最近「教育技術」(小学館)さんとご縁があります。
5,6年生版10月号に書かせていただきました。
「鑑賞授業の基本」というのがお題です。
文部科学省の志民先生が監修されている特集で、6ページものボリュームがあります。
学級担任の先生が多く読む雑誌です。
わかりやすく写真や図などを用いて書かせていただいたつもりです。
例曲として取り上げたのは、「ハンガリー舞曲第5番」(ブラームス)と「春の海」(宮城道雄)の2曲です。
私たちが子どもの頃は、音楽を聴いて「はい、感想を書きましょう」というような授業が多かったような気がします。が、今はそれだけではいけませんね。何を学ぶのか、ということがはっきりしませんから。何か一つくらいは、「このことが聴けた、わかった!」「だからこの曲は面白いんだ」「なるほど、ゆったりした感じに聞こえるのは、こういう仕掛けがあったからなのか」ということがなくては、学習としては不十分と言わざるを得ません。
効果的な授業づくりの支えになるのが、学習指導要領にある〔共通事項〕です。「音色」「リズム」「拍」「調」「反復」「変化」「呼びかけとこたえ」など14くらいある、音楽を形づくっている要素などを、鑑賞の視点にするわけです。
私にとっては、この〔共通事項〕の出現(平成20年)は、天からの贈り物のようなものでした。
それまで霧の中を彷徨いながら鑑賞の授業づくりをしてきたのですが、共通事項を軸に据えることで、パァッと目の前が明るくクリアになったようになったのです。
「そうかぁ、この曲はこうやって速度に着目して聴けば、学びが成立するのかぁ」という具合に。
ところが……
今から10年ほど前でしょうか、先輩同僚の中島寿先生からこんな指摘を受けました。
「鑑賞の授業でもっとも大切なことは何か?」と。続けて「確かに〔共通事項〕を切り口に音楽を鑑賞させることは大切だし有効である。でもね、例えば1回だけ聴いて『あ、この曲は速さが変化するから面白いんだ』とわかる、それで学習内容がクリアされておしまい、っていうことはないでしょう? それこそ薄っぺらい学びだよね。そうではなくて、鑑賞の授業で、何度も何度もその曲を聴かせたいよね。それで、子どもたちと鑑賞曲が仲良くなる、その曲のことを好きになっていく……、このことこそが、鑑賞学習のねらいだし、もっとも大事なことなんだと思うよ」
と。
まるでハンマーで頭をカキーンと打たれるような衝撃を受けました。〔共通事項〕の重要性だけに目が向いていた私には、まったくもって鋭い指摘でした。
「そうかぁ、まったくその通りだ!」……けんもほろろとはこのことで。
でも、何回も聴かせるからと言って「今日は10回聴きますよ!」では、授業にならないし(^^ゞ
そこから修行が始まった……というわけです。
どうやったら、子どもが飽きることなく鑑賞曲に向き合えるのか、そして何度も聴かせることにつながるのか、しかも学習内容も理解できるようになるのか、そして何よりその曲を好きになっていくのか……。ん~~、これは難題だ!となったわけですね。
そのとき私のライフワークである「体を動かす活動」も大いに助けになったことは言うまでもありません。
本当に、中島先生には感謝してもしきれない……。
先輩に感謝……と言えば、もう一人の先輩同僚の熊木眞見子先生にも感謝の気持ちがいっぱいです。
そもそも、この学校に私が勤務するきっかけになったのは、熊木先生のご著書に触れたことに端を発します。
今からもう20年以上も前の話です。「身体表現」という大きな文字が書籍のタイトルになっていました。大きな書店にある音楽教育の棚に、その本だけがひときわ光って見えました。もちろんそれは、私がリトミックを学んできたからです。
当時、やはり私は彷徨っていました。アメリカでリトミックの指導者免許(ライセンス)を取得して、意気揚々と帰国したのが27歳だっけな……。早速故郷の北海道に帰って小学校で実践を試みたわけです。
が、なかなか思うような成果を挙げることはできませんでした。学んできたリトミックをそのまま音楽の授業に取り入れても、子どもたちは喜ばなかった。音楽ありき、リトミックありき、ではいけないのだ、ということはわかっていたのですが、ではどうしたらいいのか……。悩む日々が続いていました。
帰国して数年経っていました。
そこで熊木先生の本に出会ったのです。
「これだ!」と膝を打ったのを今でも鮮明に覚えています。日本にこういう視点で音楽の授業づくりをしている先生がいるんだ!……これまた天からの贈り物です。
早速熊木先生の授業を参観するために筑波の研究会に出向いたのです。
何と、その研究会から1年後、私は熊木先生の同僚になったなんて、今でも信じられない衝撃です。
人生とはわからないものです。どこにどのようなご縁があるか……。
話が長くなりました。
4連休で時間があるとこうなりますね(^^ゞ
というわけで、教育技術10月号、よろしかったらお手にとってご覧いただければ幸いです。
