こんにちは。

アレテーを求めて~

今日もトコトコ( ・ω・)

弁護士の岡本卓大です。

 

絶賛連載中の

神武征討記

今回は、外伝です( ・ω・)

 

 

 

神武征討記外伝

愛!?政略!?

~トサノリョウマの縁談!

 

 

ストーリーテラーのアメノウズメでございます。

「一人ひとりが主人公」の『神武征討記』。

今回の外伝の主人公は、トサノリョウマです。

今回の舞台は、四国の土佐(高知県)。

登場人物は、ほとんどトサノリョウマ軍団所属となる人々です。

 

物語は、本編での関東争乱編の2年後、トサノリョウマが20歳のときのお話です。

この頃、トサノリョウマは、自らの発案により四国各地の豪族達と交渉し、四国・淡路連合国

という共同体を築き上げ、その盟主という立場にありました。

しかし、他方で、トサノリョウマは土佐(高知県)の王ではなく、土佐という国は、

複数の有力豪族達がそれぞれの領地と兵力を持つ連合体のような国でした。

四国・淡路連合国全体を見れば、トサノリョウマはその盟主としてトップの地位に

立ちますが、本国の土佐においては、トサノリョウマは他の豪族達と盟を結んだ

一豪族の頭領の息子に過ぎません。

土佐は、そのような複雑な政治状況にありました。

 

 

トサノリョウマ「父上。お呼びですか。」

 

トサノリョウマの父

トサノハチヘイ「おお。リョウマよ。お前も、もう20歳。

そろそろ結婚して身を固めんとな。」

 

トサノリョウマ「結婚ですか?

俺には、ずっと思い合っている女がいますが。

結婚か・・・」

 

トサノヘイハチ「いや、実はな。土佐で一番の有力豪族である

ソガベモトチカ殿が、お前のことを気に入っているそうでな。

ソガベモトチカ殿のご息女を、お前の嫁にして欲しいと

申し出てこられたのだ。」

 

トサノリョウマ「えっ!?俺は、ソガベモトチカ殿のご息女となど

会ったこともありませんよ!」

 

トサノヘイハチ「よいか。リョウマ。結婚というのはな。

家同士でするものじゃ。

この縁談話はすでに進んでおる。」

 

トサノリョウマ「そんな勝手な!」

 

トサノリョウマ「ソガベモトチカ殿は、土佐で最強の武力を持った豪族。

そのソガベモトチカ殿と土佐で一番の財力を持つ当家が結びつけば、

もう土佐は安泰じゃ。」

 

トサノリョウマ「俺には、クルシマエヒメがいます!

エヒメと俺は、出雲大社学宮(イズモタイシャマナビノミヤ)

で学んでいた頃からの恋人同士です!

他のオナゴと結婚などできません!」

 

トサノヘイハチ「たわけたことをぬかすな!

伊予(愛媛県)の海賊の娘との結婚など許さん!

恋愛と結婚は違う!

結婚とは家のためにするものじゃ!」

 

トサノリョウマ「結婚とは、愛し合う個人と個人が結びつくものだ!

家同士で決めるものなんかじゃない!」

 

トサノヘイハチ「ええ~い!

出雲大社学宮になど行かせるのではなかったわ!

個人の自由だの、人権だのに毒されおって!

とにかく、この縁談は、もう決まっておるのじゃ!」

 

 

トサノリョウマにとって、家同士が決めた突然の縁談話・・・

トサノリョウマは、土佐にいる友人達に相談します。

 

 

アキノシンタロウ「リョウマ!おまえとクルシマエヒメの仲は、

四国じゃ誰も知らんものがない!

そんな勝手な縁談など断ってしまえ!」

 

ケンゴウイゾウ「ソガベモトチカ殿の娘ねぇ・・・

見たこともねえな。」

 

ナガオカノハンペイタ「いや。リョウマよ。これは大事だぞ。

お前の家とソガベモトチカ殿の家だけの問題ではない。

四国・淡路連合国の盟主であるお前と、土佐最強の武力を

持つソガベモトチカ殿が縁談で結びつけば、土佐は安泰だ。

これは、個人の感情ではすまぬ政治的な問題だぞ。」

 

トサノリョウマ「断ったらどうなるかな・・・」

 

ナガオカノハンペイタ「ソガベモトチカ殿は、感情的な方だ。

あるいは武力で土佐に乱が起こるかも知れない・・・」

 

アキノシンタロウ「ソガベモトチカ殿は、リョウマを気に入ったのではなく、

おそらく政治的な動機だろう。

四国・淡路連合国の盟主として四国の諸豪族や民達に慕われるリョウマと

婚姻関係を結んで、四国の支配権を握ろうとしているのではないか?」

 

ケンゴウイゾウ「あ~!剣一筋の俺には、難しい政治のことは、

わからんち~!」

 

