夢じゃないならなんなのさ


今年のリトグリは、嬉しいことにガオラー側がついていくのがやっとの状態だ。私はまだAmbitiousの新曲たちもちゃんと消化していないのに、もう次のシングルだ。


リトグリは5/28に発売するNew Single「夢じゃないならなんなのさ」の先行配信を行った。この曲はTVアニメ「ロックは淑女の嗜みでして」のエンディングテーマである。完全にロック調ではないもののかなり攻めた曲で骨太の作品である。聴いた瞬間に打ちのめされたガオラーさんも結構いらっしゃるようだ。


まず曲の構成。

<イントロ→1A→1B→1サビ→2A→2B→C→サビ>

という構成。キーはG♯(=A♭)。


イントロのコーラスは長調で始まるが、Aメロからは

ガツンと短調(サビは一部長調)という不思議な曲調だ。

ではブロックごとに気づいた点、感想を簡単に。


◾️イントロ ♪Oh, alright…

さあ、ロックが来るぞーと身構えていたら素っ頓狂なギターのイントロ…。と、いきなり♪Ah- の分厚いコーラスが来た。暖かみのあるコーラスだが演奏のサウンドは重いベースにディストーションの効いたギターでうっすらとロックの香り。リズムは打ち込みか。

かれんの♪Oh, alright…はまだ軽い調子だ。


◾️1A  ♪ひとりひとつの 〜 口が裂けても言わない

・ミカリード。最近の曲によく見られる安定のミカ入  

   りだ。ツッパッた歌い方はさながら先制パンチだ。

・続くかれん、いきなりガナリから入る。入りからガ ナリというのは今までなかったのではないか?それ だけにこの曲のエネルギーを初っ端から感じる。

・続くmiyou。♪良い子…のパートはあざ笑いから入 るという驚きの入り方だ。気怠く語るような空気  はmiyouならでは。冒頭からセンスを見せつけて  いる。絶妙なオクターブ上ハモはアサヒか?相変  わらず器用にこなす。

・続く結海。「クソクラエ」とキレイなお嬢さんが歌 うのでゾクっとした。思えば「うっせぇわ」で凄み を見せてくれた結海だ。またあの時のように暴れて くれるのか。


◾️1B  ♪誰だ 〜 そうだAll for this time

・はじめの♪誰だ でハモり、追っかけの♪誰だ が1  

 人。1人が歌い複数のコーラスで追っかけるというの が普通だが、その逆を行っている。

・ここから複雑だ。♪誰だ(誰だ) の後に♪fu fu-という ハーモニー、さらに♪何かが…というフレーズが被 さってくる。さらに♪一切のノイズ…が被さる。

 同じように、♪今だ(今だ) の後に♪生きる時間が  が被さり、続いていく。全てのワードが隙間なくハ モったり1人だったりと被せていくコンビネーション は驚異的だ。この複雑な構成はシロウトなら間違い なくタイミング、リズムがグダグダになるところだ。

・そしてBメロの仕上げは結海の♪そうだ All for this  

   time の超ハイトーンだ。声の太さ、密度が半端なく 迫力満点だ。音階はHiF(=F5)という超高音。しかも 地声だ。音程もパワーも最高だ。結海、すごっっ!


◾️1サビ 

♪この身体から 〜 Gimme more x2  your heart

・結海のハイトーンの余韻を味わう間もなく、容赦なくこれに被せてアサヒのリードと字ハモのコーラスが入る。アサヒの♪ないならなんなのさ、「ない」で声を裏返し「ならな」を経て「んな」でまた微妙に裏返すという"返し技"は笑えるすごさ。さらに「のさ」で息をブレンドして抜く…そこで抜く?というアサヒ独特の"抜き技"も恒例だ。


・サビだけあって演奏は重厚なベースとバスドラ(打込 みだが)、ディストーションのギターが効いてロック っぽい。

・リードは結海に移り、かれんの♪We'll be alright と 絡む。 これも先ほどの結海と同じHiF(=F5)ハイトー ンだ。結海と反対で細く尖った鋭いハイトーンだ。 これも音程、パワーともに素晴らしい。ま、超人か れんなので。


