白い肌、黒く澄んだ瞳。あまりにも美しすぎて、僕は一瞬でこころ奪われてしまった。

大学2年のとき、ラグビーサークルのマネージャーとして入部してきた「姫」。

僕にとってはブラウン管の中から飛び出してきたアイドルのようにキラキラ輝いていた。

惚れやすい僕は、優しく微笑む彼女の虜になっていった。


「〇〇(僕)さんって優しいですね」


単純な僕は天にも昇るような気持ちになる。

「そんな事ないよ。帰り道だからねー」

家が近く、試合の帰りはいつも車で送って帰っていた。帰る道すがら緊張を隠すように何気ない話しかできなかった。

純粋で、平たくいえばただ臆病なだけなのだが、手を出せかったのはもちろん、気の利いた言葉さえ言えやしなかった。

気持ちを伝えるほど仲良なれず、近づけないまま1年が過ぎようとしていた。


仲良しだったサークル仲間で同学年一個年上の「武くん」。一人暮らしの彼の部屋にいつもたむろしていた。なかなか、言い出せない彼女への想い。

「俺さぁ、実は、、、姫のことが好きなんだよね」

彼には別に好きな人がいて、同じように奥手で伝えきれない想いを抱えていた。

酒の飲めない彼と一緒にコーラで乾杯し、エールを交わした次の日のことだった。


「言おうかどうか迷ったんだけど、、、姫と武くん、付き合うことになったらしいよ」


別のサークル仲間から聞いた言葉。

青天の霹靂だった。

やるせない想い。裏切られたような気分。

姫が武くんに告白して、その想いに武くんが応えた、というのが事の真相だった。


ピエロとはこの事だ。

彼女に想いを伝える前に、振られたわけでもないのに、振られた以上にショッキングな出来事だった。

本人たち以上に周りが気を使ってくれるのが、もっと辛かった。

気の毒そうな目で見られるのは、沈んだ僕の気持ちに更に追い打ちをかけた。

落ち込むだけ落ち込んで、やけ酒に付き合ってくれた仲間と泣きながら飲んだくれて、新たな出会いを誓った。

負け犬のような気持ちで過ごした若かりし日々。自分の不甲斐なさを責めた。


夢に出てきた高校時代の同級生とお付き合いする、半年ほど前の苦すぎる想い出。

20年以上たった今では切なくも懐かしい。

あの2人は今、元気にしているだろうか。


天地人に感謝

生かされていることに感謝