名匠岡本喜八監督の最高傑作と言っても良い大作映画。
この作品は白黒だが、ドキュメンタリータッチの作品であるため、
モノトーンの映像が効果的である。
岡本喜八監督のコミカルな面は作品の性格上抑えられているが、
反軍主義的な面はしっかり演出されている。
陸軍の終戦反対派の主張をよく聞けば、大きな矛盾があるのだが、
その異常さというか狂気を炙り出している。
内容的には固い映画と思われがちだか、テンポの良い
演出そしてスリルで2時間半以上の長尺だが長さを感じさせない。
娯楽性の高さと内容の深さを両立させた凄い映画である。
あらすじ
太平洋戦争末期鈴木内閣はポツダム宣言を受諾するどうか意見が割れていたが
ご英断を仰ぎ受諾が決まる。そのことを広く国民に知らしめるために、8月15日に
玉音放送が決まり、前日に録音が行われるが、
戦争終結に反対する陸軍の若手将校たちは宮城を占拠して、
玉音放送を阻止するクーデターを実行する。
重要な点
子供のころにTVで観たときはスリリングな展開が面白く、
世界情勢など全くわかっていなくても楽しめた記憶がある。
今改めて日清、日露、日中戦争~226事件、太平洋戦争
と色々映画を観てきたが、この映画を観て色々と腑に落ちた感覚があった。
映画においても『二百三高地』『日本海大海戦』
『226』『大日本帝国』と続けて観て、軍国主義の日本の
拡大と破綻(敗戦)にはやはり理由があったのだろう。
良かった点
とにかく日本を代表する名優が多数出演している。
三船敏郎、笠智衆、山村聰。島田正吾、小林桂樹、佐藤充
中谷一郎、高橋悦史、黒沢年男、大作にふさわしく、多数出演した役者の演技が皆素晴らしい。
特筆すべきは剛の三船敏郎
柔の笠智衆、悩み苦しむ高橋悦史、狂気じみた黒沢年男や
中丸忠雄、天本英世。まだまだあるが書ききれない。
悪かった点
女性が新玉美千代さんくらいしか出てこないのは残念。
原田真人監督が役所広司主演でリメイクしているのが
今気になっている。(創る価値があったのだろうか?)