さびねこです。細々とオンライン支援を開始しました。私は国語担当です。生徒は小学校2年生の時に日本に来て、もうすぐ中3になるブラジル人の生徒です。彼女が今住んでいるところでは日本語支援の先生が来て、週に1回1時間は学習サポートを受けられるのですが、それでは全然足りません。最近彼女は「走れメロス」という単元を勉強したのですが、私がどんな内容だったか聞いてみたところ、メロスが親友を自分の代わりに王様のもとに置いて走ったという経緯も分かっていませんでした。一見日本語は流暢で、外国ルーツの生徒の多い学校では緊急な支援が必要とは思われていない生徒です。ノートもきれいです。でも、テストになると成績は芳しくありません。

 

これではいけない。中3では国語の授業が楽しくなるようにと私は先行学習を始めました。単元は井上ひさし著「握手」です。児童養護施設のカナダ人園長(神父)と、戦後まもなくそこで暮らした男性が再会する話です。場所は上野の西洋料理店。(多分あそこだなぁ、オムレツがおいしいところだなぁって想像がつきます)

 

やさしい日本語で私が書きなおしたリライト教材で話を読んでいきます。音読を促しながら、内容を確認していきます。まず彼女は「動物園が休みだと、どうして上野公園が静かなの?」と訊いてきます。「そこかー---!!!」と私は心の中で叫びます。想像を超える質問がポンポン出てきます。上野公園のHPをウエブで探し、動物園の場所を確認します。

アクセス|上野精養軒【公式サイト】 (seiyoken.co.jp)

パンダが上野公園にいるのも知らないのです。家庭では日本のニュースもテレビで見ていないのではないかと思います。日本語はできるけど、ライフスタイルが違うのでしょう。そうなると、国語理解のための背景知識が、全く日本人家庭で育った生徒とは違うことが実感できます。知らないことは丁寧に説明していくしかないのです。そうです。背景知識の違いが、国語の理解に影響を及ぼすのです。 

 

一方、よくわかっていることもあります。キリスト教の聖職者が児童養護施設で働いているということは「ああ、オルファナート(孤児院)ね」とすんなり理解できます。オムレツの話が出てくると、どんなオムレツが好きか饒舌に話し出します。 

 

彼女との交流は、私にも新しい発見をもたらします。