●国と国民は自らが主体となって守らなくてはならない。本来の憲法9条を閣議決定で確立して軍隊を保持することが大前提である

 

 (1)日本は国防に関して誤った考え方を山ほどもしている。その第1は、自衛のための軍隊の保持と自衛のための軍事力の行使(軍隊投入)を認めている本来の憲法9条を否定していることだ。自民党から共産党まで一致している。GHQが起草した憲法9条案(1946年2月13日に日本政府に手交された)は、まさしく上記の内容であった。日本側が誤訳したが、芦田修正(1946年8月1日)によって事実上GHQ案と同じものになり、それが可決されて憲法9条となったのである。GHQのマッカーサー元帥も日本国民に向かって、「憲法9条は当初から自衛のための軍隊の保持を認めたものである」と再三にわたって表明してきた。

 

 だが1952年11月に、吉田茂内閣が「憲法9条2項は自衛目的だろうと侵略目的だろうとを問わず、軍隊の保持を否認したものである」との統一見解を出してしまったのである。まさしく憲法9条を反日解釈して否定した閣議決定であった。この閣議決定をその後の歴代内閣は継承してきた。だが、この閣議決定は憲法9条に違反し、憲法98条2項(条約及び国際法規の遵守)にも違反しているから、憲法98条1項の規定によって無効のものである。つまり、憲法9条を守る正義を実行する内閣が、閣議で「現在の憲法9条解釈は違憲であり無効だ」と決定すれば、自衛のための軍隊の保持と自衛のための軍隊の投入、軍事力の行使を認める本来の憲法9条が、一日で確立するのである。だから、自衛隊も一日で軍隊にできる。私たちはこれを深く認識しなければならない。

 

 21世紀になってから、すなわち台頭してきた中国と復活したロシアによる本格的な日本侵略が現実味を帯びてきたときに、憲法9条の反日解釈(=憲法9条の否定。軍隊保持の否定)と後述する「専守防衛戦略」を、中心になって推進してきた政治家が、安倍晋三元首相である。だけど、保守派のほとんどの識者は安倍氏を糾弾しないばかりか、支持、擁護してきた。「安倍応援団」ともいえる一部の識者が、安倍首相を高く評価してきたからだ。人々はこれに洗脳されたのである。

 

 (2)日本の国防が「専守防衛戦略」であるのは、本来の憲法9条を反日解釈して否定して、軍隊を保持しないからだ。自衛隊は軍隊でなく、「実力組織」である。だから『防衛白書』でも「軍事力」とは言わず「防衛力」と言っている。主権国家は自衛権を軍隊によって行使すると一般国際法(国際慣習法)は定める。だから、軍隊を保持しない日本は、自衛権を十全に行使できない。政府は、反日解釈した憲法9条の下での国防戦略の専守防衛戦略を、次のように言う。「相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神に則った受動的な防衛戦略の姿勢をいう」(『防衛白書』)。「防衛上の必要からも相手国の基地を攻撃するというような戦略的な攻勢はとらず、専らわが国土及びその周辺において防衛を行い、侵攻してくる相手をそのつど撃破するという受動的な防衛戦略の姿勢をいう」(『行政百科事典』)。

 

 つまり、現在の軍隊をもたない日本は、中国、ロシア、北朝鮮から「急迫不正の侵害」(一般国際法が自衛権行使要件とするのがこれである)を受けたときに、侵略国の軍事基地をはじめとする軍事・政治・経済の中枢を長射程ミサイル等でピンポイントで反撃して大打撃を与える、戦略的攻勢を行う戦力を配備できないし、当然攻撃することができない。つまり、日本は想定敵国に日本侵略のリスクを認識させられない。だから侵略を抑止できないのである。もちろん防衛することもできない。3国が今のところ、日本を本格的に軍事侵略しないのは、侵略すれば、日本の同盟国アメリカが集団的自衛権を行使して戦略的反撃を行ってくると考えているからにすぎない。

 

 (3)日本には国と国民を自らが主体となって守っていくのだとの意思が欠如している。いざとなったらアメリカが守ってくれるから大丈夫だと考えている。だから軍隊を持とうとしない。日本は道徳的・思想的に異常な国家であり国民なのだ。