トサノリョウマ「エヒメだって、伊予を代表する海賊の女頭領だぞ。

政治的なことを言うなら、四国全体のことを考えれば、俺とエヒメが

破局する方がよほど、政治的なダメージが大きいだろうに・・・」

 

ナガオカノハンペイタ「リョウマ。お前は、志がでかい。

土佐よりも四国。四国よりも日本(ヒノモト)。

その志がでかいのは、長い付き合いの俺達にはわかる。

だがな。土佐の豪族達のほとんどは、自分の周りのことしか

見えていない。

土佐の安定がなによりも大事に思えるものなのだ。」

 

ケンゴウイゾウ「よし!俺が、ソガベモトチカを斬っちゃる!」

 

アキノシンタロウ「アホか!ソガベモトチカを斬ったりしたら、

それこそ、土佐は内乱じゃ!」

 

 

土佐の親友達に相談したものの結論は出ず。

トサノリョウマは、土佐で開催された四国・淡路連合国の会合に出席します。

会合には、伊予の代表としてクルシマエヒメも参加していました。

会合の終了後に、クルシマエヒメと桂浜の海辺を歩くトサノリョウマ・・・

 

 

クルシマエヒメ「今回の会合もうまく行きましたね。

四国・淡路は、戦も内乱も無く、平和で喜ばしいことですね。」

 

トサノリョウマ「・・・・・・」

 

クルシマエヒメ「リョウマ様?どうかされましたか?」

 

トサノリョウマ「エヒメ・・・実は、俺の縁談が家に勝手に進められている。

相手は、土佐最強の豪族ソガベモトチカの娘だ・・・」

 

クルシマエヒメ「えっ!?縁談!?それって、リョウマ様が

結婚なさるということ!?」

 

トサノリョウマ「そうだ・・・ソガベモトチカは土佐で最強の豪族・・・

無碍に断れば・・・土佐に内乱が起こるかも知れん・・・」

 

クルシマエヒメ「そんな・・・お相手の女性のことを、

リョウマ様は愛しておられるのですか?」

 

トサノリョウマ「会ったこともない・・・名は、アコだったか?。

だが、俺が愛しているのは、クルシマエヒメ!お前一人だ!」

 

クルシマエヒメ「リョウマ様・・・そのお言葉だけで嬉しい・・・

その縁談を断ったら、土佐最強の豪族との戦になるかも知れないのですよね・・・

私とリョウマ様は・・・身分が違います。

国のために後悔の無い決断をしてください!」

 

トサノリョウマ「エヒメ!しかし!」

 

クルシマエヒメ「私やリョウマ様の気持ちだけで、物事を進めたら、

この土佐は、四国は、あるいは戦乱になってしまうかも知れない・・・

そうすれば、民達が苦しみます。

私達は、国を治める立場です。

時には個人の気持ちより、民達の平穏のために気持ちに逆らうことも

必要となります・・・」

 

トサノリョウマ「エヒメ!」

 

クルシマエヒメ「リョウマ様・・・ごめんなさい!」

 

 

泣きながら走り去っていくクルシマエヒメ・・・

トサノリョウマは、一人、桂浜にたたずみ、夜の海を見つめていた・・・

その後、婚礼の話は、夫婦となる当人達の気持ちを無視して進められていった。

婚礼の日の前日。ソガベモトチカの屋敷。

 

 

ソガベモトチカ「明日は、いよいよ婚礼。

アコよ。トサノリョウマの子を産め。男子をな。

お前とトサノリョウマの息子が将来、この土佐、

いや四国の王となる。」

 

アコ「お父様・・・トサノリョウマ殿には、クルシマエヒメという

思い人がいるはずです・・・

このような縁談本当に良いのでしょうか・・・?」

 

ソガベモトチカ「口答えするな!伊予の海賊の娘など、

妾(めかけ)で十分じゃ!

だが、お前が正妻となって男子を産め!

必ずだ!」

 

アコ「男子が生まれるかどうかなど・・・

天が決めることにございます・・・」

 

ソガベモトチカ「男子を産むのじゃ!そのために

お前を四国・淡路連合国盟主のトサノリョウマの小僧に

嫁がせる!」

 

アコ「お父様・・・どうか、こればかりは、取りやめていただけませんでしょうか?

