小学生の時の通学路の横にね、川が流れてたんですよ。
 

 

川っつたって、小さいというか水は普通なんですけど下水道ぐらいの規模の川でしてね、歩道から柵で仕切られてました。
 

 

けどそこは小学生や中学生の通学路なもんで、わんぱく小僧という名の童貞達が、みんなそこでザリガニハンターしたり、度胸試しなんかしてた訳です。
 

 

大人1人分の高さの溝に川が流れてるもんで、遊ぼうとして転んで落ちて骨折なんて話もよくありました。
 

 

その日は学校帰り。
 

 

僕は小学5年生。


例の川沿いを歩いていると、数人の低学年の女子が川を見つめながら途方に暮れてました。
 

 

僕が
 

 

「いったいどうしたってんだい? この川にジャニーズでも溺れてるのかい? てやんでい」
 

 

と聞くと

 


「あ、この子の靴が川に流されてしまったんです」
 

 

溺れているのはジャニーズではなく靴でした。


確かに、片方の靴で泣いている女の子と、川の石に引っ掛かっている靴が見えます。
 

 

「IQ180の神童」と呼ばれたかった僕も一瞬で事態を把握しました。

 

そしてその話を聞いたと同時に、僕は靴と靴下を脱ぎ、川に入って靴を取りました。


靴を少女に渡すと

 


「ぁ、ぁりがとぅござぃます」
 

 

少女は聞き取れるか聞き取れないかのギリギリな音量でお礼を言った気がします。
 

 

ぶっちゃけ言わなかった気もします。

 

こうして少女達は無事に靴を取り戻してその場を去りました。
 

 

良い行いをした爽快感と、女の子に対して本能的に見せる笑顔で見送る当時の僕。
 

 

しかし僕の心はそれどころではありませんでした


(足の裏、泥でグッチョグチョなんだけど……)


学校から家までは電車通学で約1時間。
 

 

裸足で帰る訳にもいきません。
 

 

当時の僕にはひたすら足が乾くの待つという案しか思い付きませんでした。


柵に腰かけ、足をプラプラしながら乾くのを待つ小学5年生。

 


裸足をバタバタさせて、少しでも早く乾かそうとする健気な小学5年生。
 

 

その時僕は、孤独な気持ちでいっぱいでした。


同じクラスの田中さんが通りました。

 

「あ、田中さん、えへへ僕さっき靴拾ってあげてさぁ……てやんでい」


「ふーん」


と真顔の田中さん。そのまま去りました。


余計さびしい気持ちでいっぱいになりました。
 

 

正義とは孤独と知りました。


しかし翌日。

 

 

担任に手作りの表彰状と靴の子から手紙を貰えました。
 

 

手紙の内容は靴に対しての感謝のみでほんのりガッカリ。
 

 

ちょっと惚れてくれないかなって期待してました。

 


しかしセーラームーンの封筒があまりにも可愛くて、それ以来セーラームーン見るようになりました。 

 

 

 

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近著のご紹介のコーナー。

 

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