 

 日本政府は北朝鮮に多くの国民を拉致されても放置している。軍隊を保持し、核ミサイルも保持して、自衛権を行使して同胞を取り戻していこうと考えることすらしない(後述)。「拉致問題の解決は最重要政治課題のひとつだ」との政府発言は、国民騙しの嘘である。拉致被害者家族会や支援団体は、政府の嘘を糾弾して、「閣議で反日の憲法9条解釈を無効とし本来の憲法9条を確立して、軍隊を保持すべきだ!」と要求して、政府と戦っていかなくてはならないのである。

 

 日本政府は尖閣諸島問題でも、尖閣諸島に燈台、港、ヘリポート、気象観測所を建設し、要員を派遣し、自衛隊部隊を常駐させて、実効支配していることを世界にアピールすることを全くしなかった。政府は中国公船が尖閣諸島領海を侵害して、パトロールすることを常態化するのを漫然と放置してきた。政府は一般国際法が主権国家に命じている、「領海・領土保全の侵害を排除する規定」(つまり平時の国防)を自衛隊法に加えて、海上自衛隊艦艇に領海を侵害せんとする中国公船を実力で排除させようとしなかったのだ。海上保安庁の巡視船では外国公船に対しては何もできないのだ。これも安倍政権である。憲法98条2項(条約及び国際法規の遵守)違反だ。日本政府の不作為によって、日本の尖閣諸島の施政権は浸食させられてきた。まさに反日ではないのか!

 

 (4)国と国民は自らが主体となって守らなくてはならない。世界の常識だ。そのためには、自衛権を米国や英国など普通の自由主義国のように十全に行使できなければならず、軍隊の保持が不可欠だ。国と国民を守るのは軍隊であるから、憲法9条を否定し軍隊の保持を否定する行為は、国家反逆の憲法違反・政治的大犯罪である。私たちは憲法の支配を堅持する国民運動を創り出して、閣議決定で現行の憲法9条解釈を違憲・無効と決定し、本来の憲法9条(芦田修正論)を確立し、自衛隊を国防軍にしなければならない。私たちは国際法(一般国際法)に基づいた精強な国防軍をつくり上げていくのである。そして日米同盟を強化するのだ。このようにして中国・ロシア・北朝鮮の侵略を抑止して、国の安全と生存を守り抜いていくのである。国防とは国民の基本的人権(憲法11条、97条)、個人の尊重・幸福追求権(憲法13条)等を守ることである。

 

 安倍首相(当時)の私的諮問機関の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長は国際海洋法裁判所長で元外務次官の柳井俊二氏。元外交官の岡崎久彦氏もメンバーの一人であった。メンバーは14人)は、2014年5月15日に「報告書」を首相に提出した。「報告書」は閣議で決定する「あるべき憲法解釈」として「芦田修正論」を首相に提言したが、安倍首相は当日の記者会見で「芦田修正論は採用しない!」と拒絶したのであった。まさしく明確な国家反逆の反日行動であった。私はすぐに批判する文をホームページ「大森勝久評論集」(2007年7月~2016年9月までが掲載されている。その後ヤフーがサービスを停止したので今は見られない)に載せてもらった。しかし反応はなかった。安倍氏は「報告書」の他の提言、すなわち先ほど述べた「領海・領土保全侵害排除規定」を自衛隊法へ加える提言も拒絶したのである。その他の正当な提言も全て拒絶したのだ。彼は立憲主義(法の支配)を破壊する人物である。

 

 (5)政府は「自由、民主主義、基本的人権、法の支配という西側自由主義諸国の共通の価値観を堅持する」と繰り返してきた。しかし、日本には立憲主義・憲法の支配(法の支配)・国際法の支配の思想はほとんどない。憲法9条、憲法98条2項、憲法98条1項を否定していることで明白だ。憲法は政府と国民の「統治契約」である。だから憲法9条を否定する政府は、統治契約違反(憲法違反)の政治犯罪を犯したから、交代させられねばならないのである。

 

