皆様
高倉(@筑波大学附属小学校)です。昨日は、3年ぶりに対面での授業公開・初等教育研修会が本校を会場に開かれました。
音楽部の提案授業をさせていただきました。3年ぶりということもあり、めちゃめちゃ緊張しました。私の緊張が5年生の子どもたちにも伝たわったのか、いつもよりかしこまった様子でした。
鑑賞の授業でした。教材は「剣の舞」(ハチャトゥリアン作曲)です。「剣の舞」の授業を公開したのは、これで3回目になります。
1回目は16年前。その時は「合いの手」の概念を子どもたちと共有してから、「合いの手」を聴き取ることを授業の中心に据えました。すると自然にこの曲がABAの三部形式であることが浮かび上がります。加えて最後の部分が黒鍵の5音音階であることに気づかせるという展開でした。子どもたちが5音音階に気づくためには、体に5音音階の感覚が染み付いていないといけません。そのため、前時までに即興演奏の手法を用いて5音音階で遊ぶ時間を設けていました。楽しい授業になりました。
2回目は10年前。6年生で行いました。「剣の舞」でグループによる身体表現をしました。その中で、曲中にある「変拍子」に気づいてその面白さを味わうという展開でした。教師から変拍子を説明するのではなく、身体表現をつくり込んでいく中で自然に変拍子のエネルギーを感じ、それを体現していく。それも無意識に近い。そこに教師が「どのグループも曲のこの部分で面白い動きになっていたねぇ。これは興味深い! なぜそのような動きになっているのかな?」と切り込んでいく。すると変拍子のリズムが浮かび上がるという仕掛けにしました。ハチャトゥリアンが、一か所だけこの曲に変拍子を取り入れた意味や面白さについて考える授業、そして何より身体表現をグループでつくった充実感と楽しさに溢れる授業だったと振り返ることができます。
そして3回目。昨日の授業です。新しい視点を盛り込みたいと思いました。ティンパニのリズムの聴取です。どんなリズムが奏でられているか、またそれがどう変化しているのか、さらにそれがどんな役割を果たすのか、なども子どもたちと考えたいと思いました。音源は本校の大先輩、中島寿先生にご紹介していただいた「剣の舞」の新たな音源、その中にティンパニの音がかなりクリアに聞こえるものがありました。「これだ!」と決心しました。中島先生に大感謝です!昨日の授業で子どもに提示する音源は、候補として6つあったのですが、中島先生にご紹介いただいた音源にしました。
昨日の授業では、子どもの素朴な「聴こえ方」「言葉」から「剣の舞」のよさや面白さに迫ろうと試みました。ティンパニの音色やリズムに耳が向くよう、イントロの部分だけ提示することからはじめ、その後の音楽を予感させ、それからA部を提示しました。すると、案の定「プ〜ン」に子どもの意識が向きました。それをもとにABAの三部形式であることにもなんとかたどり着きました。でも子どもは鋭くて、再現部のAに戻る前にその「つなぎ」「準備」があるとか、「合いの手」の出現回数が後半多くなるなど、かなり深い部分まで言及していました。せっかくの子どもたちのよい発言を交通整理するのにかなり苦労しました。シャープに整理できなかったというのが大きな反省点となりました。
そして話題を授業冒頭に共有した「恐ろしい何かが出てくる予感」に戻し、その感覚の元にあるティンパニのリズムを聴き取ることに誘導しました。ティンパニの数がいくつあるのか、音色の高低を聴き取ることで「2つ」とわかると思いましたが、3つとか4つと聴き取った子も少なくありませんでした(これは意外!)。実際は2つであることを伝え、リズムを聴き取るところで時間切れでした。
きっと子どもたちは「リズムパターンが途中で変化していること」に気づき、その変化を面白がったり驚いたでしょう。授業はここでおしまい。
続きは火曜日の授業で…。ということになりました。
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昨日の講師は、東京都港区立芝小学校の石井ゆきこ先生です。
長きにわたり東京都小学校音楽教育研究会の研究を支えてきた、そして学習指導要領の改訂にも関わられてきている日本の音楽科教育界の重鎮の先生です。私自身20年ほど前からご指導をいただいている先生です。
石井先生からは、今回の研修会テーマ「子どもの「みえ方」を中心に据えたカリキュラム デザインと教科書教材 ーカリキュラム・オーバーロードの改善を見据えてー」に関して、ご自身の実践や東京の先生方のこれまでの取り組みなど、実際の授業の姿を交えながら大変実りの多いお話をいただきました。
さすが石井先生。深く広いテーマにも関わらず、30分でわかりやすく、しかし「なるほど!」と思わず膝を打ちたくなるようなお話の内容でした。
石井先生にも改めて感謝申し上げます。
今回の研修会は対面で行われ、百数十名の先生方に見守っていただきました。授業もご覧いただきありがとうございました。
先にも書きましたが、3年ぶりの公開授業は緊張の極みでした。
いつも研究会の度に思っていることです。授業が始まる30分前、会場に参観の先生方がどんどんお入りになります。初めてお目にかかる先生、顔馴染みの先生もたくさんいらっしゃいます。遠方から飛行機に乗って、新幹線に乗っていらっしゃる先生も少なくありません。そういうことが頭をよぎり、緊張も最高潮になります。「いい授業にしなくては…」「でもそんなこと、この俺にできるのだろうか?」ブルブルと膝が震え出すことだってあります。昨日もそうでした。
結局、緊張が全て解けることは叶わぬまま授業が終わってしまいました、昨日は^^;
分科会終了後、たくさんの先生方が言葉を交わしに私のところに来てくださいました。3年ぶりの先生が多く「いやぁ、お久しぶりです!」「対面はやっぱりいいですね」「生の子どもたちの表情や先生と子どもたちとのやりとりを間近に感じることができてよかったです」など会話が弾みました。中にはこのコロナ禍でPCの画面のなかで知り合った先生も、昨日はリアルで初めてお会いすることができました。なんだか、古くからの友人に会えた気分になり、ジ〜〜ンと胸が熱くなりました。握手も交わしました。
人と人とがリアルで接することの温かさ、大切さをこれほどに実感できたのは本当に久しぶりです。
3年ぶりの筑波の研修会。身体の内から痺れる緊張感、この感覚。やっぱり私にとってとても貴重な、大切な時間なのです。
ご参会いただいた全ての皆様に心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
次に授業を公開するのは、6月の研究発表会です。おそらく対面になると思います。
6月の発表は「『美意識』を育てる」というテーマで進めてきた4年間研究の最終発表になります。対面では最初で最後の本研究の発表です。不肖高倉が研究企画部長を務めさせていただいています。筑波大学附属小学校では、今どのような子どもたちを育てるために、どのような授業を、そして同時にどのようにカリキュラム・オーバーロード問題を解決していこうとしているのかを発表することになります。
是非おいでください。お待ちしております。