安田記念に出走のモーリスは東京競馬場で調整している。香港でチャンピオンズマイルを完勝したのが5月1日。帰国が翌2日午前の成田着で、そのままJRA競馬学校(千葉県白井市)の国際厩舎への入厩。美浦に帰れないのは家畜伝染病の流入を水際で防ぐためだ。[検疫]と呼ばれる。
 検疫では入国した馬が法律などで定める特定の感染症(監視伝染病)に感染していないことを確認する。監視伝染病は致死性が高かったり、繁殖馬で流産リスクを高めるなど、国内の馬産、ひいては畜産業界全体に大きなダメージを与えかねない感染症だ。香港―日本間の移動で監視する馬の伝染病は、狂犬病(犬の感染から人間を脅かす病気と思われがちだが、およそほとんどのほ乳類が感染する)、馬伝染性貧血(伝貧)、馬インフルエンザなど16種類。これらが香港で発生しているわけではないが、移動時にフィルターをかけることでより強固な防疫態勢を敷いている。
 生きた動物の検疫には2段階あり、入国してからすぐの[輸入検疫]。次に最初の移動先で留め置かれる[着地検査]という流れだ。馬の輸入検疫は定められた係留施設に通常10日留め置かれる。隔離された馬房で管理し、この間にウイルスや細菌を直接検索や生理状態の観察から監視伝染病に感染していないか調べる。めでたく陰性なら着地検査へ進める。万一、陽性反応が出ると場合によっては殺処分されることもありうる。
 着地検査は原則として3カ月。移動先都道府県の家畜保険衛生所の管理下で、移動させずに経過観察を受ける。馬では大手の育成牧場やJRA競馬場で実施が可能だ。
通常は3カ月。
 ただし、現役の競走馬が海外遠征から帰って10日+3カ月の移動制限を受けるのでは、ローテーションが組めなくなってしまう。そこで、遠征期間が60日以内で、遠征先で監視すべき伝染病の発生がないなど、一定の衛生条件を満たしていることを条件に、現役競走馬では特例てして輸入検疫が5日、着地検査が3週間に短縮できることになっている。それぞれ、係留施設に付随する馬場に1頭ずつであれば入ることができ、馬場入りの後は移動経路をすべて消毒する。
 グレード制導入の84年以降、日本の競走馬が海外の遠征先の出走から1カ月以内に国内出走したのは06年有馬記念のアドマイヤメイン(香港ヴァーズ8着から中1週で有馬記念9着)以来となる。モーリスは輸入検疫期間中は白井で、着地検査中は東京競馬場で、それぞれ馬場入りはできた。着地検査はすでに明けているが、この中間、併せ馬ができず、ずっと単走で調教を積んでいる。
*中スポから