 だが、保守派の識者の多くは安倍首相を支持・擁護してきた。思想レベルが余りにも低いということもあるが、そもそも「法の支配」の思想がなく、彼らにとっては政府は「お上」なのであろう。だから「政府の決定が正義だ」となっている。だから、安倍氏や政府に対して一定の批判を心の中で持っている人も、それを抑えて唯唯諾諾と迎合していく。保身であり、また名を上げる私益のためでもある。立憲主義・法の支配の思想がないと、自立した政治主体が形成されえない。反日左翼だけが間違っているのではない。位相は異なるが、保守派は自己批判して立憲主義・法の支配の思想を獲得していかなければならないのである。

 

 日本には反日左翼(共産主義者)が実に多くいる。共産党、社民党、立憲民主党などだ。朝日新聞、NHKも反日左翼が支配している。憲法学界も日本学術会議も反日左翼が支配している。日本学術会議は学者・研究者に軍事研究をさせない。反日左翼は直接言葉に出さないが(昔は直接出していた)、心の中では日本国憲法を「ブルジョア憲法だ」として否定している。日本を「ブルジョア国家・ブルジョア社会」だとして否定している。だから、日本の国防を否定している。つまり客観的に見れば、彼らは中国・ロシア・北朝鮮の日本侵略を援助している。彼らは日本の内なる侵略勢力である。私たちは反日左翼を徹底的に糾弾して戦っていかなくてはならない。自民党政府が反日左翼と戦えないのは(だから日本には反日左翼が非常に多い)、本来の憲法9条を閣議で確立して軍隊を保持し、国と国民が敵から「急迫不正の侵害」を受けるときには、米国のように戦略的攻勢で大々的に反撃するとの国防戦略を樹立していないからだ。

 

●自衛権行使要件は「国家又は国民に対する急迫不正の侵害があること」(一般国際法)である

 

 (1)憲法98条2項は「日本国が締結した条約(1951年9月の日本との平和条約、同年同月の日米安保条約)及び確立された国際法規(国連憲章や一般国際法⦅国際慣習法⦆等)は、これを誠実に遵守することを必要とする」である(括弧内は大森)。一般国際法は自衛権行使要件を、「国家又は国民に対する急迫不正の侵害があること」としている。「急迫不正の侵害」の「急迫」とは、「法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っている状態」(最高裁判例)である。「不正の侵害」とは、武力攻撃に限定されないのである。また「国家」が対象だけでなく、「国民」も対象である。

 

 一般国際法は、「武力攻撃が発生した事態」だけでなく、「武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態」(武力攻撃切迫事態)でも、自衛権を行使できるとしているのだ。日本政府は国連憲章51条を、「加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には」と誤訳している。英文(正文)は「加盟国に対して武力攻撃が発生する場合には」である。

 

 (2)前記「安保法制懇・報告書」(2014年5月15日)も、この一般国際法の「急迫不正の侵害」を引用して、日本の自衛権行使要件が極めて狭すぎることを批判していた。しかし安倍首相(当時)は、2014年7月1日の閣議決定文「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」において、またその国会答弁と2015年5月~9月の安全保障法制国会の答弁において、「急迫不正の侵害」を完全に否定しまったのだ。「わが国に対して武力攻撃が発生したときに、日本は自衛権を行使できる」としてしまったのである。国連憲章51条の「武力攻撃が発生する場合」も否定したのだ。

 

 安倍首相は前記国会において、そもそも台湾有事は完全に捨象したし、中国の日本を狙う多くの核ミサイルの脅威も全く無視したのであるが、中国海軍が多数結集して宮古島や石垣島を占領するために接近してきても、中国が武力攻撃を開始しなければ、日本は自衛権を行使できないということになる。反国防であるのは明白だ。

 

 例えば、朝鮮半島有事で、在韓日本人が北朝鮮の武力攻撃にまき込まれる明白な危険が切迫していると認められても、安倍的日本政府は自衛権を行使できない。だが、一般国際法では、国民に対する「急迫不正の侵害」なのだから、自衛権を行使できるし、しなければならないのだ。

 

