先ごろ亡くなった丸谷才一は
「一般に、探偵小説は、
その国民が最も好む娯楽によつて
彩られるのだと思ひます」
(『快楽としてのミステリー』ちくま文庫、p.88)
と書いてますけれど
これに従うなら
現代の日本国民が最も好む娯楽は
アニメやまんが、ということに
なるんでしょうか。
先に紹介した『体育館の殺人』なんて
もろアニヲタ言説を散りばめてましたが
今回紹介する『聴き屋の芸術学部祭』は
『体育館の殺人』のように
ストレートにその手の言説を出してないとはいえ
登場人物の設定や会話の呼吸なんかは
アニメやまんがを連想させるような
ノリを感じさせるので
丸谷の言葉を思い出さずにはいられませんでした。
……というのはウソで
たまたま丸谷の本を読んでたら
そういう言葉にぶつかっただけですけど(^^ゞ
それはともかく(今回はマクラが長いのぅ【 ̄▽ ̄】)

(東京創元社、2012年1月30日発行)
T大学芸術学部の2年生で
文芸サークル「ザ・フール」部員である
柏木の特技は
人の話を聴くこと。
みんな柏木には話をしやすいらしく
自分の話を聞いてもらいたいという人が
引きも切らず押し寄せる。
ついた綽名が「聴き屋」というわけ。
そんな柏木が謎を解く
四つのエピソードが収められています。
「ザ・フール」のメンバーで
この世の不幸を一身に背負っている
かのような雰囲気を漂わせている
「先輩」(女性)や
(表紙イラストの右端でしゃがんでる人w)
女よりも女っぽく装えるくらいの
美貌を持ち主で
文化祭では女装して歩く友人・川瀬など
キャラがまんがっぽい。
『動物のお医者さん』を
連想させるというか。
(古いたとえで済みません【汗】)
表題作でもある第1話は
東京創元社が主催する
ミステリーズ! 新人賞・佳作受賞作で
学部祭で起きた殺人事件を描いてます。
コミカルなストーリーに
伏線を忍ばせる書きっぷりと
伏線を回収して意外な犯人を導く手つきは
実に自然で見事なものでした。
写真学科の四年生が殺される動機は
『体育館の殺人』を連想させるものがあり
もちろん、こちらの方が早いわけですが
何でもかんでもケータイで写すという
最近の風潮(丸谷のいわゆる「娯楽」)を
よく表わしているのかも。
別に日本だけじゃないでしょうけど。
第2話は、これまた
まんがチックなキャラクターである
演劇サークル員の女傑部長が登場し
脚本書きが付けてない結末を付けてくれ
という依頼を強制的に受けさせられる。
その結末のない台本が
そのまま作中に引用されているという
構成がちょっと面白い
(ありがちといえば、ありがちですがw)
のに加えて
メディアの違いに推理のポイントを置くのが
印象的でした。
探偵役が推理して
欠けた結末をつけるという趣向自体は
米澤穂信の古典部シリーズにも
ありましたけれど(苦笑)
第3話は、模型部員の作品を壊したのは誰か
という、これも「日常の謎」系の話ですが
例によって会話のテンポが良くて読ませます。
途中、事件の依頼をする模型部のチャラ男が
犯人追求よりも
ぎくしゃくしたサークルの雰囲気を
元に戻したい、と話す場面(p.151)があって
こうした登場人物の意識のありようは
最近の気分というか関係性に対する指向が
よく現れてるなあと思った次第です。
第4話は、「ザ・フール」の旅行先で起きた
殺人事件の謎を解く話ですが
これがいちばん設定に無理があるというか
上で紹介した川瀬のようなキャラがいないと
謎解きに移れないような話なんですね。
全体としては
「聴き屋」というキャッチーな設定と
テンポの良い会話で
コミカルなストーリーを展開する
謎解きミステリの秀作
ということになりましょうか。
同じくアニメやまんがを連想させるとはいえ
『体育館の殺人』が
少年誌(ジャンプ、マガジン)だとしたら
こちらは青年誌(ヤンジャン、、ヤンマガ)、
くらいの差はあるかなあ。
作者の年齢も8歳違うんですが
ストレートにアニメ・ネタを出さずに
面白く読ませる分
小説としても『聴き屋』の方が大人ですね。
キャラ萌えの要素はないですけど
米澤穂信の古典部シリーズがお好きな人には
