ぼっとん便所
【 台東区立下町風俗資料館の昭和レトロな空間に「ぼっとん便所」を見た! 】
ぼっとん便所
モノが無かったぶん… 心の中は、いつも、夢で満ちあふれていた!
けっして、便利じゃなかったけど… 知恵と工夫と意欲があった!
とにかく、イイ時代だった! 訳もなく、毎日が楽しかった! あのころ。
朝、牛乳屋さんが、ビンをカチャカチャと鳴らす音で目が覚めると…
電気釜からは、くぐもった音がしていて、炊けたご飯の香りが、ただよっていました。
見ると、母は、もう、足ふみミシンで、何かを縫っています。
朝ごはんの、おかずは、めざし・たくわん・周りが赤いハムときゅうりのサラダ
それと、あさりの味噌汁です。 (朝から、ごちそうです)
ほんとうは、生卵と醤油をかけた、ごはんのほうが好きでしたが…
卵は、毎日は手に入りませんでした。
朝ごはんが済んだら… この世で最も “恐ろしい所” に、行く時間です。
親父の「ゲンコツ」よりも… 怒られたときに閉じ込められる「押入れ」よりも…
“ダントツで恐ろしい所” それが、「便所」 です。
木製のフタを開けたら、今日こそ、青い手が、ぬ~ッと出てくるんじゃないか?
恐る恐る開けると、中で何やら 「ガサゴソ!」 と、音がしました!
『 ぎゃ~ぁぁぁ!!! 』
ネズミです。
それでも、我慢して、ひねり出し、震えながら、おしりを拭いていると…
今度は、目の前に、大きなクモです。
『 びえ~ぇぇぇ!!! 』
顔は、半べそ! 手はウンチまみれ!
それでも…
「花子さんが出る」 と聞かされていた、学校の便所に入るくらいなら、うちで
済まして行くほうが、ずっと、ず~っと、ましです!
便所に行く前に「スイッチON」にしたテレビに、ようやく映像が映りはじめました。
母が、楽しみにしている、連続テレビ小説 「おはなはん」 が、もうすぐ始まる
時間です。
しかし、またしても 『 しばらく、お待ちください 』 という、動かない絵が放送され
ています。
わたくしは、ランドセルを背負い、ハーモニカの練習をしながら、登校!
(父は、東京に出稼ぎでしたので、母子二人。 これが、我家の朝でした。)
小学校から、帰ってくるや否や、ランドセルを縁側に置いて、外で遊びます!
友達の家の前に行くと、恥ずかしげも無く、『○○く~ん!あ~そ~ぼぉ~!』
と、大声を出して呼び出すのが、礼儀です。
夕焼け空になるまで遊び、泥だらけになって、家に帰って来ます!
長屋の共同井戸で、手と足を洗うと、泥の下から、青アザや擦りキズが、必ず
1つ2つ出てきます。
井戸端のタライには、トマトが冷やしてあります。
塩を振って、青臭いトマトにかぶりつく! (これが、遅いオヤツです)
(真夏だったら、スイカが冷たくなっていて、友達とみんなで、食べるのです!)
父が帰ってくる日は、夕飯の内容が、豪華です!
父の前には、お酒の入った、とっくりとおちょこが置いてあり、おかずが1品多く
配膳されています。
今回の、「東京みやげ」 は、輸入品のチョコレート!
手のひら くらいの厚さだよッ はぁ~ びっくり!
でも、たくさん食べると 「鼻血が出るぞ!」 と、父に “でこピ ン” されちゃう!
寝る前には、かならず、蚊取り線香をつけます。
そして、親子で協力して、蚊帳(かや)をつるのです。
(家族が3人揃って、川の字になって寝られるのは、盆と正月のみ)
蚊帳(かや)の中に入って、その形を見上げたとき…
わたくしは、いつも、言いました。
『 なんだか、大きなおしりの割れ目の下に居るみたいだね?』
父は、毎回、ゲラゲラと、大笑いです。
これが… 昭和の家族の1日です。
弟や妹が生まれる前、わたくしが小学校1~2年生の時の、ある一日をモデル
にした物語です。 (いやはや、けっこう、覚えているもんですなぁ)
小学生の子どもを持つ親になった今、自分が小学生だったころの事を思い出し
てみると、今の子どものほうが幸せなのか? 昔の子どものほうが幸せだった
のか? なんだか、複雑な気分になりました。
今回、掲載した写真は、全て、「台東区立下町風俗資料館」 で撮ったものです。
東京は、上野駅の近く、不忍池のほとりに、「台東区立下町風俗資料館」が
ひっそりと、建っています。
「台東区立下町風俗資料館」 の歴史は古く、昭和55年(1980年)10月1日
に開館されたとのこと。 (つうことは、今年で25周年かぁ!)
下町文化を後世に伝えるべく設立されたもので、展示物の一部は、間近で見て
触わることができますので、当時の文化を肌で体感する事ができます。
畳の部屋にあがって、ちゃぶ台の前に、あぐらをかいて座ったら…
なんだか、居心地が良くって、すっかり、おちついた気分に、なっちゃいましたよ。
<関連サイト>
⇒ 台東区立下町風俗資料館
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