天上の花 | 3代目大村屋

3代目大村屋

映画・ダンス・旅行を中心に、日々感じた事を…

監督:片嶋一貴

出演:東出昌大 入山法子 吹越満

 

 萩原朔太郎の娘萩原葉子の小説「天上の花 三好達治抄」を映画化。朔太郎を師と仰ぐ青年三好達治は、朔太郎の末妹慶子に思いを寄せるが、拒絶されてしまう。十数年後、慶子が夫と死別したと知り、三好は妻子と離縁して彼女と結婚。太平洋戦争の真っただ中、2人は越前三国で新婚生活を送り始めるが、潔癖な人生観を持つ三好は、奔放な慶子に対する一途な愛と憎しみを制御できなくなっていく。

 朔太郎の妹に対する三好の狂気にも似た愛憎を描いた作品。初対面で一目ぼれして、でも思いは叶わず、16年以上も恋焦がれていた女性だったら、自分の中で神格化しちゃうかもね。長い年月をかけて、完璧な女神のように思ってしまったのかも。だから、自分が思ったような行動をとらない、逆にしてほしくない事をされたり、ふさわしくないと思うようなことを言われたりすると、許せなかったんだろうね。

 三好は元々、男尊女卑的な考えが強かったのかな。その割には最初はまめまめしく家事もこなしていた。三好はロマンチストで、慶子は現実的な女だったんだと思う。慶子と結婚したいがために妻とあっさり離婚して、妻が応じると「やったー」と叫ぶあたり、デリカシーがないし、自分のことしか考えられない自己中心的な人だよね。その妻にも暴力をふるっていたし、慶子ともうまくいかなくなると暴力でつなぎとめ、我に返って泣いて謝ってすがる。感情の起伏が激しく、人柄が一瞬で変わるDV男の典型だね。その最低男を東出昌大がうまく演じていた。ちなみに三好の子孫は、この映画のかなりの部分を否定しているらしい。三好は戦争を賛美したり、国民を鼓舞したりする詩をたくさん書いていたけど、その後、どういう作品で評価されるようになったのかな。文学にあんまり詳しくないからよく分からないけど。
☆☆☆☆(T)