【オニオンファイツ】

【オニオンファイツ】

創る!造る!増える!増える!

双頭の絶対王者B.Bチョップが統治する闘いの世界、ここバーリトゥード系(加盟15惑星からなる惑星系)では、宇宙レスラーと呼ばれる特別な資格を有するファイターはバトルカーストの最上位にある存在だ


サルーは惑星「猿奴(えんど)」の奴隷出身でありながら、「宇宙レスラーライセンス」を取得した英雄であった

サルーは常に自身の行動に誇りを持ち、他者に優しく、自らにはストイックに生きる事を心がけ、その英雄に相応しい振る舞いは宇宙レスラーの模範とも称されたものだった

だが、そんなサルーの人生は爆発事故の衝撃で全く違うものへと変わってしまったのだ

今やサルーは暗殺組織の飼い犬なのだから・・



岩場に溜まった汚水の水溜りを覗き込むサルー


サルー「(顔が全く変わってしまったな・・尻尾も無くなったし・・これは本当に俺なのか?)」

岩場に腰掛けたトニーΣがサルーの背中に向けて言う


トニー「あんまり悲観しなさんなよ。サルーさんよ」

トニー「命が長らえただけでも儲けもんだぜー!」

トニー「誇りなんてもんはよ・・結局埃と変わらんよ」

トニー「吹けば飛ぶ程度のライトなものよ」

極太の葉巻をふかしながら喋るのはホットドッグ・ダレだ


ダレ「トニーさ。そりゃ分かるけどさ。サルーさんだって、状況理解にまだ時間が必要だろうさ」

トニーΣが背後から突然サルーの後頭部を右足で小突いた

トニー「グズグズグズグズしてる時間はねーって言ってんだよサルーさん!分かる?」

トニー「全盛期の力を直ぐにでも取り戻して貰わねーとさ!」

トニーΣがサルーの左側頭部に鋭い左ミドルキックを放ち、避ける事なくサルーにクリーンヒットする!

トニー「俺達の為にな!」

背後から蹴られて、目の前の汚水の水溜りに頭から突っ込むサルー

その鼻からは血が滲んでいる

ダレ「やっべ!やべーさ!鮮血を見ると暴走する種族なんだろ?」

ゆっくりと上体を起こすサルーの様子は明らかに先程とは違う

トニーΣが叫んだ!

