2013-02-27 00:39:22

安倍総理訪米:なぜ、TPPで国益を犠牲にする日米共同声明を出したのか

テーマ:国際政治
安倍総理の訪米が終了した。

オバマ大統領とのワーキングランチに関する発表(http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/s_abe2/vti_1302/us.html)を見る限り、現時点では日本側から熱心にラブコールを送ったが、オバマ大統領は冷静に対処したという趣だ。総理は、自民党政権になって日米関係が改善したことを殊更に強調したかったようだが、朝日新聞でも、米政府としては野田総理時代から良好な日米同盟関係が、今になって改善したと考えてはいないと報じていた。


訪米の評価については、成果等の概要が今少し明らかになってから行われるべきと考えるが、TPPに関する交渉については、大きく米国に譲歩したのではないかと懸念している。

ちなみに小生はTPPは「悪魔の鞭」でも「魔法の杖」でもないため、これで日本が滅びるとも大きく躍進するとも思わない一方で、開かれた国際関係を構築して行く中で国益を追求し、たとえば米国に関してはシェールガス輸出に関する外国企業に対する米国内法規制を免れ、あるいは日本側の農業改革の契機としてより強靭な経済を構築する中で、最大限に活用されるべきものと考えている。また、将来において、国際ルールに中国を従わせ、経済レジームにより健全な形で取り込むための枠組みにもなり得ると考えている。この観点から、安倍総理が一歩踏み込み、日本の交渉力を前面に押し出していけるのであれば、そのイニシアティヴを歓迎しなければならないと考えてきた。


しかしながら総理は、米国の関心を惹こうとするあまりか、米国に大きく譲歩しすぎたようだ。まずは、日米共同声明を見てみよう。


【第一パラグラフ】
両政府は,日本が環太平洋パートナーシップ(TPP)交渉に参加する場合には、全ての物品が交渉の対象とされること、及び、日本が他の交渉参加国とともに、2011 年 11 月 12 日にTPP首脳によって表明された「TPPの輪郭(アウトライン)」において示された包括的で高い水準の協定を達成していくことになることを確認する。
The two Governments confirm that should Japan participate in the TPP negotiations, all goods would be subject to negotiation, and Japan would join others in achieving a comprehensive, high-standard agreement, as described in the Outlines of the TPP Agreement announced by TPP Leaders on November 12, 2011.

第一パラグラフは、これまでの原則を両国が確認したことを意味しており、「原則としてすべての物品が交渉の対象とされる」というこれまでの言い回しから「原則として」が抜かれたことを除けば、大きな変化は見られない。

【第二パラグラフ】
日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品というように、両国ともに二国間貿易上のセンシティビティが存在することを認識しつつ、両政府は、最終的な結果は交渉の中で決まっていくものであることから、TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことを確認する。
Recognizing that both countries have bilateral trade sensitivities, such as certain agricultural products for Japan and certain manufactured products for the United States, the two Governments confirm that, as the final outcome will be determined during the negotiations, it is not required to make a prior commitment to unilaterally eliminate all tariffs upon joining the TPP negotiations.

政府は、この第二パラグラフを取り上げて「聖域なき関税の撤廃が前提でないことが確認された」としているが、このパラグラフにまったく新しいことは書かれていない。カークUSTR代表もヴィルサック米農務長官も日米二国間、あるいは公の場において幾度も述べている通り、直ちにすべての関税を撤廃するのであれば、交渉などする必要はない。つまり、「TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことを確認する」という項目は、これまでの米側の主張、交渉参加国の理解の繰り返しに過ぎない。敢えて言えば、最初から「聖域なき関税の撤廃」など想定されていないのだから、「原則としてすべての物品が交渉の対象とされる」をすり替えた「聖域なき関税の撤廃」なる虚構を取りやめるという、自作自演に過ぎない。

【第三パラグラフ】
両政府は、TPP参加への日本のあり得べき関心についての二国間協議を継続する。これらの協議は進展を見せているが、自動車部門や保険部門に関する残された懸案事項に対処し、その他の非関税措置に対処し、及びTPPの高い水準を満たすことについて作業を完了することを含め、なされるべき更なる作業が残されている。
The two Governments will continue their bilateral consultations with respect to Japan's possible interest in joining the TPP. While progress has been made in these consultations, more work remains to be done, including addressing outstanding concerns with respect to the automotive and insurance sectors, addressing other non-tariff measures, and completing work regarding meeting the high TPP standards.

まったく新しい項目はこのパラグラフに含まれている。民主党政権では、TPP参加に向けた交渉に割く出す日米間の協議において、米側の要求する特定の分野における主張を参加のための条件として設定したり、あるいは日本として米側の主張に同意して譲歩を余儀なくされるような言質をとられないよう、極めて注意深くあたってきた。つまり、米側に「前払い」をすることで、これからの交渉において日本の産業が不利な環境に置かれないようにしてきたのだ。ところが今回の訪米では、自動車部門並びに保険部門を残された「懸念事項」(英文では「顕著な懸念事項」)として特定し、両国声明の中に盛り込んでしまった。ちなみに、この保険部門とは外務省によれば郵便簡保のことであるが、これまで注意深く避けてきた「前払い」をよりによって簡単に行ってしまったのである。
かりにTPPに参加すると日本が決定しても、この要請は米議会で議論されることになる。米議会では、米国の利益と称して業界のロビー活動を受けた議員たちが手ぐすねを引いているが、今回の共同声明が取り上げられ、自動車部門並びに郵便簡保は顕著な懸念事項として日米両国が認めているとの前提で議論が始められることになるのであろう。

日本の経済交渉は過去において比較的得点を挙げてきた分野である。どうせ官僚主導部分の多い政権なのだから、この問題についても官僚のシナリオに乗っておくべきではなかったか。

これまで注意深く進めてきたセンシティヴな問題だからこそ、甚だ疑問な国益毀損の首脳外交になって残念である。
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