2015-11-15 10:45:06

フランスにおけるテロ:とりあえずの所感

テーマ:国際政治
 13日フランス時間夜、パリでほぼ同時にテロが発生し、多数の被害が出ている。無辜の市民に対する卑劣な行為であり、我が国としても、国際社会の連携に協力していくと共に、丹念な情報収集に合わせてフランスのみならず在外の邦人への情報提供および国内の治安措置の強化に遺漏ないよう努力しなければならない。

 今回のテロに際して、とりあえず感じた中で主な点を取りまとめてみた。

(1)イスラーム過激勢力の欧州への伸長
 シリア並びにイラクにおいて一定の領土を支配しているISではあるが、昨年夏以降、この地域では膠着状態もしくはISの勢力縮小が継続し、そこにフランスやロシアが空爆に参画するという状況になっている。その一方でISは、昨年以来徐々に海外に勢力を拡大し、あるいは他の地域の勢力を傘下に収めてきた。例えば、イエメンやアフガニスタンにおいては、アラビア半島のアル=カーイダやターリバーンの前にISの影響力は極めて限定的であったが、時間がたつにつれて無視できない勢力に成長している。さらに最近では、シナイ半島におけるロシアのチャーター機爆破、レバノンにおけるIS組織が名乗りを上げたこと等、シリア並びにイラク以外の地域での活動も活発化してきた。
 かりに彼らがシリア並びにイラク以外の地域における活動を活発化させてきているとすれば、フランスにおけるテロはその内の一つということになり、フランス以外における活動についても懸念させ、今後の彼らの行動が気にかかる。もちろん、テロの語源がTERROR(恐怖)から来ていることにみられるとおり、世界に恐怖を巻き起こすことも彼らの目的の一つであり、今回の事件をもって一定の満足をする可能性も否定はできない。つまり、恐怖を世界にまき散らすことで勢力と影響力の拡大を図り、ここ数か月大きく力を失っているシリアのアサド政権との戦いを有利に進めるという彼らの目的に資すると、ISが考えている可能性もある。しかしながら、後述のシリア情勢にも鑑みれば、やはりシリア並びにイラク以外での彼らの活動の拡大が気にかかってならない。
 欧州の中でもフランスでは、テロ及びその兆候が見られてきた。本年に入っても、1月のシャルリー・エブド襲撃とそれとほぼ同時に起こったテロ事件、4月のアルジェリア人学生による武器暴発により発覚したテロ未遂事件等であり、テロ勢力がフランスを標的の一つと考えている様子が伺えてきた。さらに、1月のシャルリー・エブド事件がカーイダ系により実施されたことにより、ISとしてもこれに対抗して、欧州、特にフランスでテロを実施する能力があることを示そうと考えていた可能性もある。
 1月以来治安強化措置を講じてきたにもかかわらず、フランスがテロの現場になったことは、フランス治安当局にとっては厳しい現実が突き付けられたことになる。フランス治安当局は、少なくとも1月以降、シリア等への渡航経験のあるイスラーム教徒やテロに関係する可能性のある個人・組織等をウォッチしてきたはずであるが、今回の事件に関し、どの程度その背後関係を把握しているかについてはまだ良くわからない。事件発生から1日たった時点では、1500名の治安部隊の市内への配置、交通機関や学校の閉鎖、国境制限措置等、事態を予防し、テロリストの行動を制限する『面』の措置にとどまっているようだ。殺害した犯人とされる者たちの遺留品等からわかることもあるはずだが、現時点では、「がさ入れ」等、『線』に捜査が移行し、広範な制限措置が解除されたとは聞かされていない。

(2)シリア・イラク情勢との関係
 ロシアに引き続きフランスがISの標的になった可能性が高いが、この二つの国は、シリア国内でISを空爆している国である。ISとしては、自己の「領域」における事項に介入し、仲間を殺害した両国に対する「報復」、あるいはネットで公表された通り、かかる行為を行ったキリスト教国に対し攻撃を加えたというアピールという意味合いもあるのだろう。
 ISと一口に言っても、完全に一枚岩の組織ではない中、今回の事件がシリア並びにイラク情勢と直接の関係がどの程度あるのかは、注意深く見る必要があろうが、それでも、シリアやイラクにおける戦闘経験がテロリストの養成に貢献し、あるいは大義を与えていることは想像に難くない。シリアでは、アサド政権転覆を受容しがたいロシア、制裁解除を目前に控えたイラン、優柔不断な態度を継続してきたが難民問題により動かざるを得なかったEUと、これまでのプレイヤーに加えて新たなプレイヤーが出そろった感があり、これがシリア情勢の打開につながることが期待されている。シリアにおける和平交渉は停滞しているようだが、シリア情勢がその他の地域に与える影響は少なくなく、困難ではあるが同地の問題解決への道筋が示されることは、国際の安全に影響を及ぼすことになろう。

(3)宗教対立の懸念
 今回の事件の背景はまだ良くわからないが、オランド大統領は「国外で周到に準備され」たことを強調し、外に向けて「憎悪」を強調している。国内の治安情勢を外に転嫁したい気持ちは理解できるものの、これだけのテロを外からやってきた者のみで実行したとは考えにくく、今回の事件が2001年の二の舞になるとすれば、911以降の不幸な戦闘、混乱および憎悪の負の連鎖をもたらしかねないことを懸念せざるを得ない。
 サルコジ大統領時代のマイノリティとの衝突に見られた通り、フランスではマグレブ諸国を始めとするアラブ諸国からの移民に対する偏見が存在するようで、経済・社会情勢に応じてこれに火が付く様子もうかがわれた。今回の事件を契機に、テロリストとイスラームを同一視する発言も目立つようになっており、これらの感情的な波が、更なる対立と武力衝突へと発展することが懸念される。
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