大きな衝撃と音。
自分でもどうなっているのかわからなかった。
「うわぁー!」
僕は唸り声をあげながら、コントロールできずにパニックに陥っていた。
小学六年生の時、母の実家に帰省していた時のこと。
おじさんの車を運転して、鋼鉄製のトレーラーに激突。
車の前の部分を大破させてしまった。
パニックになった僕は、ぶつかった後もアクセルを踏み続けていた。
唖然としてうなだれたままで動けなかった。
慌てて駆け寄ったおじに促され、幸い怪我がなかった僕は何とか車から降りた。
それから少し前のある日、父と出かけた時のことだ。
僕は車が好きで好きでたまらなくて、いつも父やおじが運転している姿をまねて、自分で運転することを夢に見ていた。
父の機嫌が良かったので、意を決して「少しだけ自分で動かしてみたい」と頼んでみた。
「あそこだったらいいだろう」
意外なことに厳格な父はあっさり許してくれた。
帰りがけの土手の上で、はやる気持ちを抑えて運転席に乗り込んだ。
当時、自宅にあった車はマニュアル車。クラッチを踏んで自分でギアチェンジが必要だった。
それも楽しみだった。
そっとクラッチを繋ぎゆっくりアクセルをふんだ、つもりだった。
が、砂利を巻き上げ、急発進してしまった。驚いて慌ててブレーキを踏んだ。
「そっと動かさなきゃ危ないだろう!」苦笑いする父。
心臓がドキドキして興奮していた。
うまく操作できなかったが、自分が動かせたことが嬉しくて「もっとうまく操作できるようになりたい」と思った。
と同時に、少し調子に乗ってしまった。
そして起こした事故。
おじに「この前練習したから、運転できるようになったんだよ」と言って、ちょっとだけ運転させてほしい、と頼んだ。
優しいおじは、僕の話を信じて貸してくれたのだった。
「なんて事をしてしまったんだ、、、」
ひたすら正座して塞ぎ込み動けなかった。
どう謝ったらいいかわからなかった僕は泣き続けた。
その後のことはよくわからない。
両親が修理代を払う事で解決したようだった。
僕は、調子に乗るとタガが外れてやり過ぎてしまったり、周りが見えなくなるところがあった。
そして、突発的に起こる出来事に対して、冷静に判断できず、パニックに陥る。
すると楽しいはずのことから一転して、怪我をしたりトラブルを起こしたりすることがあった。
つい最近までだ。
欲を出し、感情にのまれて、無理に行き過ぎたことをし失敗する。
そんなことを繰り返した結果、自分を信頼できず、自分を出すのが怖くなっていった。
それが、前職の宅配ドライバーで修羅場を乗り越えてから、
「自分にできる事をできる範囲でやる」ことが感情面でもできるようになった。欲を出さなくなって、焦らなくなった。
それからというもの、
「何が起きても大丈夫」
「起こったことは仕方ない、そのあとどうするか」
心からそう思えるようになった今、本当に困ったことは起こらないし、逆に焦ったりすることもない。
よく言えば諦めが早くなったし、失敗して落ち込むこともなくなった。
以前と真逆な僕に、ときどき笑ってしまうこともある。
「欲を言えば」冷静に情熱を持って新しいことに挑戦するしつこさが欲しい(笑)