サルーは惑星「猿奴(えんど)」の奴隷出身でありながら、「宇宙レスラーライセンス」を取得した英雄であった
サルーは常に自身の行動に誇りを持ち、他者に優しく、自らにはストイックに生きる事を心がけ、その英雄に相応しい振る舞いは宇宙レスラーの模範とも称されたものだった
だが、そんなサルーの人生は爆発事故の衝撃で全く違うものへと変わってしまったのだ
今やサルーは暗殺組織の飼い犬なのだから・・
岩場に溜まった汚水の水溜りを覗き込むサルー
サルー「(顔が全く変わってしまったな・・尻尾も無くなったし・・これは本当に俺なのか?)」
岩場に腰掛けたトニーΣがサルーの背中に向けて言う
トニー「あんまり悲観しなさんなよ。サルーさんよ」
トニー「命が長らえただけでも儲けもんだぜー!」
トニー「誇りなんてもんはよ・・結局埃と変わらんよ」
トニー「吹けば飛ぶ程度のライトなものよ」
極太の葉巻をふかしながら喋るのはホットドッグ・ダレだ
ダレ「トニーさ。そりゃ分かるけどさ。サルーさんだって、状況理解にまだ時間が必要だろうさ」
トニーΣが背後から突然サルーの後頭部を右足で小突いた
トニー「グズグズグズグズしてる時間はねーって言ってんだよサルーさん!分かる?」
トニー「全盛期の力を直ぐにでも取り戻して貰わねーとさ!」
トニーΣがサルーの左側頭部に鋭い左ミドルキックを放ち、避ける事なくサルーにクリーンヒットする!
トニー「俺達の為にな!」
背後から蹴られて、目の前の汚水の水溜りに頭から突っ込むサルー
その鼻からは血が滲んでいる
ダレ「やっべ!やべーさ!鮮血を見ると暴走する種族なんだろ?」
ゆっくりと上体を起こすサルーの様子は明らかに先程とは違う
トニーΣが叫んだ!
トニー「頭に着いてるゴーグルを目にあてな!サルーさんよ!」
言われた通りにサルーがゴーグルを目元にズラした
トニー「サルーさん!あんたが血を見て暴走するのは血中の赤い色素のせいだ!」
トニー「だから、血の赤を見なけりゃ暴走をコントロールできる!!」
トニー「その青いレンズのゴーグルは俺からの贈り物だぜ!」
サルーが口を開いた
サルー「あ・・ありがとう」
トニー「後で請求すっから気にしないでくれ!」
トニー「それじゃ早速本番実行と行こうぜ!」
サルー「ほん・・ばん?」
トニー「1人目の暗殺さ!まっ!気楽にな!」