アンタッチャブル(午後のロードショー テレビ東京吹替版)
※ネタバレです。
原題 The Untouchables
製作年 1987年
製作国 アメリカ
上映時間 119分(オリジナル版)
監督 ブライアン・デ・パルマ
製作 アート・リンソン
原作 オスカー・フレイリー
脚本 デビッド・マメット
撮影 スティーブン・H・ブラム
編集 ジェリー・グリーンバーグ
音楽 エンニオ・モリコーネ
出演 ケビン・コスナー(津嘉山正種)、ショーン・コネリー(若山弦蔵)、アンディ・ガルシア(平田広明)、チャールズ・マーティン・スミス(牛山茂)、ビリー・ドラゴ(西凛太朗)、ロバート・デ・ニーロ(小川真司) 他

あらすじ
禁酒法時代のシカゴ。財務省の特別捜査官エリオット・ネスは、街を牛耳るマフィアのボス、アル・カポネの検挙に執念を燃やすが、カポネは警察内部にもその権力を振るい、捜査は難航していた。ネスはベテラン警官のマローン、射撃の名手ストーン、税理士のウォレスらとチームを結成し、カポネに挑むが...。

最近は午前十時の映画祭の復活を記念して再上映されたりと、何かと話題な本作。僕も大好きな作品です。僕にとっては「ゴッドファーザー」 を観る前、たぶん初めて観たギャング・マフィア映画だったんじゃないかなと。字幕版しか観たことがなかったんですが、先日午後のロードショーで放送されたテレビ東京吹替版を鑑賞してみましたよ。

本作に関しては好きなところが多すぎるんですが、とりあえず冒頭のタイトルバック最高にカッコいいですよ。「タイトルバックがカッコいい映画にハズレなし」と勝手に思ってますが、タイトルの見せ方、そしてこれは全編に渡って素晴らしいエンニオ・モリコーネ名スコアの数々。何度も観てるのに毎回シビレる

タイトルバック後の立ち上がりとかも、初めて観たときはイスから飛び上がるぐらいビックリしましたよ。わりと静かな立ち上がりなんだけど、いきなり「ドーン!」っていう。もうここで一気に話に引き込まれる。そしてやっぱりハリウッドのエンターテイメント映画で「幼い子供が殺される」というのは、ある種「タブー」でもある。それをいきなり冒頭で、しかもセリフで処理とかじゃなくてきっちり「画」で見せつけられるのが、当時は子供心にショックだったし、何よりも「この映画では誰が死んでもおかしくない」という緊張感にも繋がっていたと思います。
それからネス(ケビン・コスナー)の仲間となる各キャラクターの登場シーンがイイ! ネスと、彼のメンターとなるマローン(ショーン・コネリー)の橋での出会いの場面。何回も観てるとマローンが画面に登場しただけで泣きそうになります。

それから税理士のウォレス(チャールズ・マーティン・スミス)。ネスがオフィスに帰ってくると勝手に自分のイスに座ってて、「ちょっとどいてくれる?」っていう(笑)。体は小さいけど態度がデカイ。非常にコミカルで楽しいキャラクター。仲間からも、観客からも愛される存在であるがゆえに、その死に様は胸に迫るものがありました。

そしてなんと言ってもストーン(アンディ・ガルシア)ですよ。彼は初登場シーンで射撃訓練をしていて、他の警官は銃をホルスターから抜いた状態から撃ってるんだけど、ストーンだけが腰に銃を差した状態からの早撃ちをしてる。つまり彼だけは実戦を意識した訓練をしているということ。細かい演出ですが、彼のキャラクターを見事にアクションで説明していたと思います。
悪役チームも文句なし! アル・カポネを演じたロバート・デ・ニーロはもちろんマフィア役は多いですけど、本作のような突発的な暴力性というか、いきなりキレるみたいな役は意外と珍しいんじゃないかしらん? たぶんスコセッシ作品だったら
ジョー・ペシあたりがやりそうなキャラクター。カポネが、「俺が好きなもの?野球さ!」ってバットを出したときの、ちょっと笑っちゃうぐらいの不穏感とか最高です。