わたくしにも・・・思う殿方がおります!」

 

ソガベモトチカ「なんじゃと!?誰じゃ!?」

 

アコ「言えません!言えば、お父様は、その男を斬ります!」

 

ソガベモトチカ「我が家臣の者か?まあよい。

お前達、女は、子を産む道具。

お家のために男子を産むのが役目じゃ。

父の命じゃ。トサノリョウマに嫁ぎ、次代の四国の王を産め!」

 

アコ「・・・・・・はい。お役目、全ういたします・・・」

 

 

愛する者以外との結婚を進められていたのは、

トサノリョウマだけではなかったようね・・・

でも、ソガベモトチカ・・・父権主義のやなヤツね。

アコさんがかわいそうだわ・・・

さて、その頃、クルシマエヒメは、土佐の高知の町で、一人酒を飲んでおりました。

 

 

クルシマエヒメ「ううっ・・・リョウマ様~」

 

酒屋の店主「クルシマエヒメ様・・・飲み過ぎですよ。

あなたは伊予の海賊達の頭領でもあるけど、

若い女性なんだから、一人で夜遅く酒を飲むのは

物騒ですよ。もう帰った方がいいです。」

 

クルシマエヒメ「うるさい!もう一本持ってこい!」

 

酒屋の店主「はいはい。もう酔っ払いはしょうがないな・・・」

 

カミノエチカナオ「ううっ・・・アコ姫さまぁ・・・

身分違いの恋など、叶わぬのはやむを得ぬが・・・

ううっ・・・店主!酒持ってこ~い!」

 

酒屋の店主「やれやれ、こっちも酔っ払いか・・・

はいよ~。」

 

クルシマエヒメ「おい。そなた、今、アコ姫と言ったな?

それは、明日、トサノリョウマと結婚するソガベモトチカの娘のことか?」

 

カミノエチカナオ「あ、あなたは?」

 

クルシマエヒメ「伊予のクルシマエヒメじゃ。」

 

カミノエチカナオ「えっ!?トサノリョウマ様の副将かつ

恋人として有名なクルシマエヒメ様!」

 

クルシマエヒメ「そうじゃ。リョウマ様は、明日、アコ姫と

結婚してしまうがな・・・

ううっ・・・リョウマ様~」

 

カミノエチカナオ「ううっ・・・アコ姫様~」

 

クルシマエヒメ「うむ?もしや、お主、リョウマ様の妻となる

アコ姫を好いておるのか?」

 

カミノエチカナオ「クルシマエヒメ様。実は、私は、

アコ姫様とは恋仲だったのです。

しかし、ソガベモトチカ様の一家臣に過ぎぬ私と

アコ姫様では身分が違いすぎ・・・

公にはできぬ仲でした・・・」

 

クルシマエヒメ「ほほう?もしかして、

私達・・・利害が一致する?」

 

カミノエチカナオ「えっ!?」

 

クルシマエヒメ「私は、リョウマ様と一緒になりたい。

あなたはアコ姫と一緒になりたい。

明日は、リョウマ様とアコ姫の結婚式・・・」

 

カミノエチカナオ「ええっ~!そんなとんでもないこと!」

 

アキノシンタロウ「よし!面白い話だ!俺たちも乗るぜ!」

 

ケンゴウイゾウ「こんな面白い話は、めったにないぜ!」

 

クルシマエヒメ「あら。アキノシンタロウ君にケンゴウイゾウ君じゃない。

あなたたち、聞いちゃってた?」

 

アキノシンタロウ「リョウマだけなら、政治のために我慢することも

あり得たろう。

だが、アコ姫さんも、嫌がってる結婚だってなら。」

 

ケンゴウイゾウ「土佐の男は、そんなもん、

ぶっつぶさないわけにはいかんぜよ!」

 

カミノエチカナオ「ちょ、ちょっとみなさん、

酔ってますよね!?」

 

アキノシンタロウ「酔っちょる!これが俺の本音じゃ!」

 

ケンゴウイゾウ「ジャマするやつは、

俺が斬っちゃる!」

 

クルシマエヒメ「イゾウ君、斬っちゃダメ。

誰も殺しちゃダメよ~。」

 

アキノシンタロウ「計画はな・・・」

 

 

おやおや、なんだか、酔った勢いでとんでもないことになりそうね。

でも、愛し合う者達を引き裂くなんて、誰にも許されないわよ~。

がんばれ~、エヒメ、カミノエチカナオ君!

そして、翌日、婚礼の日。

四国・淡路連合国盟主のトサノリョウマと、

土佐最強の豪族ソガベモトチカの娘アコとの婚礼というだけに、

土佐中の豪族たちが婚礼の儀に集まっていました。

しかし・・・

 

 

ソガベモトチカ「花嫁が!アコが逃げただと~!?」

 

ソガベチカヤス「兄者!カミノエチカナオがアコをさらったようです!」

 

ソガベモトチカ「あの下郎!捕らえて叩き切れ!」

 

トサノリョウマ「ほう。花嫁が逃げた・・・ははっ、どうやら、

俺は嫌われてるようだな。」

 

ソガベモトチカ「いや!我が家臣が乱心しただけ。

すぐに叩き切って、アコを連れて参りましょう。」

 

 

花嫁衣装のアコを連れて逃げるカミノエチカナオ!

