菅直人首相がG8首脳会議と20カ国・地域(G20)首脳会合に出席するためカナダへ。両サミットの合間に、米中韓露など6カ国首脳とも集中的に2国間会談を行うらしい。今のところ日露首脳会談しか行われていないようだ。

首相就任後初の国際舞台デビューである。G8では、北朝鮮の韓国哨戒艦撃沈事件やイランの核開発に加え、欧州による対中武器禁輸問題も焦点だ。日米間では前政権下で失われた同盟の信頼回復は可能かどうか。国益を実現する外交を展開出来るか。注目したい。

G8政治協議では北朝鮮、イランの核問題と哨戒艦事件が議題に上って来るかも知れない。しかし、暗礁に乗り上げたままだ。米朝会談がどのように展開するか?
菅首相は国会の所信表明で「哨戒艦事件は許し難い」とし、韓国政府の全面支持を明言してきた。日本を含むアジアと世界にとって重大な脅威であることをしっかりと訴えなければならない。

中国の台頭にどう対応するかも重要だ。中国海軍の挑発的行動の拡大や透明性を欠いた軍備近代化が日米、東南アジアの懸念を高めているが、そうした危機感は必ずしも欧州などに届いていない。
欧州連合(EU)内では、天安門事件以来の対中武器禁輸措置の早期解除を求める声もある。しかし、中国は北、イランの核問題やミャンマー情勢などにも深くかかわり、責任ある行動が求められている。解除は時期尚早だ。
米欧が経済的利害に目を奪われがちな中で、2国間会談も活用しつつ、日本の立場をはっきりと伝えることが求められる。

G8ではアフガニスタン復興やアフリカ支援も討議される見通しだ。菅首相と民主党は、参院選の選挙公約の中で、アフガンを含めた「自衛隊や文民の平和構築活動のあり方」を検討し、海上輸送の安全のための海賊対処も継続することを約束している。
こうした国際貢献の面でも、具体的な日本の活動を提示するのによい機会だ。国際社会に要求するだけでなく、積極的に責務を果たす上で、首相の掲げる「責任ある外交」を実行に移してほしい。