Q:ムンプスワクチンはなぜ定期接種にならないのでしょうか?
A;日本耳鼻咽喉学会より、2015年1月から2016年12月までの2年間に、少なくても336人が「ムンプス難聴」と診断されたと発表しました。
ムンプス難聴は、ムンプスワクチンで防ぐことができる合併症です。日本を除く先進国では、小児への2回の定期接種が導入されています。日本小児科学会では、国に定期接種化を要望しています。
しかし、1993年のMMR (麻しん・風しん・おたふく混合ワクチン)ワクチン接種中止以来、単味のワクチンは流通していますが、予防接種率は30~40%にとどまり、周期的な流行を繰り返しています。
ムンプス難聴336人のうち、詳細が得られた314人の約80%(260人)が、難聴により会話が困難など、日常生活にかなりの支障を来す「高度以上の難聴」の後遺症が見られました。発症年齢は2-3歳が最も多く、次いで6-13歳、20歳代後半から40歳くらいまでの「子育て世代」の成人が多かったようです。
一側難聴耳(272人)の後遺症を残した患者の最終聴力レベルは、92%が高度以上で、「方向感が障害される、あるいは騒音下では音が聞き取れない」。両側難聴耳(14人)の障害程度が軽い耳の最終聴力レベルも、大音量が聞き取れない「重度難聴」でした。人工内耳を装着しても騒音下では音が聞き取りづらいなど「聴力が完全に戻るわけではない」そうです。
1989年より欧米に習いMMRワクチンが定期接種となったが、1993年に無菌性髄膜炎の有害事象が増えたとして、定期接種が中止された。当時からワクチンの改良が抜本的に進んでいるわけでないこと、別のワクチンを使っている海外では、ムンプスに対する効果が弱いため、小児期の2回接種後、思春期から青年期にかけてムンプス流行がおきて3回目の接種が議論されています。
現時点では、国産・海外ワクチンの両方が定期接種化として議論されていますが、予防接種後の発熱などに敏感な日本人の国民性を踏まえ、「無菌性髄膜炎」という副反応のリスクと「ワクチン効果の持続」に対する信頼性の問題があり、国の方でなかなか定期接種にしてもらえません。
現状ではワクチンの改良の気配もないので、定期接種化が進まないようです。難聴の発症率は、今回調査から約1000人に1人ですが、実際はもっと多いと言われています。是非定期接種化してもらいたいものです。
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