ソガベモトチカの追っ手が迫ってきます!

 

 

アコ「チカナオ!ムチャだわ!こんなことをしたら、

お父様に殺されてしまう!」

 

カミノエチカナオ「アコ!もうやってしまった!

捕まれば殺される!

でも、俺は、あなただけは守り抜く!」

 

アコ「チカナオ・・・」

 

クルシマエヒメ「よく来た!追っ手の相手は我らに任せよ!

船を用意してある。

お前達二人は、船に乗れ。

船で日向(宮崎県)の延岡へ行け。

そこはかつて、海辺の要塞があった場所。

高千穂の神武王太子ご夫妻を頼ると良い。」

 

カミノエチカナオ「クルシマエヒメ様。かたじけない。」

 

アコ「チカナオ・・・私と一緒に逃げてくれるの?」

 

カミノエチカナオ「ああ。これからはずっと一緒だ!」

 

アコ「嬉しい!チカナオ!愛してるわ!」

 

アキノシンタロウ「追っ手ども!このアキノシンタロウが相手じゃ!」

 

ケンゴウイゾウ「へへっ!ケンゴウイゾウ!

学は無いが、喧嘩なら負けねえぜ!」

 

クルシマエヒメ「私はクルシマエヒメ!

あなたたちが叶う相手じゃないわよ!」

 

 

追っ手達を、叩きのめしていくクルシマエヒメ、

アキノシンタロウ、ケンゴウイゾウの3人。

その間に、アコとカミノエチカナオは、日向に向かう船に乗り込みます。

そして、船は、出港。二人は、神武様のいる日向に向かっていきます。

お二人さん、幸せになりなさいよ~!

 

 

ソガベモトチカ「なんと・・・我が娘アコが、

家臣のカミノエチカナオと一緒に逃げるとは・・・」

 

トサノリョウマ「花嫁に逃げられてしまっては、

結婚はできませんなぁ・・・」

 

ソガベモトチカ「トサノリョウマ殿!

クルシマエヒメといえば、お主の恋人!

アキノシンタロウ、ケンゴウイゾウは、お主の手の者!

さては、お主が手引きしたか!

戦じゃ!戦じゃ!」

 

ナガオカノハンペイタ「ソガベモトチカ殿。

それは理が通りませぬ。

花嫁のアコ殿が、貴殿の配下であったカミノエチカナオと

手と手を取り合って逃げていったのは、この場に集まっている

土佐の諸豪族、みなが見ております。

この婚礼の儀をめちゃくちゃにされたのは、貴殿の家中の問題。

それを、花嫁に逃げられたトサノリョウマに戦をしかけるなどというのは、

誰が見ても筋が通りませぬ。」

 

ソガベモトチカ「ぐぬぬ・・・」

 

トサノリョウマ「まあ、花嫁に逃げられた私も、恥をかきました。

ここは、お互いに恥をかいたということで、やむなしといたしましょう。」

 

 

その後、逃げてきたアコ達を保護した神武様の仲介もあり、

ソガベモトチカ勢とトサノリョウマ勢との土佐での内乱の事態は免れました。

騒動が一段落し、桂浜の海辺を二人で歩くトサノリョウマとクルシマエヒメ。

 

 

トサノリョウマ「ずいぶん、ムチャなことをしたな。

エヒメ。」

 

クルシマエヒメ「リョウマ様。ご迷惑をおかけしました。」

 

トサノリョウマ「いや。俺がしっかりと断るべきだった。

ははっ、花嫁に逃げられた男と、四国中で笑いものだな。」

 

クルシマエヒメ「リョウマ様が笑いものなどと!

誰にも、リョウマ様のことを笑わせたりしません!」

 

トサノリョウマ「親父達が勝手に進めた結婚話も、

結果的には、内乱の事態になることなく、解決した。

ありがとう。エヒメ。それと、俺がはっきりしなくて、

すまなかった・・・」

 

クルシマエヒメ「リョウマ様・・・」

 

トサノリョウマ「俺が独身でいたから、こんな結婚話が

進められた。俺は、結婚することにした。

俺が愛しているたった一人の女と。」

 

クルシマエヒメ「リョウマ様!?」

 

トサノリョウマ「エヒメ。結婚してくれ。

一緒に幸せになろう。」

 

クルシマエヒメ「リョウマ様・・・喜んで・・・」

 

 

なんやかんやと、トサノリョウマも、アコも、政略ではなく、

愛する相手と結ばれることになりました。

めでたし、めでたし、かな?

しかし、この騒動が、将来、大和勢力による暗躍の手がかりとなることは、

このときのトサノリョウマはまだ知らなかった・・・

 

 

※この外伝は、本編第33話の伏線となる外伝です。

第33話「狙いは四国!キョウノミチナガ軍団の調略!」