・・・当然だけど、好意的な視点で相手を見るのか、好意的ではない視点で相手を見るのかによって、ものごとの解釈は大きく変わってくる。

 

歴史上の人物についてなんか特にそうで、その人物のほんとうのこころと生きる戦略が正確に分からない限り、好意的になるかどうかは各自資料などを見て決めるより他ない。

 

その資料が、好印象や悪印象をもたせるような誰かの誘導の記録であっても、他に知る由もない場合はそれを信じるしかなくなるから厄介だ・・・。

 

好印象と悪印象というものは、自分と考え方の方向が違うことで起こるものだけど、それとは別に、集団的な視点の判断も同時にあって、そこでも好印象と悪印象のどちらかの印象を受ける。

 

移り変わりやすい集団の視点に振り回されることばかりだけど、変わらない根本的な集団の視点としては、"剥き出しの生命体の思考" に良い印象は持たないというものがある。

 

集団の安定を優先させるために自分の中の生命体の思考を制御する人が多数いる中で、"剥き出しの生命体の思考" をする人は、その安定を破壊するかも知れない可能性を秘めているからなんだろう。

 

Van Gogh - Drei weiße Hütten in Saintes-Maries
フィンセント・ファン・ゴッホ 作成: 1888-06 (Wikipediaより)

 

 

 このお義父さんの話は、ナミエさんの孫息子の、"剥き出しの生命体の思考" が、この集落の安定を破壊するかもしれないということだろう。

 

まあともかく、お義父さんの話を聞くにあたって、自分もお義父さんだからということで贔屓目に解釈してしまうことも考えていないといかん・・・。

 

真面目な思考と同時に、"焼酎を口に含んで深呼吸・・・なんて美味いんだろう" といった思考も行なっているトキムネのお父さんは、真面目ではない部分がバレないように深刻な顔をして、お義父さんの続きの話を聞いていた。

 

「孫息子は、裏のナミエさんの土地には住んでおらんでね。ちいと離れたところに家を建てて住んどる。

ほいだもんで、本心は相続した土地をみんな売っちまいたいんだろう。

 

口約束で決めていた境界線の、もとナミエさんの土地だった部分について、ずっと向こうが土地の税金払ってきたから、その分払えと言ってきおった。おそらく役場の図面が、ほうなっておったんだろう・・・。」

 

「えっ・・・役場の図面がそうなっているんですか・・・それはマズいですね・・・。」

 

「こっちだって話を聞かんわけじゃないで、順序立って話せばいいものを、いきなり、金よこせときたら・・・そりゃあ、腹立つで。

 

はじめっから、こいつはこの集落で仲良くしようなんて考えておらんで・・・いかに高く相続した土地を売って、最終的にはこの集落から出ていくことしか考えておらんだろう・・・。」

 

トキムネのおじいちゃんは、グワッとグラスの焼酎を飲み干し、また台所へ焼酎をもらいに行った。