中学3年生の2月、受験の時期の事だった。
長く癌の治療をしていた祖父の容態が急変したとの連絡を受け、入院先の病院に父の車で向かった。母は祖父の病室に夜から付きっきりだったので、車内には運転手の父と2つ年の離れた妹がいたが誰も一言も発さない張り詰めた空気の中、カーステレオからはヱヴァの林原めぐみが歌う翼をくださいが流れていた。病院に到着した頃には既に心肺停止の状態で沢山の親族が集まっており、間もなく医師から臨終を告げられた。祖母はわっと顔を手で覆い、私に「じいちゃん死んじゃったよ」と言った。私はなにも言葉をかけることが出来ず、ただ立ち尽くすだけであった。帰りのことはあまり覚えていないが、カーステレオからは林原めぐみの集結の園へが流れていた。
15年近く経つがヱヴァの歌を聴くと今でも思い出す。何とも言えない空気の車内と、祖父の死を哀しみ泣き出した祖母に声を掛けることが出来なかった自分を。