恋のドライブ | 思い出の彼方

恋のドライブ

二人が恋に落ちるのに、
時間はかからなかった。

惹かれあう若人の間に
行く手を阻むものは、何もなかった。
私は、はやる気持ちを抑えつつ
しかし、確実にアクセルを踏んでいった。

好んで走ったのは
秩父や日光、九十九里・・・
北関東の道はほとんど走破した。

一人で聞いていたカーステレオは
小田和正を奏でることが多かったが、
二人で走るようになってから
門松敏生のバラッドがこころを揺らしていた。

私は多恵子の肩を寄せ
やさしく そのくちびるをかさね
その豊かな胸のふくらみを確かめた。
そして、
いつもその先でブレーキを踏んだ。

季節は冬から春へ移り
大地は忘れていた夏の空気を
徐々に取り戻し始めていた。
そして二人にも
あつい季節が訪れようとしていた。