ども、暑い時に熱いものが食べたくなる岡田達也です。

 

 

 

 

 

一昨日

 

稽古から帰宅すると、テーブルの上に1枚のメモが置いてあった。

 

「7月29日 Am 9:33

多鶴子からTELあり

姉がクーラーを嫌うため使っていない

少々ストレスが溜まったかな?

TELして少しでも元気付けてやってください 父」

 

 

要約するとーー

 

父・隆夫さん(87)の妹・多鶴子さん(81)は

 

コロナ禍になる直前から

 

二人の姉である吉恵さん(91)の面倒をみるため

 

鳥取県倉吉市で同居している。

 

その多鶴子さんから電話があり

 

内容は、吉恵さんがクーラー嫌いで使わせてもらえないのが辛いと言っていた。

 

いろいろストレスも溜まってるようなので声を聞かせてやってほしい、という内容だ。

 

 

不思議なのはーー

 

僕は目の前にいるのだから

 

直接言えばいいと思うのだが。

 

こうやってわざわざメモ書きにして残すところが隆夫さんらしい。

 

 

さておき

 

昨日の夜、多鶴子さんに電話してみた。

 

 

 *

 

 

「ハロー、ハロー」

 

「……あんたはアメリカ人か?」

 

「似たようなもんだわ」

 

「昨日、電話くれたんだってね?」

 

「そうなのよ。毎日暑いじゃない」

 

「暑いね」

 

「そろそろお兄ちゃんが逝っちゃってるんじゃないかと思って」

 

「……言い方」

 

「あぁ、ごめんごめん。まだ生きてるかな?と思って」

 

「……言い方」

 

「あぁ、ごめんごめん。元気かな?と思って」

 

「それは心配してってことでいい?」

 

「そうだわよ~! お兄ちゃんを心配してに決まっとるわよ~!」

 

「それはありがとうね」

 

「(残念そうに)そしたら、元気そうな声が聞こえてくるが」

 

「おいおい」

 

「まだ生きとんなるわって」

 

「まてまて!(笑)」

 

「残念無念」

 

「心配してかけてきたんじゃないのかよ!(爆笑)」

 

「だ・か・ら! 心配してだって!」

 

「毎日、「暑い」「死ぬ」「年寄りはダメだ」と口では言ってるけど、扇風機にしがみつきながら生きてるね」

 

「たつやっ!」

 

「あんた、まさかとは思うけど、毎晩美味しいご飯を作ってるんじゃないの?」

 

「美味しいかどうかはさておき、隆夫さんの好きなものばかりを出してるのは確かだね」

 

「それがダメなんだって!」

 

「え?」

 

「それが元気の素になってるんだって!」

 

「嫌いなもの出して残されてもこっちが困るし」

 

「美味しいもの、好きなものは寿命を延ばすのよ!」

 

「……俺たち、毎回、同じ話をしてるな」

 

「そう?」

 

「うん。ま、いいや。具体的にはどうすればいいの?」

 

「例えば」

 

「うん」

 

「料理に使う油はね」

 

「うん」

 

「使い古したものがいいわ」

 

「(笑)」

 

「最低1年以上使い続けてるような油を使って調理して」

 

「まてまて! うちはから揚げ屋じゃね~し! それに、その油は完全に酸化してるだろ!」

 

「なに? そこには無いの? じゃ、送ろうか? ここにはあるから」

 

「なんであるんだよ! おかしいだろ?」

 

「とにかく!」

 

「?」

 

「油は古いものを多めに」

 

「(笑)」

 

「塩はきつめに」

 

「(笑)」

 

「それが基本よ!」

 

「そんなに実の兄を殺したいのか?」

 

「ちがうわよ~! お兄ちゃんは油も塩も好きじゃない?」

 

「そうだね」

 

「ってことは愛情だわよ~!」

 

「どんな理屈だよ?」

 

「要は、あんたには愛情が足りないってことよ」

 

「すみません(笑)」

 

「いい? このままだとお兄ちゃんは100まで生きるからね!」

 

「かもね~」

 

「美味しい料理を作るのは結構だけどーー」

 

「うん」

 

「お兄ちゃんを長生きさせるなら、あんたも長生きしないとダメよ」

 

「うん」

 

「あんたは岡田家の跡取りなんだから」

 

「うん」

 

「お姉ちゃんのことも、お兄ちゃんのことも、私のこともーー」

 

「うん」

 

「見送るまでは絶対に死んじゃダメよ!」

 

「……そうだね」

 

「お盆明けには顔を出すから!」

 

「うん」

 

「そのときに使い古した油を持って行くわ!」

 

「いらね~よ!(笑)」

 

 

 *

 

 

 

 

 

つづく