発明家の正木和三は非凡な人であった。

 

発明するにあたって人が使う製品の「理想像」をまず思い描いた。

 

電気スタンドなら、

 

・長持ちして壊れない

・目に優しい光を出す

・少ない電力でより明るい光を出す

 

まず自分が発明する品の正しいあり方を考えたのだ。

 

行く先を間違えて突進すると思わぬ悲惨な結果を招きかねない。

 

行く先を盲信して途中で修正できない強情さは命取りでもあろう。

 

どうも違うなと思ったら何度でも修正できる柔軟さが必要なのだ。

 

はじめから上手くいく人は少ない。

 

ものごとの芯を直感的にとらえられる能力をみがきたい。

 

 

 

<正木和三さんのお話>


 最近の新製品としては、バイオライトという電気スタンドがある。

 このスタンドの開発も意識して行なったものではなく、林原生物化学研究所の林原社長が週刊誌を持って私の研究室へ来られたときの一言に端を発したものである。

 『発明王エジソンの生まれた町では、電球が非常に永持ちで二十年も三十年も切れないとこの週刊誌に載っている』

 そしてその原因は、現在でも直流電源で点灯していると書かれてあった。

 その記事がきっかけとなって、電球を永持ちさせる実験が始まり、特殊スイッチによって、日本でも二十年間ぐらいは電球が使える方法が見つかると同時に、電球を非常に明るくする方法、家庭用の一〇〇ボルト電源から、普通の四〇ワットの電球を使用して二倍以上の明るさとすることが可能となった。

 

(中略)


 さらに、人間の眼にとって最も望ましい光とは何かを研究した結果、朝の太陽の光に近いスペクトルの光を実現させ、画期的な電気スタンド、バイオライトの完成となった。

 このスタンドを小学生が数ヵ月使用したところ、視力が非常によくなったとその親から報告が入った。

 

 

<要約>

 

エジソンは電灯の発明に直流電流をつかっていた。

 

林原社長がそのことを記事にした週刊誌を持ってきた。

 

人間の目にとって望ましい光は太陽の光に近いものであると知り、それも加味して長持ちし、明るい光を作れる画期的な電気スタンドを完成させた。

 

直流なので交流のように光の点滅がおこらず目に優しい。

 

そのスタンドを数ヶ月使用した小学生の視力が非常に良くなった。

 

 

<本文>