・リードはMAYU、ミカへと移る。MAYUも負けてい ない。MAYUが頑張っていると嬉しくなる。

・ここのノリは単調なようで難しいリズムだ。バスド ラとベースの鳴るタイミングが難しく単純な1,2,3,4  

 のノリではない。


◾️間奏コーラス

・イントロでも出てきた穏やかなコーラスだ。ボーカ ルがガツンガツン来た後なので余計に暖かみを感じ る。イントロでは正直、ん?と思ったが2回目でもう 耳に馴染んでいる不思議なコーラスだ。どこかThe   

 Beatlesのコーラスを思い出すのは私だけ?なんの曲 だったか? 「Your Mother Should Know」か  も?ビートルズには他にもこの雰囲気のコーラスが ある気がするのだが…。

・miyouの歌詞付きのフェイクのような♪Gimme mor 

 e x2 your heart  のフレーズが入る。何と気持ちの 良いフェイクだ。おだやかなコーラスの上に乗せて 自由に歌っている感じがとても良い。moreの発音も 良いし、♪heart での音程の上げ下げはmiyouのア ドリブだろうか?とてもオシャレでいろんな音楽を 聴き込んだ人の出すフェイクだと思う。カッコ良す ぎる。


◾️2A   ♪立ち上がれ〜ライバルin my mind

・♪立ち上がれ、ぶちかませ、未来へいざ宣誓 

  キターー!結海&アサヒ&ミカがかましてくれた。こ  

 れこれ、これくらいガツンと来て欲しかった 中でも

 過激ワードである♪ぶちかませ をアサヒに当てたの

 は興味深い。

・続いて♪(Do it)妥協の二文字はない からの結海→かれん→ミカ→miyouのガツン4連発はもう最高。まず結海が先頭でガツンの空気を作り、かれんがさらに増幅させている。ミカの♪強がりなが「ら」のFight  は声に芯があって大好きだなあ。この曲で一番好きかも。「ら」が敢えてわずかにフラットさせるところがブルージーでたまらない。これもセンス。

・そしてmiyouの♪ライバル の発音のカッコいいこ 

 と、カッコいいこと。

・この2Aは一番ロックっぽくて大好きだ。もちろんハ イトーンも良いけれどこのように1語1語に込めた魂 みたいなものを感じるパートだ。もしもテレビでこ の曲を演るならこの2Aだけはカットして欲しくない パートだ。


◾️2B     ♪誰だ 〜 そうだAll for this time

・♪誰だ、1人じゃないな のMAYUは恐ろしいほどゾ クっとする。この凄みはMAYUにしか出せない。ク ールビューティーと言うのか。この短いフレーズで の存在感が凄すぎる。

・1B同様にこのパートはコンビネーションが求められる。ライブで演ってもグルーヴ感を損なうことなくこなしてしまうんだろうな、間違いなく。

・仕上げはmiyouだ。♪そうだAll for this time

  えっっ?1Bの結海と同様にHiF(=F5)だ!しかも地声だ、miyouスゲーーー。 地声の音域は広がってきたことは感じていた。Bobの頃になると時折り出現していた。「いつかこの涙が」のラストの♪wooYeah のフェイクも当初のファルセットから2024後半から?地声に変わっている。そして今回の超高音だ。これだけ声が良くてセンスかあってピッチも発音もよくて、ピアノもギターもボイパもできて…miyouはもはやモンスターだと思う。このフレーズは100人聴いたら100人が賞賛すると思うよ。誇らしい。


◾️コーラス

・miyouのハイトーンが鳴り始めたと同時にAh-Ah-Ah 

 -Ah-Ah というコーラスが入る。ECHOのようでもあ  るが少し重めの抑え気味に歌っている。メロディ はだいぶ違うが「The Greatest Showman」の冒頭 のコーラスのような空気感か。2回目のAh-Ah-Ah-A   

 h-Ahで3度上の上ハモが増えている。ここは段階的 に3度、5度、さらに上と増やしていくなどもう少し 派手なアレンジでもよかったのではないか?とも思 ったのだが、このコーラスは何と次のCメロのバック コーラスへとそのまま継続されるのでそんなに派手 にしないのか、と納得した。


