生きて、生きて、生きろ。 | 3代目大村屋

3代目大村屋

映画・ダンス・旅行を中心に、日々感じた事を…

監督:島田陽磨
出演:蟻塚亮二 米倉一磨

 

 福島県を舞台に、喪失と絶望に打ちのめされながらも日々を生きようとする人々と、彼らを支える医療従事者たちの姿をとらえたドキュメンタリー。東日本大震災と福島第一原発事故から13年が経った福島県では、時間を経てから発症する遅発性PTSDなど、心の病が多発しており、若者の自殺率や児童虐待も増加。相馬市にある「メンタルクリニックなごみ」の蟻塚亮二院長は連日多くの患者を診察し、その声に耳を傾ける。同院と連携するNPO「こころのケアセンター」の米倉一磨さんも、こころの不調を訴える地域住民の自宅訪問を重ねている。

 

 東日本大震災の傷跡は相当深いのだと改めて知った。大切な人を亡くした人は大勢いるが、マスコミに登場するのは、それを乗り越えて強く生きようとしている人がほとんどだ。でも、なかには立ち直れない人もいる。立ち直ることを諦めたような人もいる。避難生活で認知症になったり、夫を亡くして、生きる気力を亡くしたり。

 

 震災が原因で息子が自死した男性はアルコール依存症になった。立ち直って生きることに意義を見出せないまま酒におぼれている。「いつまで悩んでいるんだ、前を向け」と思うかもしれない。でも、彼には前を向いて生きていく意味も理由も分からなくなってしまったのだろう。「弱い」と一言で言ってしまうのは簡単だけど、人間は弱いものだし、弱くて何が悪い?と感じた。彼が悪いことをした訳ではない。彼は被害者だ。ただ、そんな彼を助けるのは大変だ。蟻塚医師と米倉さんの活動には頭が下がる。2人は患者を決して責めない。被害者だから。アルコール依存症の男性はこのまま亡くなってしまうのではないかと心配したが、少し回復したみたいで、ほっとした。
☆☆☆☆(T)