 (3)同「報告書」は、個々の侵害活動が、単独では「武力攻撃」に当らない場合でも、そうした侵害が「集積」している場合には、これを「武力攻撃」とみなすことができ、自衛権を行使することが一般国際法上可能であると主張していた(Ⅱの「8武力攻撃に至らない侵害への対処」の注32)。

 

 北朝鮮は日本人の拉致を繰り返してきた。個々の拉致事件は「武力攻撃」に当らなくても、繰り返されれば(「集積」)、「武力攻撃」とみなせる。だから、日本は北朝鮮に対して自衛権を行使しなくてはならないのである。そもそも、北朝鮮に多くの日本人が拉致されている。これは一般国際法上の自衛権行使事態なのである。すなわち「邦人に対する急迫不正の侵害」だ。だが、安倍首相(当時)はこれらをみんな拒絶した。彼の「拉致問題を解決する。拉致被害者全員を取り戻す」等の言葉は、嘘、嘘、嘘である。

 

 (4)日本政府は「日本は集団的自衛権は持っているが、憲法9条の下では行使はできない」と、国民を騙してきた。しかし、日本は集団的自衛権を日々行使している。在日米軍を駐留させているからだ。日米安保条約は、日米両国が集団的自衛権を行使して締結したものだ。個別的自衛権では他国と安全保障条約(同盟条約)を結べない。日米共同訓練も両国の集団的自衛権の行使による。

 

 集団的自衛権とは、同盟国や友好国と集団で国や国民を防衛することを言う。日米安保条約5条で、日本は有事のとき米国と共同して(集団で)日本を防衛するが、これはまさしく日本と米国の集団的自衛権の行使なのである。個別的自衛権とは、日本一国のみで日本を防衛する自衛権のことだ。個別的自衛権のみでは国を守れないのは明らかである。日本はもしアメリカが敵国から武力攻撃を受けたら、集団的自衛権を行使してアメリカと共同して(集団で)アメリカを防衛しなければならない。安全保障条約(同盟条約)とは相互防衛条約であるからだ。日米安保条約の片務性は直ちに改めねばならない。政府は国民を徹底的に嘘で教育してきている。元自衛官将官たちの多くもそれに加担している。

 

 「日本との平和条約」5条の(c)項、「日米安保条約」前文が、「日本は個別的叉集団的自衛権を有している」と明記している。これは、日本が憲法9条によって自衛権(個別的又は集団的自衛権)を行使する軍隊の保持を宣言しているからだ。十全に行使できなければ自衛権を有するとは言わない。

 

 (5)憲法9条は政府によって、また憲法学界や野党や朝日新聞などの反日左翼によって、また反米右翼によって、徹底的に歪められ否定されてきた。私は20数年前から小冊子やインターネットで、憲法9条は自衛権行使の軍隊の保持を認めていることを述べ、閣議決定で本来の憲法9条を確立して、軍隊を持たねばならないと主張してきた。読売新聞や産経新聞の論説委員室には毎回コピーしたものを送ってもらってきた。しかし無名でもあり、私の経歴もあり、黙殺であった。「安保法制懇・報告書」(2014年5月)の「芦田修正論の憲法9条を閣議決定すべし」との提言も、即日安倍首相に拒絶されてしまった。だからその後、それを主張する識者は数名を例外として現れていない。多くの識者は安倍首相に迎合して「自己検閲」したり、「社会的検閲」もなされてきたということだ。安倍首相は同「報告書」のその他の政府の国防政策の誤りを批判する重要提言も、全て排斥してしまったから、識者たちも迎合して、それらについて安倍首相を批判することはなかった。元将官たちもだ。これは、立憲主義・法の支配の思想が獲得できていないからである。安倍氏は日米の想定敵国である独裁侵略国の中国とロシアを、あたかも日本の友好国のように位置づけした思想の持ち主なのに、である。

 

 私たちは立憲主義・法の支配を堅持して、日本のこのような否定的な現実を自己批判して、必死になって打破していかなくてはならないのである。これに成功しなければ、日本は近い将来、中国・ロシアに侵略されて亡国となる可能性が高い。

(2021年10月11日脱)

 

(◎私の文をボランティアで入力してくださるという同志の方がいらっしゃれば、このブログを管理してくださっている荒木和博様へご連絡いただけないでしょうか)