◾️Cメロ ♪迷って〜そうだAll for this time

・はじめBメロの変形だと思いB'メロと名付けようとも  

   思ったが雰囲気から言ってもここはCメロと言って良 いだろう。2サビでなく2Bの後のCメロはあまりない

 かもしれない。ラストサビにバトンを渡す大事なパ ートだ。

・前ブロックから繋がるバックコーラスとCメロのリー ドがあたかも2つのメロディが解け合うように絡み、 ハーモニーの洪水のように心に流れ込んでくる。こ のアレンジは本当に素晴らしい。2Aと並んでこの曲 の聴きどころだ。

・ここのコード進行(D♭→E♭→Fm)こそマイナー調ロ ックの王道だ。ガツン感があって私も好きだ。


<余談>ラジドレミファソラを構成音としたAm基調のイ短調で言えば、F→G→Amを繰り返す王道進行だ。逆のAm→G→Fもよくある。Led Zeppelin「天国への階段」のサビは良い例。リッチーブラックモアなども用いている。さらに言うと雰囲気は違うが「APT.」のサビもこのF→G→Amの進行だ(もちろん調は違うだろうが)


・ミカ→MAYU→アサヒ→miyouとつなぐこのリレー も素晴らしい。特にMAYUの♪ごまかせなくてー  の「てー」で細かいビブラートで正確なピッチを保 っている音が好き。

・そしてそしてこのリレーのアンカーはもちろんラス ボスかれん。♪そうだAll for this timeーーーーのハ イ&ロングトーンだ。もちろん1Bの結海、1サビの かれん自身、2Bのmiyouと同様にHiF(=F5)だ。

 ラスボスだけあって2拍+2小節(合計10拍分)のロン グトーンだ。結海やmiyouよりも1小節長い。しかも コーラス、演奏すべて

 の音がピタリと止まり、かれんの歌声だけが鳴り響 く。ラスボス、お通りください!と言っているよう だ。

 ビブラート無しの超ストレートボイス。全くブレず にピッチ、パワーとも満点。久しぶりのレーザービ ームだ。しかもだ。しゃくり上げて高音に達するの でなく音の頭からこの超高音を地声でパーンと当て ている。だからパンチ力が半端でない。参りまし  た。やはり最近のかれんはゾーンに入っている。


*ここまで書いて、もう一度聴き直してわかったことだが、しゃくり上げることなく"当てに行く"のはこの曲の全箇所がそうだ、と気づいた。さすがに結海、miyouが最高音を出す時、この2箇所のみ、ほんのわずかにしゃくりを入れているが、その他は全員、全箇所、当てに行っている。これは驚異的なことでなかなかできるグループはいないと思う。


◾️2サビ(ラストサビ)

♪この身体から 〜 Gimme more yeah

・♪この身体から「溢れるものが」でディストーショ 

 ンの効いたギターの下がってくるスケールとmiyou  

 の歌声が混ざるところ、あまりにもカッコよくて鳥 肌モノだ。miyouは英語だけでなく日本語の発音も カッコいい。

・MAYUは「あたしだってかませますからね」とポス トしていたが、その通り、このパートでもかまして くれている。

・リードはアサヒ、かれんへと移る。その裏で追っか けのコーラスフェイクとでも言うのか、ミカが頑張 っている。♪We'll be alrightでは高音のHiFが出て くるがキレイなファルセットでこなしている。

・最後は例のAhーというコーラスが入り、miyouの歌 詞付きフェイク♪Yeahーが炸裂してこの曲は幕を閉 じる。ちょっとmiyouはヤバいね。





このロック曲は3分07秒という短さが潔くてよい。

ただのガツン一辺倒でなくBメロの展開、要所で出てくるメジャー調の穏やかなコーラス、と変化を持たせたロック曲だ。リトグリにおいてロック調と言えばECHOやWavesがあるが、どちらも悲愴感が漂う曲だ(歌詞は置いておいて)。「夢じゃないならなんなのさ」は上述の変化があるため悲愴感はなく、前に前に突き進んでいくイメージの曲に感じる。6人の個性という点でも突き抜けているし、コーラスワークもコンビネーションも見せられる。何よりハイトーンという非常にわかりやすい見せ場があるので凄さがわかりやすいのだ。

これはリトグリの大きな武器になるだろう。

Gravity、LIFE、晴れの舞台などの新曲たちを少しの間、横にどかすくらいの力のある曲だ。

ライブ前(八王子は終わったが)の時期をこれほど有効に使って私たちガオラーに喜びを与えていただけるリトグリのメンバーとスタッフさんに感謝したい。