おススメかと思います。
「一般に、探偵小説は、
その国民が最も好む娯楽によつて
彩られるのだと思ひます」
(『快楽としてのミステリー』ちくま文庫、p.88)
と書いてますけれど
これに従うなら
現代の日本国民が最も好む娯楽は
アニメやまんが、ということに
なるんでしょうか。
先に紹介した『体育館の殺人』なんて
もろアニヲタ言説を散りばめてましたが
今回紹介する『聴き屋の芸術学部祭』は
『体育館の殺人』のように
ストレートにその手の言説を出してないとはいえ
登場人物の設定や会話の呼吸なんかは
アニメやまんがを連想させるような
ノリを感じさせるので
丸谷の言葉を思い出さずにはいられませんでした。
……というのはウソで
たまたま丸谷の本を読んでたら
そういう言葉にぶつかっただけですけど(^^ゞ
それはともかく(今回はマクラが長いのぅ【 ̄▽ ̄】)

(東京創元社、2012年1月30日発行)
T大学芸術学部の2年生で
文芸サークル「ザ・フール」部員である
柏木の特技は
人の話を聴くこと。
みんな柏木には話をしやすいらしく
自分の話を聞いてもらいたいという人が
引きも切らず押し寄せる。
ついた綽名が「聴き屋」というわけ。
そんな柏木が謎を解く
四つのエピソードが収められています。
「ザ・フール」のメンバーで
この世の不幸を一身に背負っている
かのような雰囲気を漂わせている
「先輩」(女性)や
(表紙イラストの右端でしゃがんでる人w)
女よりも女っぽく装えるくらいの
美貌を持ち主で
文化祭では女装して歩く友人・川瀬など
キャラがまんがっぽい。
『動物のお医者さん』を
連想させるというか。
(古いたとえで済みません【汗】)
表題作でもある第1話は
東京創元社が主催する
ミステリーズ! 新人賞・佳作受賞作で
学部祭で起きた殺人事件を描いてます。
コミカルなストーリーに
伏線を忍ばせる書きっぷりと
伏線を回収して意外な犯人を導く手つきは
実に自然で見事なものでした。
写真学科の四年生が殺される動機は
『体育館の殺人』を連想させるものがあり
もちろん、こちらの方が早いわけですが
何でもかんでもケータイで写すという
最近の風潮(丸谷のいわゆる「娯楽」)を
よく表わしているのかも。
別に日本だけじゃないでしょうけど。
第2話は、これまた
まんがチックなキャラクターである
演劇サークル員の女傑部長が登場し
脚本書きが付けてない結末を付けてくれ
という依頼を強制的に受けさせられる。
その結末のない台本が
そのまま作中に引用されているという
構成がちょっと面白い
(ありがちといえば、ありがちですがw)
のに加えて
メディアの違いに推理のポイントを置くのが
印象的でした。
探偵役が推理して
欠けた結末をつけるという趣向自体は
米澤穂信の古典部シリーズにも
ありましたけれど(苦笑)
第3話は、模型部員の作品を壊したのは誰か
という、これも「日常の謎」系の話ですが
例によって会話のテンポが良くて読ませます。
途中、事件の依頼をする模型部のチャラ男が
犯人追求よりも
ぎくしゃくしたサークルの雰囲気を
元に戻したい、と話す場面(p.151)があって
こうした登場人物の意識のありようは
最近の気分というか関係性に対する指向が
よく現れてるなあと思った次第です。
第4話は、「ザ・フール」の旅行先で起きた
殺人事件の謎を解く話ですが
これがいちばん設定に無理があるというか
上で紹介した川瀬のようなキャラがいないと
謎解きに移れないような話なんですね。
全体としては
「聴き屋」というキャッチーな設定と
テンポの良い会話で
コミカルなストーリーを展開する
謎解きミステリの秀作
ということになりましょうか。
同じくアニメやまんがを連想させるとはいえ
『体育館の殺人』が
少年誌(ジャンプ、マガジン)だとしたら
こちらは青年誌(ヤンジャン、、ヤンマガ)、
くらいの差はあるかなあ。
作者の年齢も8歳違うんですが
ストレートにアニメ・ネタを出さずに
面白く読ませる分
小説としても『聴き屋』の方が大人ですね。
キャラ萌えの要素はないですけど
米澤穂信の古典部シリーズがお好きな人には
おススメかと思います。