トニー「頭に着いてるゴーグルを目にあてな!サルーさんよ!」

言われた通りにサルーがゴーグルを目元にズラした

トニー「サルーさん!あんたが血を見て暴走するのは血中の赤い色素のせいだ!」

トニー「だから、血の赤を見なけりゃ暴走をコントロールできる!!」

トニー「その青いレンズのゴーグルは俺からの贈り物だぜ!」

サルーが口を開いた

サルー「あ・・ありがとう」

トニー「後で請求すっから気にしないでくれ!」

トニー「それじゃ早速本番実行と行こうぜ!」

サルー「ほん・・ばん?」

トニー「1人目の暗殺さ!まっ!気楽にな!」
キョトンとするサルーにトニーΣが言い放つ


トニーΣ「スサノーは生き返らせたヤツを完全支配するために生前の記憶を奪うんだ!」

トニーΣ「仕事をこなす毎に少しずつ記憶を戻してもらえるシステムだ・・」

トニーΣ「だが、記憶の残量はスサノーにしか分からなからよ。完全に取り戻せてるのか不安で永久に支配されてしまう」

サルー「あ・・アンタ・・も?」


間を置いてからトニーΣが言った

トニーΣ「俺もそうだった!」

トニーΣ「過去系なのは今は違うからだ」

トニーΣ「ある時、偶然記憶の保管庫を発見した俺は、自分の全記憶を取り戻した」

トニーΣ「ついでにダレの記憶もな!」

不思議そうな表情のサルーを見て、ホットドッグ・ダレが口を挟んだ


ダレ「なんで記憶を取り戻した俺達がまだ「アサシン倶楽部」に縛られているかってさ・・」

ダレ「それはさ。取り戻したのがさ。割と最近なのとさ」

ダレ「倶楽部から逃亡すれば、別のメンバーに暗殺されちまうからさ」

トニーΣ「だから!新しく来たサルーさん!アンタの記憶を奪われない様に細工したんだよ!俺達の仲間に引き込むためにだよ」

ダレ「そんでさ。それがバレないようにさ。言葉に制限をかけたんだよ。悪いとは思ったけどさ」

トニーΣ「言葉は訓練で戻るが、頭がイカれたフリをしろサルーさん!」

トニーΣ「それで、3人でスサノーを暗殺して組織から抜けるぜ!」

ダレ「俺達以外のさ。5人の幹部暗殺者をさ。全員ぶっ殺してからさ!」

サルー「5・・人?」

トニーΣ「魔道、破道、ザ・モナリ、スリンガー、インゴッド」






マウントポジションを獲られたトニーΣが、首元に噛み付くサルーの左フトトモに細い注射器で何かの薬品を打ち込んだ!


ハッ!と我に返るサルー

サルー「アウアア・・エンド・・オレは・・してい・・(俺は惑星「猿奴(エンド)」の英雄サルーだ!俺は今何をしてい・・)」

ガクッ

サルーは意識を失った


噛まれた首元を抑えながら、不機嫌そうに立ち上がるトニーΣ

トニーΣ「全くとんでもない凶暴さだな」

トニーΣ「そいえば、コイツらエイプ星人は血を見ると狂っちまうって資料に書いてあったか?」

サルーの襟元を掴んで、引きずる様にして施設へ戻るトニーΣ

トニーΣ「クソ!力仕事は俺の得意分野じゃないぞ」

トニーΣ「とりあえず殺処分は繰越しか・・」




サルーが次に目を覚ました時、広がっていたのはまたあの暗い施設の光景だった

頭に巻かれた包帯を取りながら目をこらすサルー

目の前には一脚のパイプ椅子・・そこに座っている男はトニーΣではない、黒い肌に巨体、ハート型レンズのサングラスをしている、両腕にホットドッグの形をしたサポーターを付けている以外はなかなかに迫力のある風貌だ


そしてそいつは座りながら眠っていた

サルーがそっとその男に近づくと、男は目を覚ました!

男「おいおいおい!横になってねーとさ。頭とか打ってんだろーからさ」

男「えっと?あっ!俺か?俺はホットドッグ・ダレ!」

ダレ「トニーはアレさ。仕事中ってやつさ。だから俺が引き継いだっていうかさ。そう言う事さ」

サルーが喋ろうとするも、思うようには言葉は出ない

ダレ「ああ!そうだな。不安だよな。分かる。分かるさ」

ダレ「俺で良ければ、話せる範囲で話してやるさ」

ダレ「俺達の組織は「アサシン倶楽部」って言ってさ。まあ。暗殺を請け負う組織さ」

ダレ「でもって死んだアンタを倶楽部の頭であるさ。スサノーさんが生き返らせたってわけさ」

ダレ「アンタ宇宙レスラーだしさ。使えそうだろ?」

ダレ「そんでさ・・」

「そこまでだ!ダレ!!」

ホットドッグ・ダレの言葉を打ち消すように強い口調が響いた

ダレとサルーが振り返るとトニーΣが立っていた

トニーΣ「何をペラペラペラペラと勝手に喋ってんだよデブ!」

ホットドッグ・ダレの巨体が椅子から立ち上がるとトニーΣを見下ろした

ダレ「あっ?今デブっつったか?あぁ?」

トニーΣが呆れた表情を見せる

トニーΣ「悪かったよダレ!お前のお人好しについ呆れちまっただけだ。良く見たらお前は言うほど太ってない」

ダレ「謝るならさ。別に許すけどさ。俺も悪かったよトニー」

トニーΣがサルーを睨みつけた

トニーΣ「とにかく!今ダレから聞いた事は忘れるか、知らないふりをしろ!」

トニーΣ「それから、おまえの言語中枢に細工して上手く喋れなくしたのは俺だ!」