それから白スーツがとても似合う殺し屋役のビリー・ドラゴも素晴らしかった。こんなに悪役面が似合う俳優なかなかいないですよ。ショーン・コネリーもそうですが、ビリー・ドラゴも一昨年に亡くなられたということで、残念でなりません。
本作はお話自体はシンプルで、登場人物の魅力だけでも十分に楽しめる作品ですが、随所でデ・パルマサスペンス演出も効果を存分に発揮しています。

例えば先に書いたカポネバットを持ったままで繰り広げる独り語りのシーン。喋りながら円卓の周りをぐるぐる回って、いったいどこで止まるのか? この語りが終わったときに起こるであろう惨劇への緊張感を高める素晴らしい演出。

そしてマローンが殺される場面での、これまたヒリヒリするような1カット長回し撮影。ここも1カットならではの臨場感があると同時に、殺し屋目線の主観ショットでもあるため、観客がマローン危機を知らせたくてもできないという葛藤がより強まっていて、すごくもどかしさを感じる場面でもある。

ちょっと話が逸れますけど、劇中でマローンが持っている警察連絡ボックスの鍵と聖ユダのコイン・チェーンがとても象徴的なアイテムとして使用されています。マローンにとってそれは「法の番人である証」だったはず。にも関わらず死ぬ間際にはそれをかなぐり捨てて、ネス「やるべきことをやれ!」と叫ぶ。つまり、法が悪党を護るなら、法を破ってでもヤツラを倒さねばならないという決意ネスがするという、まさに名場面。最後にネスがそのチェーンをストーンに渡すのもいいじゃないですか。マローンからの魂の継承であると同時に、「お前はよき警官でいろよ。」というメッセージでもあって...(すみません、泣いてます。)
それからみんな大好き階段のシーンですよ。ここのアクションではスローモーションが効果的に使用されてる。やっぱりデ・パルマですから。「なんかここスローモーションにしたらカッコよくね?」みたいな浅はかな使い方じゃない。例えば人間は事故にあう瞬間、一瞬が何秒にも感じると言われてます。つまり、生きるか死ぬかの局面で、極限まで研ぎ澄まされた人間の集中力というものが見事に表現されてる。

非常にスリリングなスローモーションからの、満を持してのストーンの拳銃投げですよ。毎回このシーンでは僕もテンションがおかしくなる(苦笑)。もちろんこれは「リオ・ブラボー」 オマージュではあるけど、本作の方がよりスタイリッシュかつエモーショナルに仕上がっています。
今回は午後のロードショーで鑑賞したのでもちろん吹替版。当ブログでも何度か吹替版の魅力に関しては書いてきましたし、僕個人としては吹替版がオリジナル版を超える瞬間もあると考えています。

今回のテレビ東京吹替版では特にネスの最後のセリフが素晴らしかったです。カポネを有罪にしたネスに記者が「禁酒法が撤廃されるそうですがどう思われますか?」って訊くんですけど、オリジナル版だとネス「飲むよ。」と、わりとさらっとした感じで応え、エンドクレジットに向かいます。

ではテレビ東京版ではどうかというと、



「一杯やるさ。」


って言うんですよ~~(この感じ伝わりますかね...)。

なんていうか、「粋」なんですよね。もちろんオリジナルの「飲むよ。」もクールなんですけど、その後のエモーショナルな劇伴には「一杯やるさ。」のほうが合わない?よくない?カッコよくない?

まあこの辺はあくまで個人的な好みですのでね。

とにかく本作は映画史に残る犯罪映画の傑作ですし、デ・パルマ作品の中でもいい意味でエンタメ色が強い1本です。まだ同監督作品を観たことがない方にも比較的勧めやすいのかなとも思います。クドイようですがテレビ東京吹替版も最高ですのでね。機会があれば字幕版と見比べるのもアリではないでしょうか。オススメです。

個人的評価
9/10

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ではまた。