ひとりよがり

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映画監督 奥本はじめのブログ



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人にはそれぞれ好きな場所というものがある。
家の中でも、家の外でも。

例えば同じ空であっても、見る場所によっては美しくも見え、そうでない場合もある。
好きな場所でなら、例え空き缶が転がっていてもふと何かを感じたりもするかもしれない。

45歳の時、これからどんな映画を撮ろうかと悩んだ時期があった。
とある作家さんから「もういい年なのだから、そろそろ自分の人生を切り取ってみなさい」とアドバイスもされたのだが、自分の人生など華やかなものが何一つないし、何よりそれを映像で見たところで誰も興味がないだろうと思っていた。
だから悩んでいたのだ。撮りたいと思っていただいたいの企画は撮り終えていたものだから、さぁこれから何を撮ろうかと。

そんなある日、当時僕の作品によく参加してくれていた女優と呑んでいると「奈良にいかない?」と誘われた。
奈良?
小学生の遠足で大仏とか鹿を見に行ったくらいの思い出しかない。
彼女はKinKi Kids の筋金入りファンで、特に堂本剛が好きらしくその影響から奈良にもよく足を運んでいたらしい。
まぁいいか。
そんなノリで僕はそれからしばらくし彼女と奈良へ行くことになった
最初に降り立った場所は平城宮跡。
ただただ広く、そして5月という季節も相まって風も空気もとても心地よかった。何より、空は最高にきれいだった。これほど見惚れたことがあったろうか。
雲が流れていく様は雄大で、まるで時の源流とも思える感覚を覚えた瞬間だった。
すごく楽しそうね?と彼女は不思議がったが、僕の気が済むまでずっと待ってくれた。それから僕たちはならまちなどを巡り、日が沈むまでぶらぶらと歩き続けた。

そこからだ。
僕が奈良で映画を撮りたいと思いだしたのは。
ここでなら僕の人生を切り取って散りばめてもいい。
自分を振り返り、ああだった、こうだった、ああだったら?こうだったら?そんなことを全部吐き出せるだけ吐き出してやろう。そう思ったのだ。
その女優とはもう3年以上会っていないが、映画に出ることを辞めてしまったが今も元気に舞台では活躍しているようだ。

しかしそれ以来、僕は奈良が好きだ。その女優には感謝している。


奈良に行くと、いつも何かを感じて帰ってくる。
その日見た空、その日あった人、その日入った店、道端であったもの、普段気にしないものにふと何かを感じる場所なのだ。
だから僕は奈良でこれからも映画を撮りたいと思っている。

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