり寄り背に手を回す。そして大きく息を吸い吐いた。
大和の体温に心まで溶ける。汗も匂いも彼の醸し出すなにもかもが愛おしくて
こんな夜をこれから何度も過ごせるだって思ったら胸がギュッとなるほど嬉しくて。
あー、もう好きだーー…。
なんて随分と桃色に染まった私だけど、すぐに現実に戻される。
「***、今からLI行かねーか。」
「え?」
こんな時間から?
と、瞬時に思った。だけどそうだ、今は夜中じゃなくまだ20時頃だと思う。だけどどうして…顔を見れば、
「鞄も上着も携帯まで店に置きっぱなしだ。」
「え、そうなの?」
「明日は休みだけど気になる。久仁さんにもオレたちのことを話しておきたい。」
ああ…なるほど。
久仁彦おじさんにはいつでも話せるとしても…鞄に携帯、それらが無いのは非常に困るよね
「腹も減ったし。LIで飯食おうぜ。」
「うん…」
本当はもう少し まったりイチャイチャしたかったけど…明日ってわけにはいかないし…。
「分かった。行こっか。」
夜の散歩も良いかも。
「んな名残惜しそうな顔すんな。」
「してないし!」
「続きは帰ってからな?」
「もうバカ!」
・・・・
夜は長い。今日という一日はとてつもなく長い。
「なに食べようかなぁ。」
手を繋ぎ向かうLI
「見てみろ、すげー月がキレイ。」
「わ、ホントだ。」
『今日はまだ終わらないよ』…
真上のまん丸な月にそんな風に言われた気がした。
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