「アリスのままで」
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言語学の教授だったアリスが、若年性アルツハイマーという病におかされ
「言葉」という彼女自身のアイデンティティーを失っていく物語。





泣けるシーンは何度もあったけれど、わたしの心に一番突き刺さったのは
アリスが自分の病名を3人の子供達に話すシーン。

若年性アルツハイマーは、遺伝によっておこる
「家族性アルツハイマー病」も多いそうです。
「遺伝」と伝える側も、伝えられる側も言葉にならない苦しみがあるよね。


わたしも、病気です。
だけど病気の遺伝性は分からない。
それに、まだ親兄弟以外の配偶者は居ない。

だからあまり考えてこなかったし見ないようにしてた。
でも、だけど。
遺伝レベルの病気の恐ろしさを見た気がしてゾッとした。

「わたしはアリスと同じ側になるのかな?」って。








「(若年性アルツハイマーじゃなくて)癌だったなら良かったのに」
病名を申告された彼女はそう言いました。

「癌だったら恥ずかしくないし、みんなと一緒にピンクのリボンを付けるわ」
その言葉の重みがズシリとわたしの心にのし掛かった。



ガン患者からすればふざけんなって思うだろうけど、
わたしもアリスの気持ちがちょっと分かる気がした。
同じ「病気」でもこんなにも違うのは何故だろう。



病気に対するイメージへや偏見が、病気の人間を苦しめる。
肉体以上に、周りの目で心が苦しめられる。
社会で生きていくのって大変だ。






アリス役のジュリアン・ムーアがアカデミー主演女優賞を獲得した3週間後、
監督・脚色を務めたリチャード・グラッツァー氏が亡くなったそうです。

彼自身、筋萎縮性側索硬化症(ALS)という難病で、
病と闘いながら本作を作り上げたそうです。

病名は違うけれど、作品中のアリスの言葉である
「(病気で)苦しんでいるのではなく、闘っているのです」
という言葉は、監督自身の心の声なのかなと思いました。


監督のご冥福をお祈りします。